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長い激闘を制し女神石像石の板と無事合流を果たした父親パーティーは3936階にてホームの礼拝堂へと戻り。
まったりとした時間は過ぎ。父親は長椅子に腰を掛け紙と鉛筆で仕事に取り掛かっていた。
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①ラヴあス
∀の組織トップのマリカス様
赤蜜と白蜜
オカルト探偵部真のルート【A】
②ラヴあス完全版
キャンバスに描かれた赤黒ピエロ
③魔法少女ド屑★オンライン
Dr.カタナカジ兼シャドウミラーデス
主人公のふれい
黒蜜
ふれい 微妙人気エロいかわいいのに?
ぶらん 大人気なぜだ?
ぱーぷ 不人気かわいそう
そーだ 大人気そうだね
れもね 人気デカ尻
④ティクティカ
月のカグヤ ────────
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「BADENDと書かれたシャツに七枝刀、おそらくあるであろう組織とのつながり……誰かに改造でもされたかのような変な性格……」
期待通りの糞展開でさっぱり興味の失せたド屑★オンライン。
正直記憶から消したいところだが俺の少ない封印されていた知識を掘り返すと……。
「マリカスに辿り着くようになっているとしか……」
魔法少女ド屑★オンラインの味方にしてラスボスDr.カタナカジ、姿を変えられるピエロの関連性はこれしか思い浮かばない。石像の街ではただのピエロの絵だと思っていたが月オカマの存在ブックテラーの存在まったくの無関係とも思えなくなってきた。モグラの里で紙と鉛筆を手に入れてからは俺の脳内にある攻略情報を整理するため書き起こしたり……何かこの世界の役に立つんじゃないかと思ってさ。
「人間命がかかると剣もペンもとるってか」
俺はそこそこのゲーマー、決してガチ勢ではないがこの世界じゃ俺ほどのガチはおそらくいないと思う。こうやってゲームのために何かを残しておくのも俺の役割なんだろう。
と、勝手ながら思っている。
謎の敵、エロいゲームの制作会社ハルが作るその作品の中には謎の裏の存在がいると言われている。マリカス様もそのひとつ、ラヴあス主人公が決して敵わないその存在。
「BADEND……」
正確にはBADENDっていうのは間違っている……ラヴあスは全てのルートがそうともいえる。
「真実に近づいて死ぬか、何も気付かずにラヴして恋してスキに生きていくか」
「ゲームじゃなんて事はなかったがセーブロードのない……命の置き場が違うとどうもな」
もうすっかり家代わりにして住み慣れた礼拝堂、色鮮やかなステンドグラスから変わらず光が射し込むその位置。そこがお気に入りのようだ。
ひなたぼっこでもするかのように。
女神石像はすやすやと良い顔で眠っている。最近はずっとこうだ。
目を閉じ羽を閉じ、祭壇の一つ上がった床の上で立ったまま美しい姿勢で安らかに。
おそらく魔女の睡眠魔法がトリガーになったんだろう。おひさまの元気をチャージしているのだろうか、よく眠る。
「女神が微笑んでくれればな……」
俺はこのゲームの裏世界で何を目指していくべきなのだろうか。
主人公じゃない主人公の父親の俺は、ミジュクセカイの塔10000階をクリアすれば何かが終わり何かが始まると思っていた。が、突然あるはずのないサムのメインストーリーが始まってしまった。しかも敵はラヴあス最大の謎の敵マリカスの可能性が高い。プロセス派の王子がぽっと湧いて出てくる可能性も捨て切れないが。
当然ヤツもこの世界には存在しているわけで……。
セーブロードはない……常に最悪を考えておかないと、後悔は推奨されていないんだこのゲーム世界は。
何が正解かが分からない、少しでも長く生き残ることか。
真実に近付いてそれに満足して死ぬか。
今はまだあのガキと鬼狂との第2ラウンドが控えている。
俺はラヴあスプレイヤーとして、いやパーティーのリーダーとして何を選択していけばいいのだろう。
