35.救出作戦?
「よし! ミリィを助けにいくぞ!」
腰に腕を当てたまま頷いたシヂルドが、村人たちとリフィリーゼ、イスランタを見た。
「リフィリーゼ。お前、皆を運んでいたな! あれをもう一度やれるか?」
シヂルドの問いに、村人たちは首を勢いよく左右に振りながら、シヂルドに言った。
「おらたちは足手纏いになる! 山越えのつもりでやってきたのが、この魔女たちのおかげで一瞬でシヂルド様のところにたどり着けた! 帰りは歩いて帰るから、おらたちのことは気にせず、ミリィを助けに行ってくれ!」
一人の言葉に村人たちが首が取れるかという勢いで大きく頷き、もう一人が口を開いた。
「ここで少し休ませてもらえると助かるが」
それに対しても全員が大きく頷く。
「そうか……。まぁ確かに、リフィリーゼとイスランタを守りながら、皆も守るとなると、儂もちょいと疲れるかもしれんな。よし、行くぞ。リフィリーゼ、イスランタ! 飛べ!」
そう叫んで飛び出したいったシヂルドを見て、慌ててリフィリーゼは魔法を展開して、イスランタも共に浮かばせる。そして、シヂルドに追いつくように速度を上げていく。
「シヂルド様に魔法使い様と魔女様! ミリィを! たのんます!!!」
村人の叫び声に大きく頷いて親指を立てたシヂルドに追いついたリフィリーゼたちも頭を下げ、飛んで行った。
「……おい、お前ら。とりあえずあいつらの村に向かっているが、いったいミリィはどこにいるんだ?」
シヂルドの問いに、リフィリーゼとイスランタはがくりと落ちそうになりながら、言った。
「……案内します」
「おぅ! 恩に切る!」
鼻歌でも歌いそうなテンションのシヂルドに、リフィリーゼとイスランタはミリィの村から都に向かって繋がる道を飛んでいくのだった。
「いたぞ!!」
ミリィの姿をリフィリーゼとイスランタが目視するはるか前に、シヂルドは突然そう叫んで速度を上げた。
「え? どこに?」
「どれだけ目がいいんだよ、このおっさん」
二人が慌てたり呆れる間にシヂルドはどんどんと飛んでいく。慌てたリフィリーゼが速度を上げる。
「急ぎます」
リフィリーゼとイスランタがシヂルドの元に到着した時には、シヂルドはミリィの乗せられた荷馬車に襲いかかっていた。
「うわ!?」
「なんだこいつ!」
戦闘を開始する間もなく、正面から突入したシヂルドは、魔法使いたちを次々と殴り飛ばし、ミリィを助け出した。
「……なぁ、リフィ。あのおっさん……魔法使いのはずだよな?」
「……そうだったと記憶しているけど」
そんな二人の元に、ミリィを俵抱きにしたシヂルドが現れ、胸元からガサゴソと何かを取り出して地面に投げ捨てた。
「……ロープ?」
「あと、布もあるぞ?」
「なにぼさっとしてるんだ。このロープと布切れでさっさとこいつらを拘束しろ。しっかりと猿轡をするのを忘れるなよ?」
そう言って、シヂルドがミリィを地面に降ろし、代わりのように近くに倒れていた魔法使いを拾い上げて手慣れたように猿轡をかませた。そのまま、手足をぐるぐると結び上げる。
「あの……」
遠慮がちに手を挙げたリフィリーゼに、シヂルドはチラリと視線を向けて続きを促した。
「魔法で拘束してはいけませんか?」
「……この上から魔力封じの枷をはめるが、しっかりと結んだ紐の方が丈夫に決まってるだろ?」
自信満々にそう答えたシヂルドを見て、リフィリーゼは納得したように動き始めた。
「え、違和感覚えてんの、俺だけ?」
困惑した様子のイスランタに、ミリィが優しく声をかける。
「大丈夫、私も」
わかり合った二人に、シヂルドの怒声が飛び、慌てたようにイスランタも拘束へと参加した。
「結構な人数、いましたね?」
「これは親父も痛手だろ」
二人の言葉に、シヂルドは首を傾げた。
「ん? こいつらは、メルタリアのところの奴らなのか?」
「え、違うんですか?」
「……魔法適正のあるミリィを狙ったあたり、親父が怪しいと思うんだけど」
二人の答えに、シヂルドは頭をガシガシと掻いていった。
「いや…… メルタリアのとる手段にしては、こう……手応えがない。メルタリア本人っていうよりかは、メルタリアの機嫌をとろうとした弟子かなにかなんじゃないか?」
シヂルドの言葉に、二人は首を傾げる。言語化が苦手なようで感覚で会話するシヂルドに、全て明文化してほしいリフィリーゼ。わかり合える雰囲気でもない。
「……いやでも、なんとなくだが、シヂルド様の直感が正しいような気がするぞ」
シヂルドにイスランタの一票が入り、リフィリーゼは不満げな様子が明らかだ。
「……でも、それはあくまで感覚ですよね? 証拠でもあるのですか?」
リフィリーゼの問いに、シヂルドが胸を張る。
「……いや。何度もメルタリアと交戦した経験からの勘だ」
「リフィ。こういう人の勘って、侮れねーぞ」
イスランタの言葉に、シヂルドは頷き、二人はがしりと手を握り合った。
「……」
冷たい視線でそんな二人を見つめて、呆れたように魔法使いたちを宙に浮かせるリフィリーゼであった。
一方、その頃、ジョセフィーング邸では、疲れ切った様子のメルタリアに報告に向かう部下が一人いた。
「あの……メルタリア様……」




