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炎魔法を纏う神器オイドブーメに次いで雷魔法を纏う神器ピークブーメが黒い目標物にぶつかる、高い山なり形をしたピークブーメは雷魔法を食らわせればそれで役目を終えて本来であれば透蘭の元へと戻る軌道を描く。
だが、ピークブーメは再び────炎雷纏うパワーアップしたブーメとなり敵を追いかけて斬り裂き激しくまりょく爆発した。
「……掴めましたわ────言われた通りに上手くできましたわ!!! 可黒美玲のお父様!!!」
連続で成された魔法の威力をその身に味わった男は炎雷のエフェクトの余韻を帯びながらも────ブジ。
スベテ予想通りとはいかなかったが試せる事を試していった結果────
ラヴあスには可黒美玲の魔法剣という戦闘システムに秘かに組み込まれた、あることをし技を使えば見つけることのできる実験的なおまけ要素がある。
(どうやらここではすこし元のゲームと違うようだが……主に美玲が)
美玲が仲間の魔法炸裂後のまりょく残滓を利用しておまけ要素である全属性の魔法剣をつかえるなら、
(美玲にはまだこれは教えていない、先ずは最強技の【クリティカルショット】の習得に集中してほしかったからな。とはいえ驚いたことに既に技として【爆炎雷斬】を自力のみで使えるみたいだが……おそるべしラヴあス完全版主人公補正)
そこで理屈として炎を全属性をおまけに合成魔術を既に扱える……類稀なる珍しい才を持つ別所透蘭が美玲と同じようにこのシステムを使えてもおかしくはない、
(聞いたところパーティー機能やその他もろもろの主人公特典も不自由なく使えるみたいだしな、この解に至ったもうひとつの根拠ともいえる)
そもそもブーメランという刀や薙刀に比べて特殊な神器を持っていてただ単純に魔法を発動するだけってのがどうもおかしい。
(あの2人とハルの開発チームが秘かに作ったとするならばそんーなもったいないことをするわけがない……ケイコの鞭みたいにアレやコレや追加したがるだろう)
元のラヴあスにはなかった合成魔法と俺の知っている魔法剣のシステムは複数の属性を利用する部分が単純に誰でも分かるように似ている。
たぶん今俺が敵として受けて体感したようにこうやって魔法ブーメと魔法ブーメを宙で組み合わせるのが前提なんだろう。
(前提のテクニカルバグ……ダブルブーメラン投法)
つまり戦場に漂うまりょくの残滓を利用し二本のブーメの単属性初級魔法を昇華させて複数属性魔法へと構築しダメージをつなぐブーメの特徴を活かした連続魔法戦法。
これでパッとしなかった初級魔法の利用価値が上がり戦闘の初速を上げることができるはずだ。一癖もふた癖も可能性が広がったわけだ!
「さらに魔法技を当て続けることで溜まる即構築のヒラメキシステム。ヒラメキ放てば習得した中級合成魔法も構築要らずで手早く撃て無駄にはならない、そこからまたまりょく残滓を利用しての連続コンボ魔法も理論上は可能だな、そして見せてもらったような三種の上級合成魔法火禅雷震はリミットメルトと合わせてコピペ陣で威力を倍加して使えばただようまりょく残滓もマシマシで効果的だな別所透蘭」
「ええ、そうですわね! 使わずいたまりょく残滓を【ミーヌ】の眼で感じ多くを聞き取るさらに、さっきのシーンで言いますと既に手に返り握るオイドブーメから遠隔でまだ宙を舞うピークブーメをチャージし強引に再構築する……この感覚ですわね!? 連続魔法合成魔法の怒涛の攻め立て……天を走る百足を2匹従えた毘沙門天の如くとでもいうのでしょうか……すこし私の強みが【別所透蘭】の全貌の片鱗が見えてきまして……!」
別所透蘭の左右の手にはそれぞれ渋い木製のオイドブーメ、対してピンクに染まったどこか可愛らしい色合いと形をしたプレイヤー父親から譲り受けたピークブーメがある。
自信に満ち溢れていて高揚している表情の別所透蘭に、
「俺の考える操作感覚的にもそんな感じだな。その通りでそれはよかったが……び、びしゃもんてん? ムカデ? なんでいきなり信玄から謙信……?」
連続ブーメ魔法が大成功したは素直に喜べることでありいいものの、プレイヤー山田燕慈が注目したのは彼女の発言内容のうちの些細なことであった。
そんな言葉を拾いあげられるとは思わなかった透蘭は熱気に満ちた表情から、あら、といった口を金魚のようにした顔にコロっと変わり。
「あらよくご存じで? んん。──武田信玄は食と山の神として、上杉謙信は商売と海の神としてライバル同士の2人はどちらもべっしょ水産では様々なご利益があるとして代々、社で崇められているのでして。そして上杉謙信が信仰する毘沙門天の眷属は百足、つまり百の足が途絶えず店にやってくるそして“べっしょ水産のちくわ”を食べてまた百の足は戻ってくる……古くから伝わる商売繁盛の神の使いですわ」
「な、なるほど……それは会社としてのいい歴史を感じるなぁ……」
何故か信玄が好きなのは知っていたが、そんな理由があったんだな。
たしかにほうとうは信玄が開発したし食か?(甲斐ってのは……山梨! あたり?)
