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思い立ったが吉日


それは戦国時代から既に人々の間で使われていたといわれる和の国の究極の前向きな言葉である。


そしてはるか昔竹から生まれた月のカグヤもおかしなことにこれを知る。


「ワラワ天月位カグヤは“思い立つ日が吉日”とし今をもって地球へと向かい青の民の天位と会い此度の争乱の落としどころを決めるべく、月から茶器を手持ち茶会の場を一席もつこととなった」


魔女のアジトをめぐる攻防は十六衆武闘派小望月のアメジとその他の月の強戦士の戦死につづき、1人で十六衆武闘派スベテの戦力に匹敵する地球人最強戦力である父親のテラムーンパレスに座する天月位カグヤ様への電撃拝謁のちの秘密の会合により一時休戦となっていた。


しかしその後本来ならば月の民総出で(いた)むべき傑物十六夜のヨイザは天月位簒奪(さんだつ)を目論む謀反人であったと……十六衆やテラムーンパレスに仕える高官に見せた映像には編集され映っていなかった巨大ティックの存在を証拠に明かされ、枯草髪の魔女クゥミは晴れて無罪放免となった。



思い立つ日が吉日、十六衆に地球に行く旨を伝えたカグヤ様。

十六衆はこれに激しく反対する者、

やんわりと苦言を進言し反対する者、

やっとお思いになられたと感涙しながす者、

不穏に押し黙る者……。

反応はそれぞれであったがしかし天月位のカグヤ様の権力は絶対、思い立つ日が吉日これに勝る言はなく今をもってしてカグヤ様を地球へと無事訪問させる命は下され強行されることとなった。


十六衆やテラムーンパレスに仕える文官にはおおまかにカグヤ派、革新派、保守派、武闘派、そして秘かに地球派がある。


【カグヤ様派】竹の葉のバッジ

竹から生まれた神子であるカグヤ様が絶対! 月は永遠の美の象徴、そしてカグヤ様は永遠の美であり月である。その輝かしい美貌に似合うきょうの装いもお化粧も事細かに決めるのが至上の生きがいであるきっての過激派。カグヤはそれにやれやれと思いながらも長年甘んじて受け入れてきたので信頼を得ている。聖地である地球への訪問は基本的に賛成であり、地球にいるとされるもう一人のカグヤの事はしらない。


【革新派】金輪の天使バッジ

月面都市であるテラムーンの繁栄に励んできた、テラムーン外にあるアからンのカケラの区の工事着手近代化を進言している。

宇宙船の開発にも躍起であるが……。

カグヤがあまり口にしてこなかった青い地球に価値を見出しており地球派の一部とも仲がいい。

魔女から買い付けたティックを月に持ち込みカグヤ様のペットとして献上したのは彼らである。


【地球派】日月(じつげつ)のバッジ

そんなものはいないとされるが秘かにいる。

地球に行く手段と地球と月をつなぐ手段を探している……。


【保守派】フルムーンバッジ

月でスベテ完結する完璧な月至上主義であり天月位の権力を絶対とする、ある意味以前のカグヤと志は重なるところの多いものであった。

地球派を忌み嫌っている、地球青の民に関する書物などを続々と禁書に指定している。


【武闘派】小望月バッジ

愛称紫鬼(しき)おじと慕われるアメジを筆頭に愛称信号機のような戦闘力の高い武闘派が属する。

摩訶不思議な生物ティックと共に戦うティッカーとしてもイチ早く時流に乗りその実力は高い。

評判としては戦闘力が高い。血の気が多い。馬鹿である。



命が下された後も大小様々な派閥がせわしく激しく言を交わす中、

より一層古風に煌びやかにおめかしした着物姿のカグヤ様は上段の間を立ち、ぞろぞろと従者を引き連れて天の間を出る、応急補修した焼け焦げた扉の裏でワラい待っていた黒スーツと目を合わせる……その時は刻々と堂々軽やかな足音とともにすすみ近付いていく。


天月位カグヤ様をはじめ父親、別所透蘭、魔女、カグヤ様派の一部と信頼のおけるカグヤ様のお気に入り数名、愛らしいティックたちは地球へと向かう宇宙船の準備に取り掛かるため一度魔女の庭へと向かった。

