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64❿

別所透蘭の意向により貸し切られた山の中の渋い温泉宿【水玉夏館(すいぎょくかかん)】、オカルト探偵部の6人は塔へと向かうその日に向けて疲れを精神を癒し整える、そんな最終調整を各々この用意された特別な環境下で行なっていた。


別所透蘭はこの日の夜、大事な話があるということで温泉宿の一層広い場である宴会場へと仲間たちを呼びつけ連れ出してきていた。


集まっていたのは6人のご家族や親、広々とした座布団席にぽつぽつと。別所の部下である黒服たちや旅館の仲居たちが豪華料理を運び込みもてなしていた。


「おい何勝手に集めている別所、修学旅行じゃないんだぞ!」


「あらケイコ何も告げず突然消えてしまってはそれこそ修学旅行以下でしてよ」


「情報を漏らすヤツらとつながっている可能性もある、下手に関係者を増やすな」


「情報ならどうせもう古井戸にダダ漏れだろケイコさん、むしろ理解のある人達にはすこしは共有していた方がその人たちも安全じゃないのか? 俺も昨日カサの男と会って来た」


「なんだと!? 正気か美玲? 冗談にしては笑えないな私に動くなと言っておいてそれか」


「従ってくれてたんですね、案外扱いやすいんだ」


「ほぉ、美玲おまえはこの私の飼い主になったというわけかフフ」


「俺はこんなの飼いませんよ安心して寝れませんし、そういうのは他に頼んでくださいね」


「フフ、まったく飽きさせないなおまえというやつは」


「いきなり褒められても気持ち悪いんでやめてください」


「なんだ照れているのか? それだけ女を侍らせておいてやはり根っこは変わりようがないな」


「本当にあなたたちは元気ですわね、親の前でしてよ」


宴会場へ向かうなりまたいつもの2人が出会い口論をする羽目になってしまった。


「そろそろいいかね私はべっしょ水産の別所透だ。君が可黒美玲くんだね、透蘭に聞いていた話より大物のようだよろしくたのむよ」


彼らを見守りつつ黒い口髭と金のオールバック、なにやら他とは違う色気を放つ白スーツの男がタイミングを見計らい近付き美玲に握手を求めた。


「……委員長のお父さんですか、こんなすごい支援助かりますよろしくお願いします。あと俺は全然現状にせいいっぱいなだけですよ、小物の方が合ってるんじゃ?」


その握手に応えて向き合った両者。190近くある身長に男らしい肩幅と体躯、美玲が見上げるほどであった。見透かしたように微笑む渋男と目が合う。


「いやその歳で大人たちに物怖じせずやり合うのはなかなか出来ることではない、どうだ卒業後はウチで働いてみないか」


「物怖じというか色々超えて存在がふわふわしてるだけですよ。……そうですね、俺って無知なんでちくわ以外なら貢献できそうです。何入れます? カマンベールチーズ? てか俺って学校サボりまくってて卒業出来る保証ないですよ」


「ははは、それはもう何度も思いついている。まだまだだな、これからの成長に期待しよう。フム若者が学業をサボるのはいけないが……宴陣学園の方は私が働きかければなんとでもなろう」


