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月の道中手に入れたマンタカーでテラムーンパレス天月の間に電光石火の進軍劇で侵入を果たした。

十六衆の武闘派3人を【爆破【連】斬】で吹き飛ばした父親はついにカグヤ様とお目合わせ。

騒然とした場はこれでもかと誇示され魅せつけられたチカラと目に焼き付けられた紅い炎に静まり返っている。


そして見上げる天はそんな渦中でもどっしりと座り睨み見下ろしながら、低い声で発した。



「扉を破るとはおとなしい山猫(キャリー)もおどろく派手な登場だな、騒々しい」


「気の重そうなドアが閉まってるもんだから失礼した。ハハ」



武器を仕舞っても取り巻きさんは襲い掛かっては来ていない……。

血の気の多そうな信号機をぶっ飛ばしたからか?

さっきの脅しも効いたか?

まぁどちらにせよこれでなんとかまともにここのトップと話ができそうだ。てか話してる。

してあれがカグヤ、カグヤ様。

顔は記憶にあるのと……たしかに合致する! 想像していた通り、黒髪お姫様カットで整っている日本人キャラだがどこか幾分エキゾチックでもあるな……あと黒目……なるほどそれも地球の金髪カグヤと合致して瓜ふたつなところか、たしかに金髪に黒目だったが……そういうことかよなるほどっ。

よそおいは着物、十二単ってやつか? それはうれしいが、なんだうれしいって……いやうれしいね。まさに美しきカグヤ姫だ。


だが美しいだけじゃない、ぺちゃくちゃと負けても案外お喋りなアメジさんの情報通りだとカグヤは十六衆より圧倒的に強いと言われている。

さっきの声の感じからして気も強そうな感じだ。

古のヨイザさんの話の中でもカグヤ様ってのを恐れていたしな、わざわざあんなデカブツティックを用意周到にこしらえるぐらいだ。

あのときの俺の悪寒もあながち間違いじゃなかったってわけだよな、さすが長年VRエロゲーマーな俺だぜハハ。


マァ次の土産でどう動くか次第だ、集めた情報では月のチカラ権力はおそらくカグヤにかたよりすぎている。



ながながと見つめ合う黒い瞳と瞳……。

ひりつく静寂がまた支配していく空間に、カグヤ様はうっすらと微笑みを崩さず発さない。

初対面同士は味わうように飽き足らずまだ目を離さない。

そして一通り思考と観察を終えた黒スーツの男はこれ以上もったいつける必要もないので口を開いた。


「十六衆のアメジとその他ゼンブはこの俺が倒した」


そう淡々とハッキリと静寂に渋い声を響かせていく。

天月の間に殴り込んできた男がいきなり宣う衝撃的な到底あり得ないと思われる内容に、色とりどりローブの取り巻き一同。


「バカな嘘を言え、ティックを使わずとも小望月アメジ様の武は十六夜のヨイザをも数段しのぐッ」

「へぇー」

「賊風情がフザケルナ!!!」

「どんなトリックを使った貴様ぁああ!!!」


「嘘ってんならお前さんがやってみるか?」

「ぐいっ!?」

「お前でもいいけどっ、ゲッカドウドウ?」

「へぇー、……イヤだねっ。ゲッカのーのー」


黒スーツが笑わない目を向け指差し指名したスキンヘッドの肌色ローブは不意におどろくあまり歯茎剥き出しでたじろぎ、

ワラいおどけた様子で指名されたオレンジ髪の白色ローブは、のーのーと右の手ぶりを左に扇ぎ丁重に断った。



反応はまちまちか。16人もいりゃ、おっと14じゃなく15か? この場で派手な色違いローブは──8人みたいだが全員さっきみたいな元気な信号機みたいなもんでもないらしいな。


「ゲッカドウドウも嫌なら仕方がないか、これはその証拠のお餅つきの飾りだぜ」


満月というには少しだけ欠けたやけに妖しく光る紫の円結晶の首飾りがそこにある。

黒スーツの男が紐部分を掴みぷらりとクビの代わりに掲げている。


「バカな!??」

「へぇー……へぇー」

「と、とととトリックぅ……!」

「ありえぬ……っ!!!」


見覚えのあるソレをその妖しい輝きを見てしまった十六衆はまた驚く、黒スーツの男はしめしめといった表情を隠しきれていない。

へぇー……へぇーといいながら、白ローブはナカにしまっていた自身のオレンジ三日月の首飾りを同じように掲げ取り出し口をぽかんとあけ比較した。


獣の耳をぴくぴくと反応させ寝そべるおおきな山猫を撫でていたカグヤ様は動じずにやがて扇子を地にイチド打ち、見下し言った。


「フン、それでこのカグヤの前でソレを見せつけどうする気だ貴様は」

「どうするかって、これは相当失礼。俺はご丁寧にそっちからご挨拶に来られたヤツらを散々に寝かしつけて魔女のアジトからカグヤ様に一目拝謁しにきただけだ、これ手土産のケーキセット」