そして巨大戦艦モンスターであり父親の仲間である“甘多”を本物の月へと持ち帰った。



出航前の最終確認、プレイヤー父親は甘いケーキの甲板に立つ仲間たちに話しかけていった。


香ばしく焼いた胡桃チョコの椅子に腰かけて紅茶を飲む妖しい超実力派の魔女がいる。


「さぁていよいよおもしろくなってきたな眠ってる暇はねぇな、ナッ!」

「ふふふ、これは予想してなかったわねまたあなたにやられたわ」

「もう魔女にはヤラれねぇって俺はあの日心に誓った」

「ふふふふどの日かしら?」


枯草の魔女は期待通りの彼の行動力と底の知れない炎と惹かれてやまないミステリアスな存在感に、久しく笑いあり余るまりょくをうずうずと滾らせ潜ませている……。



黄金髪はくるくると豪華にセットされていた、そして着物姿にコスチュームチェンジ。

万事抜かりはない、そうでも言いたげだ。

見慣れたドリルヘアー姿しかもゲームでは拝めなかった着物姿もまたいいものだと、父親は見つめる彼女にニヤリと近付いていった。


「このまま地球に向かうのでして?」

「あぁ、そうだこの訪問には色々意味があるらしいが? ま、俺にはそんな深い事はわかんねぇなもう1人のカグヤが待ってるとか待ってないとか主人公はいるのかなぁとか、ハハハハなんか知ってるか別所透蘭?」

「それはこちらが聞きたいところですが……土産の品の茶器もバッチリで歓迎されるはずでして。茶会は大昔からカリスマたちの権力チカラの誇示のためにありましてよ、それはもう豪勢で煌びやかな見たこともない月と地球の大茶会になりそうですわ」

「ハハハまさか月と地球で茶会とはな、こんな経験滅多にないぜ! ……運がいいっ」

「ふふ、そうですわね」

「んんんんん興奮してきたああああ、じゃ地球での茶会はまかせたぞ別所透蘭!」

「ええ、ふふ、まかせ……ええ?」


万事抜かりはない、はずだった。

彼は彼女にまた知りがたきことを陰の如く……含みたくらみ笑うのであった。





それ以上は近づけないショートケーキの先端に佇む黒髪は、ただ青いホシを見つめる。

ゆっくりと肩を並べた宇宙に溶け込む黒スーツに、同じ方向を向きながら彼女は口を開いた。


「セシリア・リンドバーグ。────それがもうひとりのカグヤ、もうひとりのワラワの名なのだな」

「あぁ俺の記憶ではたしかにそうだ、その名で違いない」

「異人のような名なのだな、ふふ」

「ハハ色々と時と共に流れ着いたお嬢さんみたいだからな」

「……たのしみにしておる、そちの生まれ育った地球も」

「ハハハおかしなこと言うな、故郷の地球ならあんたもだろカグヤ様?」

「そうであったな……フフ、ワラワは地球に数百年ぶりの墓参りにいくのであったなァ」

「ハハハ茶会のあとも決まってたか、ナラ行こうぜ青い民の青いホシ」

「うむ! 今ばかりは月は見上げたい気分であろうフフふ」

「なんか俺のより上手いなソレ……、ハハハハもらっていいか?」


青いホシから甲板に吹く風は甘く誘っている。

天月位のカグヤ様を一目見ようとテラムーンの港に押し寄せた月の民たちに見守られ急遽大々的に月を発つ、その時はもうすぐ……。



時はこの先、


妖しく満ちていくものもあればゆく道を誤り欠けていくものもある……。

月にも水はあり山はある。月面にも流れる水はあり、分かれてしまう運命がある。


ここから先が、介入された炎、やり直せない歴史(ゲームプレイ)の分水嶺である。



天月位カグヤ様、べっしょ水産別所透蘭のアポイントなし地球電撃訪問は巨大戦艦甘多に乗って……宇宙星々の海を匂いただよわせ今、見送る月面を発っていった。

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