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「なぁおまえらって下っ端?」


「コロス!!! このイカれた渋男を捕らえろ!!!」


「────あいにく舌の伸びるお茶目なバッタファンタジーはさっき見たぞぉ!」


紅い剣線は先程のバトルと同じようにバッタ口部から伸びる舌を凌いだ。

ビリビリと痺れる舌、切り口から漏電した灰色バッタはまたお茶目なヤラレ顔をしている。

同じような芸の無い仕掛けはこの電子世界での戦闘に随分と慣れてきたこの男には通用しない。


「バカな防ぐ!? サブのティックをしょうか」

「爆王斬!!!」


目の前の黒スーツの動きは異常。更なるティックを召喚すべくティックの宿る宝石を取り出したが、これは単純なタイマン形式のモンスターバトルRPGではない時既に遅く────スベテ爆炎のドームに包まれていった。


「ヤルかよ、先発隊がやられたなら先に出しとけ(あんましなめぷはしないぞなめぷは)────あ、しまった? 勢いあまってまたぶっ殺しちまった……バッタ以下の鶏かよ俺は、ハハハ……!」





何故か月のバッタ部隊に大人気の父親の戦闘が終了した一方で、別動の一体が後方にいた金髪ロングへと月面を虫の多脚で走り迫っていく。


「構築することクラス委員長の如く! チャージ! ヤッ」


敵が近付く前に既にいつでも遠方から放てるように秘かに合成魔法陣を構築待機、のちに追加まりょくを注ぎサークルを拡張。チャージされたブーメが透蘭の手から投げ放たれ魔法陣をくぐっていった。


「なんだ小娘その投げる三日月はティックか!? 跳ねて避けろムーンホッパー!」


灰色ローブの男を乗せた灰色バッタは飼い主の指示通りに月面を蹴り強靭な後ろ脚で跳ねる、見事に三日月を回避したと思われた。


「もちろん織り込み済みですわ!」


「ばなっ!?」


真っ直ぐな軌道を描いていたブーメは月面に対して垂直に急上昇、炎雷を纏い更に急加速。

高速回転する三日月は飛び跳ねる灰色の腹から腹へ一刀両断にし、合成魔術の炎雷を伴い激しくまりょく爆発。


必中のブーメコントロールと才能溢れる豪華な合成魔術のイチゲキで敵はあざやかに仕留められた。



「【フレアボルトブーメ】……ふぅー、ダテに月面の虫観察はしていません、たたかいは随分と前に始まってましてよ」



かかげた片手にシュルシュルと木製の三日月は戻っていく、少し汗ばんだピンクゴールドの寝間着の襟元を左でつまみ上げ風をぱたぱたと注ぎながら。




「これが別所透蘭のブーメ魔法か……お疲れさんバッタの手応えはどうだった」


「見ての通りこれぐらいは心配いらずでし……あ、つい倒してしまいましたわ!」


「なに敵はスベテ殲滅されたよくやった俺たちの勝ちだ、ティータイムにしよう! 冷コーで」


「いいですわね冷コー。──スベテ?」


彼女の元へと近付いていった父親はアイスコーヒーを飲まないかと誘った。

やってきた第2陣総勢8人8匹の異物のバッタはまたスベテ排除され、父親と透蘭チャネル月面のパーティー2人は休めるうちに身を休めていく。





「では失礼──ミーヌ」



別所透蘭:

ランク 紅炎

ラヴ ふつう


(初級)

フレアブーメ

アクアブーメ

アイスブーメ

ライトブーメ

ボルトブーメ

ウインドブーメ

ケイオスブーメ

マジカルブーメ

(中級)

フレアボルトブーメ

ボルトウインドブーメ

(上級)

火禅雷震(かぜんらいしん)


(リミットメルト技)


(ラヴメルト技)