「ぐぴキャンとは……ふむむ」
「王……?」
かるい猫背に時折のため息を繰り返す彼、いつもの元気で渋い様子、冗談を言えるようなムードはなく。
それは、エロいゲームの裏世界ミジュクセカイの塔に閉じ込められてしまったプレイヤーの初めての憂鬱なのかもしれない。
「王?」
「なんか憂鬱でさ」
「え、王が!?」
長椅子に座り露骨な元気のなさを見せつける父親を心配そうな目で声をかけるサム。
王が憂鬱? あの王が? 冗談でしょうか、でもそんな様子じゃなさそうデスね……。
「なぁもし明日世界が終わるとしたらどうする」
「え、っと……きっとしんじゃいます!」
「そうだよな」
はぁー、と普段は見せない芝居じみた芝居ではない彼のため息が響き。
何かを言わないといけないと思ったサムは思い切って口を開いた。
「……でも、そんなのフツウじゃないんでそれで皆ハッピーエンドなのでは? ないでしょーか!」
「みんな……ハッピーエンド?」
まさかのハッピーエンド。彼女から出てきたその言葉に彼は興味を持ちまじまじと彼女の顔を見つめ耳を傾けた。
「ハイ王! なにもない凪のサダメ、凪いでいたら何もはじまらないんで! ……えと、byドリー見!!」
「凪……平和だと何も始まらないか」
そんな風に考えたことはなかったな……これがサム。
そんな考えでこのキャラは動いていたのか。
「はい」
「……今は凪?」
「全然凪いでないです!!」
「ぜったい?」
「ハイ王!!」
「よーーーーーーし!!」
「うわわ王」
突然彼女を抱きかかえて、
王はぐるぐると本日4度目の力強いお姫様抱っこで踊り始めた。
吹っ切れたように踊る踊らせる。
「明日から4000階に挑むぞサム!!」
「よ、よんせんかい!?」
「そうだ! パパっと攻略しちまおうぜ!」
「……ハイこの調子でどんどんじゃないぽいんとゲットです!!」
「だよなぁーハハハハ」
しばし笑い声は礼拝堂に響き、
すっぽりと彼の両腕に収まった彼女が良いタイミングで話を切りだした。
「あの……王はなんでわたしを助けたのでしょーか?」
「助けた?」
「えっとその勘違いならすみません、わたしをあの子供さんに差し出せばその……」
「あー、たしかに! その手もあったか!」
「えっ、王!?!?」
「あ」
驚き見開いた目と、気不味そうな表情が合ってしまった。
ぶつかって生まれた静寂の間をおいて。
「王……」
「いやちがうよ?」
「じゃない過ぎます……」
怪訝な表情に変わっていったピンク髪の彼女、黒髪は取り繕うように慌てた渋い顔を見せる。
「ハハハハ……いや、でもそうだな。そんなの全然思いつかなかったな」
「それは……!」
「俺はエロいゲームのプレイヤーだからな」
「エロいゲームのプレイヤ……?」
「あっ……」
いや待て、俺は何を。
いやこの状況待て、どう誤魔化す?
落ち込んでて励まされて浮かれてしまったのか!? サム相手に気を許してしまうとは! 笑って誤魔化すかいやここはクールで渋い感じで流して……いやそもそもこれはエロいゲ─────。
「王? またいつものが! わたし何かまた余計なことを……」
「え」
「キスシーンは……あった方がいい?」
「……100億倍いいです!! フツウに……」
凪のカードの上に切りだしたカードは突然のキスだった。
そのまま慣れないキスがしばらくつづき。
すやすやと眠っている美しい女神を起こさないように。
我慢ができなくなったふたりは祭壇の横の入り口の階段を降りて地下室へと。
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「ハァハァ……フツウに幸せすぎます……はぁはぁ」
流れのままに突然のキスからの……に移行した2人。父親山田燕慈の憂鬱は一瞬で吹っ飛び晴れ。
彼の欲望を全開にしたサムとの恋人同士のようなイチャイチャプレイは予想以上の効果を生んだ。
ありがとうございます占い師ドリー見さん。私……吉田さくらのダメダメのサダメは本日今をもって終了しました!!
わたしサムの彼氏様は……、渋くてとってもイケてる王様です。




