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「【斬波爆王斬】!!!」
炎波一刀両断、月王飛蝗は紅いエネルギー斬撃と無数の小爆発に焼かれ月面へと墜ちた。
ここぞのリミットメルトの飛び道具に反応は間に合わず────大型ティックは両目をバツ印にし戦闘続行不能────
「っし手ごわかったが今の父親のパワーならこんなもんか。成長実感」
「ゥぐっゥ…………」
結われていた白髪は乱れひろがり地に伏している。敵将の受けたダメージは明らか、これ以上続けるかどうかはプレイヤー次第。
しばし出来上がった様を眺めたプレイヤーは刀を持ったまま一歩一歩敵との離れた間を近付いていく。
「さぁて、アメジさ」
倒れていた飛蝗の舌は敵を捕らえる。
黒スーツに巻き付いた黒い舌はお決まりのように送電を開始。
捕らえ伝う電撃が敵を焼いていく。
「ハハハハ……刀を握っていたならば卑怯な手とは言わさん! この老いぼれの我がままをジベタからのお返しだ!」
突如べっと、素早く飛び出してきた舌の不意打ち、死んだふりをしていたアメジと月王飛蝗。
アメジはのそりと余力を振り絞り立ち上がり笑う、お返しとは父親の天からの奇襲に対して悪びれるつもりはなく、黒バッタを介し電撃をお見舞いし高々と笑っている。
不用意に近づいたプレイヤーはその老将の罠にかかりながらも、
「────ハハハハ、!!! 卑怯なんてのはなぁ……悪意に塗れたこのゲームの中でなんてェ気にすんな! 手じゃなく舌、痺れる活躍ドキ、隠し技にはシチュエーションをね! 【身炎浄化乃武】!!!」
巻き付く虫の舌を焼く程の────荒々しく燃え盛るオーラを纏う。
電撃を掻き消し紅く染まり、老人の我がままなど黒スーツの男はものともしない。
「その我がままってのは、つづきってことでいいんだな?」
刀の切っ先を向け、にやり。
炎を纏う剣士は笑った。
「ふふははこれ程とは!!! やはりまだ隠していたか小童メ! ──その熱波、来い! これにて我はああああ!!! ハハハハハハ」
「そう笑うな万年バトル月漢、イってやるよ! ハハハハ」
ワラい合う2人は構えた、このつづき……お互いに持ちうる最大のチカラで存分にぶつかり合うことを約束するように。
「【ジョーカ爆王斬】!!!」
「【小望月流・アメジスト渇拳・崩月砲】!!!」
かち合った──荒ぶる炎刃と秘奥義アメジスト渇拳。
紅紫突き抜け爆発する、勝負の行方は────────
▽
▽
2体と1人に追い込まれている、1人。
だが、駆使できるものは駆使────少女は空の回復ボトルを投げ捨てて集中力を切らさない。
「興味深い継戦能力! しかし月のラボにも回復アイテムはあります。カラクス盛り上げなさい【拡散コンペイトウフルーツ】さらにあなたにはデクルス蹴鞠は得意ですか【オレンボム】」
茶運びからくり人形カラクスは主人のビムーンより転送されたお椀にあるアイテムを雨あられのように個体菓子のエネルギーを変換拡散しパーティー全員を回復。
主人の技【オレンボム】をトスし、赤いスカートで舞う木偶人形デクルスは次々とオレンジの物体を蹴り飛ばした。
回避行動、更に魔法ブーメで迎撃。月面に踊る金髪は乱れる。
息を整えながらブーメを握り敵を見据える、美しく光らせ見せつけてくるグレープの瞳はまだ諦めていないようにビムーンの目には映っていた。
「もう諦めればどうでしょうかお互いまだまだ底の尽きない回復アイテム持ちですが……あなたの戦いぶりを観察したところその三日月の魔法の飛び道具に3対1を覆すほどの火力と速さはないようですよ。────私も未来ある未来に飢えた聡い若者を倒すために武力行使をやっているのではないので。話してみたところあなたは浄化対象ではありません、私の月のラボにてひん剥かず生命の保証はしますよ、仕事もお教えしましょう」
それは敵にして敵ではないような言動、ここで彼女が諦めて武器を収めれば殺しはしないと。
嘘か真かそんな事を言う。
状況は依然3対1、これまでの戦いで幾度か魔法のブーメで切り刻んだものの回復アイテムを持っている相手は万全の状態に近い。
対して1人で3人を相手していては透蘭に潤沢な回復アイテムがあるといえど、このまま続ければ肉体の消耗の差は広がっていく。
しかし、透蘭にとって問題はそこではなかった。
長話の間にも息を整えた彼女は、
「ええ、話してみたところおバカにもッ、あなたの宣う月のナミダとやらは月からモンスターを産み落とし混迷を極める地球にそのまま悠々と侵攻すると……月の学者はそんな事を平然と言うのでして! 学の無い無知な私は月に住むあなた方の歴史を知りません、あなた方の国を文化を知りません! ですが、地球にはべっしょ水産の美味しい“ちくわ”がありましてよ! ビムーンっ、あなたはそれを知らない!」
チカラ強く指を差し、言ってみせた。
あまりにも生命力のあるエネルギッシュな良く通る声と指先に……オレンジローブの緑髪は、フッと鼻で笑ってみせ。
