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三本角の灰色バッタ部隊は父親と透蘭の2人パーティーに敗れ、戦闘は終了した。
正々堂々真正面から敵をねじ伏せた2人は────────
「なんとか1人捕らえまして、縄はきつく縛りましたわ」
「よしでかした。さぁてお前さんには聞きたいことが山ほどあるなぁ」
月の戦士を1人無力化し捕縛することに成功。
透蘭が古井戸から持参していた縄でせっせと手首足首胴をきつく縛り、完全に拘束完了。
傷付いたパンツ一丁の月の戦士は敵を見上げなおも塞がれていない口で抵抗。
じたばたと動くも拘束は解けず地を無様にうごめく。
「グッ、なにがよ! こんなことをな、そんな刀でなにを!?」
見上げた先の黒スーツの渋男がいきなり話途中に抜刀。
月の戦士はあまりの唐突さと男の平然と刀を抜いてみせた顔に驚いた。
「ん? 足裏をかるく何度かブッ刺す、とあるトレジャーハント系のVRゲーで途中裏切った仲間にやったことのある拷問方法だ。名付けて絶対吐いちゃう足つぼマッサージ」
下準備としてひょいと空いた片手で縄で縛られた捕虜を裏返した。
月面に這いつくばる伏せの姿勢となった捕虜に対し、後ろへと回る。
「ひぃ!? そんなまっさァッ物騒ややめええあええええええええええ!!!」
「おそろしいのでして……」
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▽
「────────んじゃお前らはアレかそのヨイザのお友達のアメジってやつの三本角で最強の直属部隊【ホッパースリーズ】ってことだな。その前に来た角の少ない奴らが何人かやられたことは知っているのか?」
「いや俺はそんなのしらされなかった……。ただ次々に入り口が開き次第、角の少ない順に魔女の庭へと送り込まれていただけだ! わよ!」
地に座らされたその月の戦士から滝のように流れた汗は、なんの証か。
嘘か真か吐いていった敵の情報を基に、父親は頭を働かせ思考する。
ということは魔女の仕掛けたなんらかの外敵侵入に対する制限のマジナイがあるってわけかここは。
電波や何やらが遮断されていて情報が正確に伝わらないこともあるだろうな。
だからこんな馬鹿げた逐次投入をするわけか。うん、ゲームとしてはぜんぜんオッケーだけど。
だとするとそろそろ作戦通りに大部隊を展開したつもりのお偉いさんが来てもおかしくはないな……。
「よし、約束通り情報をしゃべったお前はまだ生かす。これが報酬のドリンクだ、また後でしゃべってもらわないといけないからな、飲め」
「ひぃ……渋い顔してろくでなし……んっんっ────」
飲ませたのは旅の道中手に入れていた【すやっとすやっと天然水…】。
すやすやと眠りにつく強烈な睡魔に襲われる飲み物だ。
まんまと父親にすもも味のそれを飲まされた月の戦士はがくりと月面の硬いマクラに伏した。
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ティータイムという名の作戦会議。
手に入れたこれまでの情報を2人円卓に向かい合わせ、整理していく。
「そろそろ月に居るという幹部その十六衆とやらがくると?」
「あぁのんきに来てもおかしくはない、向こうも俺たちがここにいるとは思ってない手始めの中継地点とでも考えていたんだろう」
「ですが狙いは既に可黒美玲のお父様のようでして」
「うん、なんたらの命がカグヤ様にくだされているようだからな。大々的にやられていたら仕方がない」
「つまりやってくるすべてが敵と? 仮にこのまま幹部を倒したとて着地点が見えませんわ、いつ魔女を助けに行くのでして? 先程のような駒を手に入れて利用し捕まったフリをし潜入するのはどうでして?」
「いつだろうな、すこし冷静に考えてみると魔女を殺すと厄介なことになるのは月のヤツらも同じだろう……(そもそもころせるのか?)俺に対して魔女の身柄を使って脅すような真似もしてきていないしな、じかんはありそうだ考えてはいるが……」
「んとそれと捕まったフリだったか? そいつは良い案だと思うけど……ん?」
「なんでして? なにか」