そして謙信が越後の龍で海? ……たしかよく言われるのは戦で困窮する信玄に塩を売るナイスなナメプするぐらいに余ってんだよな?
べっしょ水産……完全版ではただのちくわ売りじゃないってことだな。
(眷属がムカデは初耳だ……! ムカデはなんかブーメランっぽい……か?)
「べっしょ水産が今の今まで長く滅亡せずつづいているのもお分かりでして? ふふ。────ところで……お体は大丈夫でして可黒美玲のお父様……?」
「ん、あぁ気にするな。やっぱりその得物だと目標物があった方が格段にやりやすいだろう。それに受けたダメージで今の実力もまさに肌で感じ取れる──ぐぴっと──んぷ……ふぅーバッタの2匹や3匹なら死んでいたな、ハハハ」
回復飲料を飲み干し、失ったダメージを回復し男は笑った。
「ええ、それはもちろん大いに助かりまして……」
噂以上でして……説得力があり、ひとつ失敗しようがためらいのない、短時間でこうも私のチカラをこのような突拍子の無いアイデアをジグソーピースのように繋ぎ合わせ拡張成長させてしまう、今までの紙のやり取りでは教えなかったのも実際にその目で見るまでは出鱈目なことを言わないという上に立つ者の意思を感じました、私以上の確かな観察眼……それもぜんいんに対して……私たちが自ら考えて行動する試行錯誤成長の余地を残すためでもあるのでして。
目の前の虎白子春のようにもよく笑う彼という人物をひとことで表すとするのならば“安心感”……とはいささか単純すぎるでしょうか……息子である可黒美玲があれだけ妄信的になるのも分かりまして。
しかしいったい、何がこの明るいお父様をそこまで……サカサとカサに悪魔ジバベル死神と言わしめたマリカスそれにこの入れば上っていくしかない塔に本物の月から魔女の月面に襲来してくるという未知の敵……彼の敵になりうる勢力は彼に教えられた情報だけでも多すぎるのでして……。
まさに知りがたきこと陰の如く……可黒美玲のお父様には底知れないなにかあるのでしょうね。
ミステリアスというよりは深き思慮……はッ……なるほどっ…………“上杉謙信”!!!
そうですわー!!!
まさに!!!
なんか……長いな……俺って客観的に見るとこうなのか?
こんなに目を少女漫画みたいに輝かせてないよな……。
(てかどうした別所透蘭さんダブルブーメラン持ったままイマ……すごいぞ……絵が)
ブーメを両手に持ち突っ立ち黙り急に目を輝かせる、
おもしろいその金髪のキャラクターの反応を逆にまじまじと見返しプレイヤー父親は観察していたが。
さわがしい遠くの気配に気付いた。そろそろかと思っていた異物が到着したのだ。
「っと、さっそく次のお出ましみたいだぞ」
「また灰色、今度はバッタの角が三本でして」
「何本だろうが正面からへし折れば一緒だヤルぞ、できるか?」
「ええできまして! んっんっ──ぷひぃ……ブーメはこの手に戻って来ても【別所透蘭】の人生に後退という文字はありませんわ!!!」
月面の周囲を確認し広く展開する三本角のバッタ部隊に対して既に山田燕慈は白蜜を抜刀、まりょくを回復し構築していく魔法陣、別所透蘭はピークブーメを手に取り構えた。
共有する高まる熱気のなか同じタイミングで気付いた────2人は念のためにパーティーを組み直し、笑いイチド頷き合い、駆ける!




