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侵入者の月の戦士たちは召喚したティック、飛蝗(ムーンホッパー)に乗り魔女が作り出した月面を跳ね移動し始めた。


灰色の中型バッタの背に乗った灰ローブが目視した目立つ目標に向かい、


「早々にいたぞ黒スーツの渋男!」

「おい止まれ」


「止まってるぞ、なんだよあんたら俺の庭に何しに来た? 泊ってくのか?」


既に止まって突っ立っている、黒髪の黒スーツが月面に。

焦りや驚きは感じられないそんな様子で。


手ぶらで立つ彼に対し6匹6人、同じような灰色が既に取り囲んでいる。


「しゃべるな! ティッカーお前を拘束しテラムーンパレスへと連行する」


その中でもリーダー格とおもわれる灰色。バッタに一本角が生えているのでそうではないかとソレと話す父親は思った。


そんなのあったな……いきなりルナティックルナティッカのラストステージかよ……。

ティック使いつまりモンスター使いでおそらく俺のことだよな? てかなんで連行されんだ……覚えがあるといえばちょっとヤバイオカマをギリギリぼこった記憶があるぐらいなんだけどねぇ。

マァ、ヤル気満々だったんだが予想の斜めの平和的な態度できたな。


「いきなりご丁寧に規則正しく囲まれて話が見えてこないんだが」


「すでにカグヤ様は黄月色の命をくだされた、抵抗は意味を成さない大人しくしろ」


ななんだそれ……カグヤ様のきつつきがなんだって? たしかにデコはトリに突かれたが?

魔女は月にいてトラブル、トップと思われるカグヤは俺を部下に連行させるほどに敵視している?

んーーずらっと見た感じこれに従うのもなぁ、

(……あの会社のエロいゲームで敵に従っていいことってあったっけ?)


それに大人しくしろって言われたら────。



「バーカ、とっととにせもんの月に帰れ田舎もんッダッサイネズミの服着やがって! カグヤ様ってのに6人仲良くバッタでお散歩してきましたぁって報告してこい!」


右手でずらり前方のバッタ乗りをなぞり指差す。黒スーツは笑っている、その渋い顔が豹変し汚い言葉を吐き捨て笑うそれは予想外に異常。


「がっ!? 貴様なんだとおおお我々を侮辱するかこの月面の小石が!!! ムーンホッパー隊この顔だけの馬鹿に一斉攻撃だ!!!」


挑発に乗った一角バッタに乗る戦士が指示を出した、背後までも取り囲む灰色バッタの口部から伸びる黒い舌。


鋭い六の鞭が無礼者へと迫る。



そうそう一斉攻撃!



「【爆炎斬】! ────どんなもんか試したくなるだろう!(こんなバッタいたなぁ。ちょっとほしい)」



電子の荷から握られたその刀白蜜。その技は六の鞭を余さず燃やし斬った。

敵の目にはありえないように見えた芸当をプレイヤー操る父親はやってのけた。


断面赤熱する斬られた舌がだらりと灰色のバッタから垂れ下がっている。

ウシロもマエも一瞬で化けたモノに驚くばかり、


「ナッ!? ヤレ!!!」

「ヤルって!!!」

「はや!? ──」

「【爆王斬】!!!」



ヤル前にヤル、そこに驚いている暇はない。

プレイヤーの思考は何歩も先へ父親は何歩も速く灰色の一角を斬り裂き、


巨大炎球が灰色の集を呑み尽くした。



ヤツらと話してくると言い残され、警戒待機していた金髪少女は離れて目撃。


「なんですのこの炎のドームは……。それにナニをやっていて……まるで子供のよう……」


やがて熱量冷めて現れた男は刀を仕舞い、振り向き一度笑った。ずっと────────







このステージを荒らしに来たバッタを全て滅し、2人は席に座りティータイムを再開。

既に透蘭によりティーカップに湯は注がれ、琥珀色の水面が戦闘後の父親の目の前にあった。


「ごめんなさい私独自のルートからここに来ましたので可黒美玲たちを呼べないのでして、せっかくこうして幸運にも可黒美玲のお父様に会えましたのに」


なんだそのルート……別所透蘭のルート……そいつぁ未知すぎるぞ!


「そいつは残念だが……いやどのみちこれは俺の方で片付けるべき古井戸とは別の問題だから気にしないでくれ」


「そんなことありませんわっ私もここで幾度も魔女とキャッチブーメの修行をしていましてよ! 私の問題でもあります! 今日もその用でここに来たのでして」


もはやなんだそれ! キャッチボール的なノリなのか……なにそのおもしろそうな修行ルート。そんなのめっちゃ見てみたかったんだが……。

(どんな絵だよそれ)


「きゃっちぶーめ……? そそうだったか……まさか知り合いの魔女の元で修業しているとはな」


そういやちくわスープ……この一杯がここにあるのは……そういうことでしたか。

別所透蘭単独ですっごいルート行ってたんだな。(もしかしてそんな裏設定があったのか、このエレガント委員長ならなんでもできちゃいそうな気もするな)