「お父様ナニをやっているのでして……」


「透蘭、おまえも人をはかってばかりだと機を見失うぞ」


「何を言っているのやら……呆れますわ、可黒美玲もそんなのを相手にしないことね」


「そんなの呼ばわりされてますけど」


「このところアレは気が強くなってきていてね、商売人としては良いんだが……」


「私もこのところ振り回されてばかりで気が落ち着きませんわ可黒美玲」


ピシャリと言い締めてすっかり2人に呆れた様子の別所透蘭、息を吐き両手を広げてみせた。







「一体何の用でしょうか」


「こんな事になっているとはな。何をしているのかと思えば」


「こんな事とは? 私は一警察官としていずれ明るみになる悪を逮捕しに行くだけですが」


「悪ではない。それがどのような相手か分かっているのか、存在などしていないに等しいものだ」


「パパよりは分かっているつもりです。私は正義を知りませんがヤツらのやることなす事は興味のあるところです」


「興味など馬鹿なことを……。お前は可黒美玲だったな」


キチリとした黒髪にどこかで見覚えのあるクールで冷たい顔、年老いた印象のない男の鋭い眼付きが突然に美玲を突き刺し襲った。

堂々と近場で2人のやり取りを盗み聞いていた美玲は少したじろぎつつも男に対して口を開いた。


「俺はそうですけど。なんですか? 俺がケイコさん……あなたたちに割って入れるような事は」


「そういえば可黒零児は私の優秀な部下だったな……。だが、ある日パタリと消息が途絶えた。息子であるお前は何かヤツについて知っているか」


「「……は?」」


飴色の瞳と黒い瞳は思わず向き合い、驚き固まった目を見合わせた。







宴会場、タイミングを見計らい座布団席を立ちゆっくりと近付いて来るのが視線で分かる、この場には彼に話がある者が多いようだ。


近付いて来たのは、地味目の藍色の着物を着た女性。年齢は良く分からないが大人である、黒髪を綺麗に纏めており白いうなじが魅力的な。


可黒美玲はなんとなくそれが誰であるか予想はついた、目の前に立ち止まり佇むクールな表情をした女性。じーっとその目に値踏みされるかのように。


「あ、あの……もしか」


向けられた視線にやり場のない美玲が何かを話しかけようとした時、一歩二歩三歩と、女性はそそくさと近寄り彼の両手に。


みずいろの風呂敷で包まれた長い棒が渡されていた。


女性はその包みを解いていき。布を回収し、一歩二歩と下がっていった。


「すこし抜いて構えてみてください」


「えっと……分かりました。……抜きます」


少し確認を取るようにその女性の顔を見つめうかがった。こくり、と静かに頷いたその女性、よく見れば口元下の黒子がうっすらひとつあり特徴的であった。


美玲は言われたとおりにその剣を、目の前の女性から少し斜めを向き構えてみせた。


水のように透き通った刀身が美しい、柄も無骨なモノではなく工夫デザインを凝らした黒と黄の混ざり合うべっこう模様であり。


周囲の者、構えた美玲本人も見惚れるほどの一品であった。


「ではその刀をよろしくお願いします」


「え、はい……任せてください!」


美玲はこれが何であるか父親とのやり取りで分かっていた、戸惑いを飲み込みつつ威勢よく返事を返した。

着物の女性は数秒お辞儀をすると、そのまま横顔で少し彼を流し見てそそくさと宴会場から消えていった。


「武器は持ち主を選ぶというが、その逆、持ち主が武器を選ぶという事もある」


ひとつ息を吐く暇もなく、美玲の目の前に現れた3人組。大柄な白髪の年老いた男と女2人。


「私はその境地に至りたいものだ」


「……言っている意味がよく」


「すまない可黒、なんとか止めようとしたがどうしてもと言って聞かなくて……」


「あら、霞ちゃんを負かした男の子にご挨拶しに行くのは当たり前じゃないの」


青いくるり髪。前髪がくるり渦巻き両サイドがくるり内巻き、全体がウェーブしたショートヘアーなんともごちゃついている。


だが顔はさっぱりと元気であり青い瞳は晴れ晴れとした天のようであり深い海のようでもある魅力を放っている。


まとめるとチャーミングなかわいい大人女性、そんな印象だ。


「ということで手合わせ願おうか」


「ということでって意味が……失礼だと思うけどそれはお断りしても?」


「そうね、逃げたら今ここでぐちゃぐちゃに暴れちゃうかも」


カジュアルな服装の蒼月霞以外は既に道衣に着替えていた。最初からそのつもり、であったのだ。


「……すまない可黒、本当に、はぁっ……」


おでこを抑えて頭を痛める霞、彼女の両親の暴走を止めれず彼女の思い描いていた通りの良くない事が起きてしまった。







「なんで真剣で2対1なのか説明お願いできますか!」


「相手にとって不足はないと見た」


「あはは現役でしょ頑張りなさい美玲くん」


温泉宿の外、宿の明かりと石灯籠の灯りに照らされた丸石を敷き詰めた和風石畳の上。

遊ぶように代わりばんこ。試すような刃がステップしながら美玲に襲いかかった。

元気の良い剣筋を鬱陶しく緑の柄にチカラを込めて弾き返した。ふわり空を舞って宙返り、着地した青い天の瞳。


「ハルバード珍しい武器ね! やっルゥーー」


「ふむ、器用にそれも剣のように扱うとは。その歳で独自のスタイルを編み出している」


擦るような足捌き、高速で肉薄した連続の刃が柄を縮めたエメラルドソードとかち合った。


「ナニ、おもしろい武器だ! ふはははははは」


「冗談だろ、あっちに行く前に死にたくはない!」


ワラいながら次々と襲い掛かるその夫婦を捌き、焦り距離を取ったところで。


「「魔青斬」」


刀から同時に放たれた青い三日月、更に連続して放ち加減も場所も知らないのかおかまいなしに青が美玲に向かって乱舞した。


「チッ、親子揃って馬鹿野郎がァァァ」


「爆炎斬!! ────」


暗がりを斬り裂いた紅い剣線は砕く身勝手に迫って来た青い月を、次々と散った星屑はキラキラと。


「爆連斬!!」


コンボは繋がり踊るように加速し迎えて斬った全ては紅く粉々に、紅い炎はエメラルドの刀身をも呑み込み纏い。


その紅くメラメラとした彼の闘志を見せつけられ唖然とするもの、懐かしむもの、少女のように目を輝かせるもの。


「はぁはぁっ……さすがにこれで勘弁してくれ……全力です」


汗は顎を伝い、肩で息をし、おかしな夫婦を眉を狭めた渋い顔で睨みつけた。

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