「いや、なんでもない。とにかく魔女の救出が第一として、問題はここの指揮を執っている十六衆のアメジさんってのの撃破と月に行くタイミングと手土産」
「手土産?」
「さすがに派手にヤリすぎたろ? こちらから出向いてもカグヤ様がお怒りで許してもらえないかもしれないからな」
「それは……どうにかなるものなのでして……」
捕虜が言うにはアメジが私有する戦力に三本角バッタのホッパースリーズより格上の部隊はいないという、手に入れた情報からこれより先は月の十六衆アメジとの直接の戦いになると2人は予想し結論付けた。
そしてアメジや諸々を打ち破り頃合いを見て月へと出向く……手土産をもって……プレイヤー父親はこの時点である程度のアタリと算段が付いていた。
透蘭は目の前の男には何か見えているこの戦いの果てのビジョンがあると感じ、
多くは聞き出さず話題を変えた。
「あの魔女はナニモノなのでして? 商売人とだけは聞いていますが、他に何かご存じで? 可黒美玲のお父様も魔女とふかい親交があるようなので」
「んー、親交といってもつい最近のことだからな俺にとってはまだ明確な味方とは言えないな。あの魔女については魔法に長けた集団のひとりであるぐらいしか分からないことの方が多い、なので基本はあんまり信用していない、だがたすけてくれと呼ばれたからには助けない選択はない、な。そんな関係だな」
「そうですか……」
己の身に危険が及びながらもつい最近知り合ったばかりという相手を助ける……。
古井戸の私たちもこの方に幾度と教えられ助けられていまして。
その強さで悪を挫く、その思慮で悪意を呑む。
“義”、感じるのは。
ただならぬ……。
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▽▽
このチャネル月面はおかしい、ここには巨大な置物がフタツあるはずだが高度な光のマジナイがかけられ……見えない。
魔女の庭をこじ開け不法侵入────月面のランダム地点へと強引に召喚された。
四本角の灰色バッタに乗る一際目立つ紫ローブと、協力関係にあり共に参ったオレンジローブ。
「────先遣隊……ホーンズは何故いない……?」
「調査中に魔女の霞のナカに迷い込んだのでは」
「うむ……3分後に呼宝石を鳴らし呼び戻」
「待ってくださいアメジ様、アソコに見えるのはなんです?」
オレンジローブは見渡した目の先に見つけた────白い椅子にうなだれ腰掛け、縄でぐるり縛られた裸の────────
「────────【爆王斬】!!!」
空から突然舞い降りてきた────────紫ローブの背を斬る紅刃、
やがてそれは傷跡から威力膨れ上がり巨大な炎ドームを形成する。
奇襲のイチゲキを耐えたバッタたちはダメージを受け超反応、パッシブスキル【高級アシパッチン】で仰け反りを無視し跳躍、フタツの影が紅色から脱出し散る。
「ぬぅうううなんだという!!! 炎!!?」
「そうさ父親の炎!!! じゃあ新技行くぞアメジさんッッ【爆破【連】斬】!!!」
跳躍する灰色に乗る紫の将に、飛び付き追いついた黒スーツの刃、白蜜は迫る。
【爆破【連】斬】
成す中規模の炎球は一刀、やがて八刀の重いジャブが四本角のバッタモンスターと紫ローブの人飛蝗一体の敵に炸裂した。
「ヤッ──【フレアボルトブーメ】【マジカルブーメ】【マジカルフレアブーメ】!!!」
手筈通りの父親の奇襲は炸裂、既にチャージし投げ放ったブーメは紫ローブに向かった父親とは反対方向に抜けていったオレンジローブの敵をロックオン。
バッタは既に後脚の脚力を使い、空中ではその魔法ブーメを避けれない。
完璧なタイミングは合わさり用意していた属性を纏った2投は敵を斬り裂く、更にまりょく残滓を利用し【マジカルフレアブーメ】を強引に即構築、怒涛の連続魔法を次々に突き刺さり激しいまりょく爆発を引き起こした。
「オレンジあなたはこっちでしてよ!」
ピンクのブーメランは白い尾をひきながら右手に返る、次の魔法陣をひそかに構築左手はあたためながらツキカゼになびく金髪は見得を切る。
予想通りにやって来た月の十六衆アメジに対して宙に浮かぶ甘い巨大戦艦から飛び降りての強烈な奇襲劇。
父親VSアメジ、透蘭VS謎のオレンジローブ、分断に成功しギアを上げての戦いは始まった。