星の森の魔女の存在の痕跡自体は桔梗よろしく色んなゲームにあってラヴあスにもダンシングアイドル戦記2で出て来るんだけどな(なんでアイドルなのかは謎すぎる)。


「ええ、ご報告なく申し訳ありませんわ……」


おもむろに席を立ち頭を下げる姿がある、なんともご丁寧で別所透蘭という人物の珍しい姿であった。


「いや気にするな、あの気難しい魔女と何か取り決めた事情があったんだろう、今は美玲のなか……友達に会えてうれしく思う」


「お察しのとおりですわ、ええ、私もお会いできて光栄です! さっきの戦いもまるで遊ぶように桁違いに素晴らしかったですわ」


「それはどうも、ハハ。といってもヤツらは俺を拘束する気だったらしいが……俺もひとりぐらいは拘束するべきだったか?」


「……そうですわね。できれば不意に襲ってきた風を読みたいところでして。ですが敵は倒せましたわ! 悔やむことはありません可黒美玲のお父様」


同じように顎にエレガントに手を置くふたり、悔やむことはないと左手で金髪美少女に指差され、2人して微笑っていた。


「ハハ、慰めてくれてありがとう。次は火加減を上手くやろう」


「ふふ、ええ」



同じタイミングでティーカップに唇が触れた、少し冷めた出汁とミニサイズの輪切りのちくわをいただく。



ここまでをまとめると……美玲に会えないのは残念だが、別所透蘭のことは置いといて、これは最終的には行きつくところ単純な戦闘にはなりそうにはないぞ。

むしろ呼べなくてよかったかもしれない、ティクティカのことなんてラヴあスのキャラクターたちが知るわけもないんだからな。

変なバグでも起きたら大変だ。


敵が襲ってきて魔女が俺を頼るってことはしくじったにちがいない。(ほかに友達いないのかな?)

俺は月に用はないって言っといたし、関りたくもないと遠まわしに魔女に言っていたはずだ。

俺のことをさっきの月のオカマかどうかも分からないヤツらが知っていたのも魔女から情報が漏れたんだろう……。(延命するために情報を売るとかはありそう……まぁ敵戦士の実力をはかれたのは幸い)


予想の悪い方にいっちまったなぁ。ここまで引き返せない感じになっちゃうとは。

月に行くってことは幹部たちのうじゃうじゃいる本陣に乗り込むってことだからな……だとすればもう少しなんで俺が呼ばれたのかを考える必要がある。

最終的にはどの道魔女を助けないといけないが敵の戦力がさっきのバッタフェスティバルで店仕舞いなわけがない。


そこで今持ってる手札を整理してみると────俺の持ってる最大の手札はやっぱり月に対する地球の事だよなぁ。(これは魔女にも漏らしていない一回俺売られてるからなあいつに……)

ティクティカは詳しくないけど重要キャラクターのことと大まかなストーリーぐらいは知ってるし俺の脳は覚えている……。


これは言ったら現状、月対俺だろ……もしくは月のカグヤVS俺……もしくは……。


武力でどうこうっていうスケールじゃないんだよな。(あいつらもなんでか俺を名指しで連行しようとしてるしな……まぁちょっと熱く拒否したけど。抹殺じゃないのがおおいに気になるところだ)

しかし逆に考えればこの状況は未知であるがチャンス。

ティクティカの主人公の地球のモンスター使いには悪いけど(たしか主人公は自分で名前を決めるタイプだったから居るかは不明だが)……あの魔女に恩を売れればかなりマリカスに対抗できる戦力になるには違いないからな。魔法のエキスパートは切り札としてほしい。

俺の予想通りならもうすこしこの先の様子を見てみたい(敵も様子を見ているみたいだしな)────────



「そろそろよろしいのでして……?」


じーーっと見つめていた琥珀スープに浮かぶちいさな浮き輪の行方。

そんな長考する彼をじーーっと見つめていた紫色の瞳に、


「おっとすまない……そういえば美玲は【クリティカルショット】を習得したんだったな」


「ええ、そうでして。アレは凄まじい炎でしたわ」


そりゃそうだ凄まじい。美玲の最強の技だからなアレがありゃ1人でミジュクセカイの塔を攻略可能と言っていい、もちろんVRゲームでの話だけど。

ある意味石蟷螂の儀式が成功するかどうかは賭けだったしバッチリ見事クリアしてくれたのは────


「どうしたすこし浮かない顔だな?」


また長く考えそうになったところで、向かい席の彼女の表情に気付いた。

彼女もまた何かを思い考えているような。


「────ええ、私は別所透蘭。仲間がすごいからと素直に喜んで鳴りやまない拍手をしているばかりではありませんわ! アレを見たときに……より一層思いましたの私にネムル余力を。もっと日々全力で精力的に鍛錬修行して生きなければ到底あなたの息子にはかないませんわ!」


「全力で精力的か……なるほど」


委員長と副委員長。完全版はそんな物語もあるんだなぁ……。ハハハ。


「んっ──ぷふぅ────。じゃあ俺もソレを見習わせてもらおうかな、息子に負ける父親はダサいだろう別所透蘭?」


「ええ! ふふふ」


男は一気にカップをあおり、ちくわスープを飲み干した。

見つめてまたふたり笑い合って、今日のチャネル月面は不思議なことがおおくさわがしい。

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