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63❾

黒柳邸宅、畳やちゃぶ台といった古き良き日本の一室。本棚や使い込まれた湯沸かしポットなどの電化製品、程よくごたついた空間は日本人の心の落ち着く空間であるが。


おしゃべりな女子たちがぞろぞろと集まるには、少々狭いのであった。


「おい、美玲なんだこのハーレムは」


「……勝手に動いてませんよねケイコさん」


「フフ、美玲王子には逆らえないからな」


「可黒、なっ貴様こんなに女を連れていたのか!」


「はぁ、うるさいな先輩」


「なんだと!?」


「騒がしいですわよ」


ちゃぶ台の前に正座し白い湯呑みを啜っていた、金髪。サイドに垂れるひかえめドリルが美しい別所透蘭はぴしゃりと言い放った。

そしてこの場の注目を集めた彼女はどこからか取り出した金表紙の巻物を広げて連なるように名を並べ達筆で書かれたそれを見せた。




オカルト探偵部

第一班

可黒美玲

サム

蒼月霞



第二班

別所透蘭

ケイコ

宝光




「当日の仮のパーティー分けはこれでよろしくて」


「パーティーとやらは私には出来ないようなのでな、いいんじゃないか」


「委員長、ソイツをしっかり見張っててくれ」


「病弱な美玲王子はすぐ束縛して甘えてくるからな、蒼月気を付けろ」


「訳の分からないんだがお前たち……この状況も」


「どうせ一緒に進むのでして可黒美玲、余計な歪み合いはいらないわ」



「サン様は? 黒柳?」


「私と留守番だなぁー、てか全員オカルト集団ってすごいなこれ……本当に現実……」



「可黒零児ヤツは未来が見れるようだぞ黒柳。ヤツを捕まえて吐かせないとな」


「父さんなら捕らえに来たあんたを引っ叩いて拷問しそうだけどな」


「フフ、美玲お前は本当に可黒零児と私のことが大好きなようだな」


「ケイコさん、あんたは1人じゃ何もできないんだから父さんの言う通りに従っていればいい」


「フッ私には相変わらず厳しいようだな、いいご身分の美玲王子」


「これぐらいいかないと失敗例があるからね、俺みたいな、ね」


「フッ、ははは」


「いい加減にしなさいケイコ可黒美玲、この私の前でこれ以上幼稚な言い争いはさせませんわ」


「王……王子はおもったよりもげんきです……」







ミジュクセカイの塔へ向けての作戦会議室と化した黒柳邸宅。父親の返信のもと何度も書き、消した、一枚のくしゃついた紙をもとに必要なアイテムを集め、不可欠な仲間もここに揃った。今日は出発に向けて細部や足りないものを別所透蘭が仕切り再度確認していくことになっていた。


ケイコは残される黒柳に鍵と分厚い封筒を手渡した。


「現金と車バイクのキーだ、好きに使え黒柳」


「え!? え、姐さんまじ」


「可黒零児が嘘をついていなければ現実には私はいないはずだ」


「黒柳、今夜はチャーシュー麺!」


「俺と子春のときはカネも払わず全部下僕のようにヤラせてましたよね」


「なんだ美玲お小遣いが欲しかったのか。それで不貞腐れていたんだな」


「逆ですよ、こっちがカネを払ってでも縁を切れば俺と子春はフツウに過ごせていたかもしれませんし」


「ははは、フツウか。そういえばソレも大好きだったなお前は」


「…………」


「またやり合っているようですが、目的は分かっているのでして?」


再度勃発した美玲とケイコのやり合いに少し呆れた様子の別所透蘭は問うた。


「塔でレベルを上げて悪魔ジバベル、カサを倒して古井戸のバランスを取り戻す。父さんはそう言っていた、俺もそれが正解だと思っている」


「いいのかお前の嫌いな悪を見す見す逃す行為だぞ美玲?」


「古井戸の外、眠れる獅子ならずっと眠っていた方がいい、その方が俺たちも古井戸のお爺ちゃんお婆ちゃんたちも安心して毎日眠れる」


「わざわざ巨悪に立ち向かう正義を倒して世界のバランスを取るのか。そんな考え方を平然とさらけ出す可黒零児はおかしいと思わないのか美玲?」


「悪が蔓延っていようがチカラもないのにバランスを欠いたらどうなるか俺はよく知っている……。俺は、俺たちはまだまだ弱い、あの時の父さんみたいにまだまだ強くなれる! ここからはフツウじゃないバランス重視でやらせてもらう、それが俺の考えだ」