終わるまで閉じていたオレンジ色の唇を開いた。
「チクワなどとそんな知らないもの地球を侵略してからフルーツ盛りとセットでいただきましょう! ではこのつづき、どうなっても知りませんよ私は手堅く、デクルス【レモンポップムーン一曲踊りに誘いなさい!】カラクス受け取りなさい【オレンボム100%】【失礼、こぼしなさい!】」
透蘭はビムーンの誘いには乗らず、ビムーンは透蘭の言葉を受けて戦闘は続行。
月面を細い二脚で走るのはこれまで前衛を務めて透蘭を翻弄し邪魔をしてきたデクルス。
奇怪に踊りながらインファイトを仕掛ける、ステップの末、長い脚を矢のように伸ばし────
「月のワルツはノレませんわ! 【火禅雷震】!!!」
真正面から脚に合わせ吹き飛ばした。
オイドブーメは投げず刀のように手持ち炎雷風の上級合成魔法の斬撃で寄ってきたデクルスを避けず退ける。
だが敵の攻撃はまだ終わらない。
失礼にもお椀からこぼされ投げ捨てられる数多のオレンジは勢いよく────
「即構築! 【アイスウインドブーメ】! 守れっカマクラ!」
100%のチカラを込めたオレンボムの爆撃を氷のドームで覆い渦巻く風を纏うカマクラが受けて耐える。
一度習えば要領のいい彼女はやってみせる、父親と練習していたもうひとつの投げない魔法ブーメの可能性。
失礼なオレンジの爆炎は明けて────傷だらけの透蘭は渋く耐えしのいで見せた。
「動かざること雪山の如し……ッ……我が身の頑強さも計算の内です!」
「んっんっ────ぷひぃぃ……、さぁシミュレーション通りの属性のピースは揃いましてよ、出し惜しみのない最終局面リミットメルト!!!」
寝間着姿の金髪を纏うオーラは緑に輝く、リミットメルト。
属性ブーメを散々に放ち神座した彼女の中に隠されていた条件は既に満たされていた。
「投げる三日月ではなく剣と盾!? パターンを変えて凌ぎましたかっ、そして次はなんです……興味深いおもしろい! ならばその局面ゲッカドウドウ受けて立ちあなたの計算を狂わせます! 私にもひん剥けない皮はないはずです【オレンボム170%】さぁ蹴りますこぼしますよ、失礼!!!」
デクルスはオレンジを蹴る、カラクスは転送されたオレンジを大きなお椀からこぼす。
生成量限界突破【オレンボム170%】熱くなってしまったビムーンの持ちうる全てが透蘭へと手加減なしに解き放たれた。
迫るシチュエーションはオレンジ一色、伝う緑オーラ、握るダブルブーメは投げ放たれた。
「失礼は武で吹き飛ばします!!!」
「疾きこと風の如くッッッ」
投げ放たれた────回る2本のブーメから風の刃のエネルギーが四方八方に咲き乱れる。ばら撒かれた失礼なオレンジを数多の刃で切り刻み────鮮やかに迎撃爆破。
「くっ並じゃない風の刃……、ならばこちらも倣い盾を【ビッグオワンシルド】」
競り負けたビムーンは冷静にも切り替えた、攻ではなく守。
カラクスのお椀は宙を舞い不思議にも大きさを増しながら────ドンッ。
お椀のドームが3人を覆った。
土壇場でのビムーンのアレンジ技は成功、迫るブーメに対し守りを固める。
「構築することクラス委員長の如く」
迫るブーメは次の魔法陣を即構築、リミットメルト限界を溶かしパワーは無限、見通す視界は万物透き通る川底のように粼粼。
チカラ増し勢い増しノリに乗ったクラス委員長に構築のタイムロスはない。
宙に浮かぶ魔法陣を次々と乗り継ぎながらカラフルブーメがお椀を痛めつける。
そしてついに崩壊。
ブーメの猛攻末にひび割れて砕けて、ビッグオワンシルドはもう役に立たない。
エネルギーを使い切ったカラクスは機能停止。
「皮とプランはまだッ! 【ピールオレンシルド】!!!」
「侵略すること炎をもっと燃やせェぇッ」
荒ぶる炎は月面を焼き焦がす。間に合わせたオレンジ皮の意地がビムーンを覆い赤い魔法から身を守る……。
2本のブーメは炎熱一色の猛攻でこじ開けようと、
「動けっ、動けッ、ブーゥメよっ……舞え!」
炎は消えど、最後はチカラ押し。まりょくを纏ったブーメは余りにも速い。
ズタズタと斬り裂かれたオレンジ皮の守りは、
「ンぐぅぅぅ、こ、これは……魔女!!?」
こじ開け見えてきた、“敵”。
「陰に映える鼓動心雷は、敵を討て撃てと奮え鳴りやまない!」
月面跳躍、空中にて受け取った2本のブーメは奮える絶対的感覚の予感。
高く、月面舞い降りるダブルブーメ────乱れ舞い降りる金髪は敵を華麗に斬り裂いた。
「風粼炎斬・シンライ!!!!!」
黒雷墜ちて────全属性まりょく爆発!!!!!
全属性のまりょくドームが呑み込む、敵に背を見せるのは失礼……振り返り彼女は言う。
「名乗り忘れてましたビムーン、魔女ではなく……私は見つけられたもうひとりの可能性、すごい別所透蘭でしてよ!!!」
これにて月面決着、4人の戦士たちの激しいバトルは────────可能性を出し尽くし存分に魅せ付けた別所透蘭の美しいリミットメルト技で締めくくられた。