え待って。水氷風雷光ケイオスそして炎……全属性だと……。

なぁんて、既に紙でのやり取りで知ってたけどこう実際にお目にかかると本当だったんだな。

ほんとにどうなってんだ……。

魔法タイプ……んー。

これは女神石像ちがったジェルと同じく完全なる魔法タイプなのかもしれない。


だぁが。なんかアレを見ているともう一癖も二癖もありそうだぞエロいゲーマーの直感的には。



「やはり息子と比べてダメでして?」


星屑のグラスに注いだ冷コーをいただいていた別所透蘭はじろじろと彼女の眼前に浮かぶ半透明のステータス画面を眺める渋顔に問うた。



もちろんダメではない。素で全属性のマジック持ちなど聞いたことがないんだからな。

そして何がすごいのかっていうと、

炎まで……。情報通りの良い意味でおかしなキャラでしかない。


父親は見抜いた彼女のステータス画面のビジョンを閉じ答える。


「いやまだまだ伸びそうで羨ましいな」


「羨ましい? そうおっしゃられるのは嘘でしてイマヒトツ威力が及びませんわ、わたしも炎のマジックを使えますのにあなたたち可黒親子の炎を見ていると差を感じてしまいます」


んーー、十分だとは思うがな。たしかに技とちがい魔法陣を構築する分、物足りなく思うのも無理はない。


「そう悲観することもないがさっきのも十分中級魔法にしては威力はあったが、何か不安要素でもあるのか?」


「ええ! これまで塔の攻略を共にしてきたところ可黒美玲はもちろん蒼月霞も前衛として毎度派手に暴れまわりその武勇武力は優れています、比べて私は前線で戦うにしてはすべてのスピードが遅いですわ当然彼らに合わせる後衛の役割でしてそれは理解していて。くわえてケイコもあのような扱いづらそうな鞭で私より余程戦い慣れている感じですわ、それに日に日に何やら試しながら良くなっていってまして技も多彩なようで(皆に隠れてひとり修行もしていましたわ)。そして多空先生はパーティーの要である回復光魔法だけじゃなく攻撃魔法、前に躍り出て薙刀技もなんでも出来るようですしさすが顧問といったところで、私には────────」


……間違ってはいない。みんなそれぞれ長所がある。

蒼月霞は便利な魔青斬と雷技剣技自己回復もある。使える攻撃魔法はイマイチだがまさに理想の戦士タイプ。

宝光先生はラヴあスのヒーラーとしては一番性能が高い。おっしゃる通りのパーティーの要だ。光属性の攻撃魔法もある薙刀技もある、常に手持ち無沙汰にはならない。

ケイコは……ぶっちゃけ一番扱いづらいと言われているな。仲間になる条件が一番厳しいのにクセがありすぎてプレイヤーが操作する必要のあったキャラだ。強力な初期技のエレメンタルウィップも博打技の側面があり使えなくなってくるわけだが……。


1人ずつ欠点を上げるとすれば。


蒼月霞は特にない完璧な戦士。爆王斬のみの父親より若干器用な、ひじょうに優秀な戦士タイプだ。ラヴあスのバトルにおけるスタンダードタイプともいえるな(性格もまぁ……わかりやすいしな)。いちばんちゃんと真面目に武術してるエリートな人だから……そうなのだろう。


宝光先生は設定上は父から神座適合の英才教育を受けてのちに父のいたサカサに属していた戦闘強者だけど結局回復キャラなのでそこはゲームとして控え目にされている。

かと思えばアップデートされてちゃんと薙刀技でも戦えるようになったんだよなぁーー、ちなみに敵としてもパワーアップしている……ラヴあス2をプレイするときは注意だ。(敵でも回復もつかうよ、鬼かよ)

実はまぁ回復キャラの宿命として極めると使われないなんてこともあったんだが、アップデート後は別物。フツウに前衛を張る事もできる。(ゴリゴリにね)

好きな人にとっては操作しがいがあるようになったと言えるな。(俺はファンの歓喜の声をきいたぜ)