2人のやり取りを聞いていたこの場の一同は水を差す事はなかった。いつもと一層違う真剣な彼の表情を各々の濃度で見つめ頷き驚き微笑み。可黒美玲、オカルト探偵部のリーダーであるその人物の考えを。


「……フツウじゃないバランス重視、ふふふふ。それは面白そうだ。私も協力してやろう美玲」


ケイコもまた、今の可黒美玲を受け止め試し彼の考えを尊重していた。納得のいく答えが返ってきた、薄笑いその飴色の目で彼の顔を睨んだ。


「邪魔をしないのならよろしく頼むよケイコさん」


「フフ、本当に誰だおまえはころころと」


ケイコに微笑んだ可黒美玲。覚悟を吐き出しそれまでの陰のある表情は失せていた。




▼▼▼

▽▽▽




着慣れた黒ジャージを纏い深夜の公園に。変に高まったドキドキを鎮めるように1人ベンチに腰掛けていた。赤い微糖缶コーヒーを隣に置き。


「あっちに行って実際に試してみないと分からない事も多いな……この場所も最後か」


ベンチから夜空の満月に手を伸ばして掴んだ。グッと握り締めた右手。




「こそこそと何をやっている」




「……あんたはなんなんだ」




闇の中灯りに照らされて近づいて来た黒い外套のフードは既に下されていた。その素顔を堂々と隠す気も無い。


「答える必要があるか」


「ない……だろうな」


ベンチから立ち上がった黒ジャージ。髪をくしゃりと何度か静かに掻き、その目に映る男と同じ目線に立った。


「平和とは何か、少しは分かったか」


「こうやってあんたと話している」


「……。キミは不思議な存在だな、虎白子春、彼女の見舞いにはもう来ないのか」


「子春ならあんたにやる」


「赤の他人におかしな事を言っているな可黒美玲」


「もう一度俺に会いに来たんだろ」


「なぜそう思う」


「そんな気がした、それだけだ」


「会いに来たか」


腰に差した古びた鞘から、きらりと、夜の光を反射し滑り出た。


「私とお前、すこし頭の中にあったモノを整理しに来た」


「俺はここで1人でぼーっと考えていただけなんだけど」


「刀はひとりでは語れない、可黒美玲。そして人は1人では忘れられない」


男のその言葉を受け取り、美玲はまた黒髪をぐしゃりと掻き乱し睨みつけた。


「……やっぱりあんたなのか、子春と俺あの先からが臭いものに蓋を閉じたように分からない。ずっともやもやと俺が忘れていたのは!」


「平和とは何か、お前はこの古井戸で平和に過ごして何を得た可黒美玲」


「余計なお世話なんだよ、こそこそコソコソ!」


電子の荷からエメラルドの矛は取りだされた、回転し勢い良く構えた妖しい緑。黒い瞳はその男の眼とぶち当たった。







「神器をどうやって手に入れた」


「少し調べりゃそんなのは手に入る! 古井戸は棒立ちしてるわけじゃないぞ」


「……」


「どうした抜いておいて来ないのか」


「十分分かった、この先を見たところでそれは私にとって意味のない事だ」


「生き延びたいのなら可黒美玲、平和を知ったなら賢い選択を取れ」


「……おい、俺はあんたを斬るぞ!」


「その時は私もこれで答えよう」


「余裕ってやつなのかよ!」


「私の道に一時の余裕などはない、だからこうして一つ一つキミという小石を整理しに来た、そしてそれがどんな形でどんな色と輝きをしているか……。ありがとう可黒美玲、私という存在がまた一つ分かった」


構えたエメラルドハルバード。抜き出されていた刃は古びた鞘に仕舞われた。


男は告げ終わると背を向け、やがて遠ざかる黒が馴染んでいく。


その背を見つめ消えていった、公園の灯りは残された彼を照らし、男の刃と交わることなく砂地へと突き刺さったエメラルドハルバード。一つ大きな息を吐き、柄を握りしめていた右手は左の手のひらに合わさった。


「見てろよ、それがあんたの正義なら俺は……何にでもなってやる!」

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