「このカグヤを舐めているのか、貴様なぞ一瞬で消し炭にできる」

「ハハハ、あいにく同感。ちょうどアメジさんとさっきの信号機じゃ物足りなかったんだよなァ」


凄む、声の圧を強くする発言内容も過激になったカグヤ様に対して、土産の白い小箱を手持つプレイヤー父親は耳に響いたカグヤの発言を笑ってからまた笑い見上げ目が合った。


そしてまたおとずれた間に、また打ち付けようとした黒い扇子は地を掠めて泳ぐ。

パッと咲き開いた扇子にはエメラルドの鯉が映り泳ぐ。

カグヤ様が扇子を打ち付けるのはそれはよほどお怒りだ、

カグヤ様が扇子を開き咲かせ泳がせるのはよほど……


「……よかろうワラワは仮にも天月位、よほどの戦時でないかぎり炎を身勝手に使うことを禁じられている。それはたしかにワラワがアメジに授けた小望月の結晶である、その輝きと切り口は並の職人では偽造はできまい。して先程十六衆の武闘派ルビル、ブルル、ピクシを退けたこやつの実力はワラワとて舐めてはかかれぬ、ここでワラワが全力を出しゲッカドウドウと戦闘をし万が一その余波で既にアメジを失いなおそなたらまで失うというのであればそれは月とテラムーンにとって大きな損失となる。────要求を言え、内容と身の振り方しだいではお前の雇い主である魔女のように牢にぶち込むだけですましてやる」


イロイロとまぁ……──魔女は月の牢ってことか。にしても炎……ハハハハ、こんなところにも炎神かよ。

ほんとに隙あらば炎神のはた迷惑な火が燻ってんなエロいゲームには。


まぁとにかく戦闘は予定通りに避けられて話し合い。

少々上手くいきすぎているのが鼻につくが……俺としてはこんな強気で美人なキャラクターなら対してみたくもあったが残念だ、ハハハ。


「んじゃ、すこしケーキでも食いながら……何の因果か奇しくも炎使い同士ここでひとつ物騒をやめてティータイムってのはどうだ?」


「……」


カグヤは口を開かない。父親の言った内容に押し黙りだが扇子はあおいで止めない。

もっと浴びせろと言わんばかりに。


「あれ? 月にはティータイムの概念はないのか? 俺地球人だけど」


出来上がっていた静けさをきらい、ぽーん、と放った男の一言に控えていた色とりどりが食いつく。


「ナニ!???」

「地球人だと……」

「へぇー、青の民」

「なんという!」


こいつらいちいち面白いな。

そんなにいいリアクションで反応されると気持ちいいってやつだぜ?(とくに肌色ローブさん)


扇いでいた手は止まる。脇息で休ませていたひじ掛けに腕はなく、


「……下がれ十六衆」

「ナッ!?? ですがカグヤ様こいつは月の民ではなくッ!!!」

「よい、下がれ。地球人ごときの土産話と茶菓子のひとつぐらいこの天月位カグヤ恐れるものではない」

「ほれちゃんとワラワの前に跪いているようだしの」

「アレはこの賊の従順なフリをする策謀で!」

「そんなフリをするならばこれ程愚策もなしに派手に暴れまい。──そこで虚しくのびているルビル、ブルル、ピクシをムーンライトセンターまで運べ十六衆ミカン、うぬらもな」

「へぇー、はーい!」

「ぎょ、御意っ!!!」


続々と十六衆たちは天月位であるカグヤ様の命にしたがい動く。

黒い背と金髪の少女を睨みはけていくカラフルローブ、

ひざまずく黒スーツはニヤリと笑い見上げる、

上段の間に立つカグヤはその場を降りないただ笑い返して扇子は熱帯びた美しい顔をあおぐ、

いつの間にか寝起きの山猫は駆け降りのんきにも見知らぬ黒スーツにすり寄っていく、土産の甘い品が気になったのだ。


「ハハハこれは大型猫ちゃん用じゃねぇぞ、猫はちくわ食えちくわを?」


カグヤ様は十六衆を天月の間から下がらせた。

煌びやかで広大な黄金の景に人は片手で数えるほどしかいない。

プレイヤー父親とお付きの別所透蘭の天月位カグヤ様への拝謁は認められ、ひそかな話し合いの場はもたれることになった。

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