そしてケイコ、このキャラは何回かの大幅なアップデートの寵愛を受けてる割にヤバイんだよな。

まずVRでの慣れない鞭の操作ってところから無茶があってさ、仲間のCPU状態ではまともに動いてくれないし、俺もかなりコイツの練習で時間を使った覚えがある。

さっき言った通りに技のクセがすごいし、本人のクセもすごいし、俺が一番困ってんだよなぁ。ラヴレターごしに毎日相手にすんの……ご対面するのが一番こわいなハハ。


そしてそしての可黒美玲……欠点はない。育てばなんでも出来る主人公だ。


ともかくラヴあスにまったく使えないキャラはいない、これはもうよほどに使えないと聞いたらあの人らはツンデレなのか文句垂れながら使えるようにするからな、ははは……。(バグは直さないけど)


「き、きいていまして? 私の強みとはなんでしょうか?」


「あぁバッチリときいているすまない」


どこか焦燥のまじる彼女の表情をよそに、

ストローごしにアイスコーヒーを吸い上げ、一息。

長々と思考し乾きひっついていた口内を潤した。

そして父親はおもむろに口を開いた。



「強みかそれはな……わからん」


「わわからん……?」


しっかりと目を見て、平然な顔をして彼は“わからん”という。

テーブルに両手をつく透蘭も手のチカラがガクッと抜け、首を傾げる。


「ただ実際に目の当たりにしたところ、まだまだそのブーメランの操作性には先があるように見えた」


「先、それはなんでして!?」



投雷(とうらい)】、蒼月霞には美玲に倣い石ではなく刀を投げ遠方から敵に突き刺す隠し技がある。(美玲もこれに近い俺の見たことのない新技を独自に編み出していたようだが……)

そして隠しバグ、この投げ捨てた際に装備武器を切り替えることで連続で刀を投げ放つことができる。計2刀、上級者になると最大8刀まで連射可能だ。(これがバグなのかどうかは議論の余地があるらしいが……プレイヤーのバグ指摘を見据えたバグ上のテクニカル仕様とかなんとか……)

投げ放つという意味ではブーメランはまさにそれに当てはまる。

なので、このブーメランいやブーメは投雷の応用ができそうだ。


一転期待の眼差しにもったいぶらず父親は答える。


「今日からダブルブーメラン投法を極めろ」


「だダブルブーメランとうほう?」


ダブルブーメラン、名前だけで想像はある程度はつくが、透蘭にはまだ彼の言っていることが分からない。


「新たな魔法陣を構築するときはブーメランを持っていないとできないか?」


「そうですわ私はブーメを介しての魔法しかないのでして、今は戻ってくるまではブーメの軌道とブーメに宿らせた魔法の操作に集中でして」


「その時にまだ脳や体の負担に余裕はあるか?」


「ありましてよブーメも魔法の細かい操作もここで修練を積んだ今は苦じゃありませんわ」


ナイスだどこぞの星の森の魔女。


「なら単純にブーメランを増やせ」




「簡単だろ」




彼女の飲みかけのアイスコーヒーに手を伸ばしコーヒーミルクを注ぐ、父親はワラっている。





まだまだつづく彼と彼女の確認事項。語り合い未来期待感の熱気は灯る。


「それに技魔法を当てつづけての即構築はできるか?」


「可能ですわ! チャージもできまして。さっきのバッタ戦も遠くから事前に全てあたためてまして」


魔法でチャージは新しいなそれであの威力を出せたんだな。技とおなじくチャージがあれば可能性は更に広がるぞ……。



「よし持ってる知識のスベテを試して俺が見つけよう! 【別所透蘭】の新たな可能性ってやつを」


「私【別所透蘭】の……新たな可能性!」



月面のちいさなテーブル席に混じり合う、可能性。

渇いた喉に気付き、長く垂れる金髪をかきあげ、アイスコーヒーは飲み干された。

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