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一杯のティーカップに注がれたコーヒーとミルク、不思議にも混ざり合わないそれは迷い人を白い方へと誘い道を示す。


たどり着いた魔女の庭にある隠された正しい入口と出口、魔法陣を起動し宙に浮いたビジョンにある項目の……セレクトした【月】へと父親と透蘭は共に────────


黄金に輝いた魔法陣の上から景色は変わり、テレポートするように放り出された見知らぬ宙空。


2人、ふわり、舞い降りた。


「ここが【月】でして……?」


「そうとしか言えないな、偽物じゃなく本物の方の……まぁどっちもこの黒空に息ができている時点で深く考えていても仕方がないかもなハハハ」


「そういえばそうですわね……ふふ」


舞い降りただだっ広い月面の野と見上げる宇宙星々の光、

変わったのは空気でわかる、2人は深く深呼吸し、この摩訶不思議な現象について深くは考えない。

ここに来た共有する目的があるからだ。


しかしだだっ広い……だが、魔女の庭と違い殺風景でもない。

仰々しい遠目からも豪華であろう白い建造物を見つけたからだ。

この未知の月で目指すべきところが分かったと、父親と透蘭は横向き頷き合った。


しかし見えゆくところまで徒歩でいくにも走っていくにしても遠い……2人してそう思いその場にとどまっていると。



「ケビイシだ黒いのと金髪ぅそこで止まれぇ、どぉこから現れた?」


彼方からさっそうとトバし現れた────空飛ぶ灰色の車に乗った太っちょがこちらを見ている。

緑のベレー帽と小袖を着た時代劇の一般男性のような……太っちょが車内から訝しみ見ており、車を止めた。

2人気付いていたがただの車ではない、宙に浮いており伸びる両翼は長く、尾も後ろについている、車体前方には出っ張りが2つありギョロっとした邪のない目が同じくこちらを見ている。

つまりマンタのようなモンスターに乗った小袖姿の太っちょである。


「なんだケビイシ?」

「おそらく検非違使(けびいし)、警察官のことでして」


ケビイシその言葉がよく分からずにいた父親を隣にいた透蘭はすかさず推測し説明した。


警察官、言われてみれば納得しないこともない……灰色のマンタカーに乗る……なんだ? 江戸時代なのかミリタリーなのか小太りの男だな? まったく知らねぇがおそらく強くはなさそうだ。


「見たこともない恰好? 怪しいなおまえらぁ」


「そうかそうか、これはラッキーにも末端までは俺の顔は割れてねぇってか」


「おらが末端だとぉ? おいどこのカケラ出身だニのカケラかワのカケラの田舎もんかぁ? ちょっとお前こっちに」




「――案内たのむぜ、ちょっくら灰色(それ)トバしてカグヤまでな」




車から降り怒る足取りで近付いてきた小太りの背後────ゾクリと……それは冷気ではなく熱気。


不遜な態度をとる田舎もんを痛めつけようと見つめていたはずが、一瞬で──目の前にいたはずの黒スーツはいない、


メラメラと燃える刃が脂肪の詰まった喉元の一寸先にあり、渋い雄の声は不敵にワラっていた。




▼▼▼

▽▽▽




炎で脅して運よく巡り合えた第1月の民に案内される────未知の道。


「これイジョー無理無理ぃカグヤ様がああああぁドのカケラのおらの行きつけの甘塩ド・ドーナツおごるからっ」

「そうか、じゃ。俺の分も買いに行ってこいっおつかれぇえ、さぁて終わったらドーナツパーティーだいくぞマンタカーくん!」

「ぷろろろろろろrrrrr」

「ナ!? マン太郎うううううううんぎゃあああああぁあ」

「……疾きことマンタにノって、でして……いきなさいアマンダ!」

「ばるるるるrrrrrrrrrr」


マン太郎を忘れマンタカーアマンダは新たな2人の主人を乗せて、潜入していたものの途中に不審に思った他のケビイシに見つかりバレてしまった【月面都市テラムーン】を疾走していく。


テラムーンこのまん丸く外壁で囲まれた都市エリアの中央には、月の絶対的権力の象徴である白い大神殿が聳え立つ。


目指すべき場所は誰の目にも明らか、父親透蘭マンタカーアマンダはパーティーを組んだ。

疾きこと風の如く、風を切り町通り路地裏を抜けてマンタは力強くかつひょいと華麗に道を泳ぎ進軍。

侵略すること火の如く、大神殿内部へとはやくも進入。ネボケていた敵地を激しく火のように、いや炎のように、イヤッ炎そのものを刃とブーメに纏わせて襲い来る全てを一直線に突き進む3つのチカラで協力し振り払う。


「死にたくないならのいとけよッゲームじゃないぜぇ死んでもしらねえぞおおおお」

「このストーリーはなんとなくわかっていまして……!」

「がるるrrrrrrrr」



騒がしい、おかしな様子だ、胸騒ぎではないこれは明らかに異常だ。

ナカに集まった高官たちはみなそれぞれに近付く何かを感じ取る、勘のいいもの鈍いものも山猫を撫でる手を止めたものも。


豪華で重厚な存在感のある金の扉はガタガタと震え怯え鼓動が速まるように、


やがて金色に赤く射し込みこぼれ漏れる。


粘っこいマグマが怒り噴火するように炎熱が真っ二つにその大扉(かべ)を吹き飛ばした。


扉を突き破り入ってきた。


ここまでレンタカーにしたマンタカーアマンダの灰色の片翼に乗る男はひょいと赤い良さげなカーペットの上に飛び降りた。


ここは天月(てんつき)の間。

青ローブ、赤ローブ、ピンクローブ武闘派の3人はすぐさまこのとんでもない事態を今まさに引き起こしている不届き者に対し武器を抜き形相怒らせ、排除しに向かった。


「キッサマアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ナ!!? 賊があああああああああああああああああ!!!」

「カグヤ様おさがりをオオオオオオオオオオオ!!!」


「下がんのはお前らだろっ。【爆破【連】斬】!!!!!!!!!」



天月位(テンツキー)のいるこの聖なる場でティックを召喚する事はならない。

激昂し抜き出した三日月刀は飛び上がり斬りかかる

青いオーラ纏う脚蹴りは地へと突き刺さる、

ピンクのビームレイピアが賊を串刺しにしに向かう、


ぶわり電子の荷から白鞘を取り出し──

前へと1人躍り出た黒スーツの男は躍動する。


斬撃に付与した中規模の爆炎を引き起こす技【爆破斬】、

このゲームセカイでろくに技を覚えるイベントがないのならば、この男は思考を停止せず考えた。

速く、ただ速く、ひたすらに単純に、爆炎斬も爆破斬も同じだ。

一刀、二刀、三刀────────十三刀。


エロいゲームのシステムを超えたコンボ連続する爆炎の華を。

爆発花火を炎神全開で!



3人を相手取り、炎神となったプレイヤー父親はその赤青ピンクスベテを自分の炎に染め上げ吹き飛ばした。



「────んだよ十六衆つってもサァ、ヨイザさんや月の紫じじいほどでもねぇなお前ら信号機、ハハハピンクはないないってか」

「てか燃やされたくないならオマエラも騒いでないでとっとと武器仕舞えや! お美しいカグヤ様の御前だぞ?」


ぐるりと(すく)むカラフルローブの面子の端から端へとへとなぞり滑らせた切っ先は────元の鞘へと納まり。やがて、男が見上げる先。



天高く脇息(きょうそく)に肘置き座すカグヤは、握りしめていた扇子をパッと咲かせた。


遠くだがその距離は視認できる程に近い。目と目が合う同じ見上げ見下げる黒い瞳はそれぞれにワラっている。



これは……ええ、予想になかったでしてよ……!



父親、別所透蘭、強引に金の閉ざされた扉をこじ開け……ついに拝謁、テラムーンパレスの天月の間にひとり高く座する天月位カグヤ様、その御前へ……。

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