35
神座は解け姿を現した黒紫の化言語スーツ。
焼き焦げたスポンジ生地の大地に敗者は全身にしろい煙を上げうつ伏せでチカラを使い果たしたように倒れ込み。
覚悟を決め覚悟が狂った七枝刀が容赦なく彼を襲う。
「あはははちょっと若すぎますがあの世で会いましょう!」
「待てサム」
渋い冷静な声が響き、
ピンク髪はハイになった声のトーンを落としピタリと止まったその従順な剣筋。
「え、王? はやくヤらないと特大じゃないぽいんとが?」
「イカれたガキを殺すとろくな事がないって相場が決まってる」
「ほっとけエロいゲームだ」
「……うぅ……わ、私も子供さんはちょっとやりにくかったので、はい反省です……!!」
彼女はふぅ、と安堵を一息吐き、
王命を請け役目を終えた七枝刀は電子の荷へと仕舞われた。
「おいソレでさっさと回復してその王ってやつのとこに帰れ」
「糞ナチュラおちょくってんのか!?」
「うるせえよクソガキ勝者に口答えするんじゃねー、さっさと失せろ雑魚」
「え、王……きゅうに」
「……チッ、頭がおかしいおっさんがコケにしやがって……」
「……イシダサンヤク!」
敵から投げ与えられたパイナップルパイナップル天然水は放置され、片膝立ちにまで体勢を立て直した切長の眼はスーツにインプットされていた回復の言語を使用した。
彼のプライドが敵の施しなどは受けれるはずはなく、
やがて大ダメージを受けた身体はよろりと気休めの回復で立ち上がり。
「ッッ痛……糞プロセッサーがぁ糞言語を入れやがって……」
わざわざこいつを見逃す理由と可能性の話は多々あるが、ひとつは安易に殺してしまうと何も分からず死神がやって来て殺されるなんて事もあり得る。
そしてVRゲームはそこらの古のRPGとは一味違う面倒臭さがある。
没入感という足枷、そうプレイヤーの言葉と意志の積極的な介入だ。
このタイミングならいけるか? キーとなる情報を──。
「王は何者だ」
「バカ単純かよ……チッ、教えるかよ」
「王はマリカス様か」
「なんだそれ」
「王子たちに命じられたか」
「そんなコソコソやってる雑魚ども知るかよ」
「マリ……姿を変えたピエロか」
「はあ?? こんなイカれた場所に行かされたオレがピエロだろ。てか何普通にしゃべってんだよおっさんイカれてんのか?」
1話で主人公のブック女王に殺されるこいつが生きているってことは女王はまだいない、ナチュラ派の敵の王とプロセス派の王子達との接点もまだあるとは思えない、仮にあったとしても連れて帰る理由がないマジで設定を盛りに盛らない限りナイ。てことはこいつは全く関係ない使いパシリボスでニホントウ剣展覧会の襲撃を計画した∀組織に協力していたであろうサムに関するなんらかの追加ルートに入っているとはおもうんだが? 七枝刀が目当てか? サムこいつの戦力が目当てとは思えないし性格はなかなか扱いづらいし容姿はまぁさすがにエロいゲームのヒロイン刺さる人には刺さるか? でも王子たちが欲しがるとは思えないよな? 俺が見逃していた情報があるとするとオカルト探偵部真のルートにしてラヴあス最大の謎の敵マリカスとラヴあス完全版でキャンバスに描かれていた謎のピエロ、この2つだ。正直このルート、王子じゃなくマリカスにまでたどり着くなら既に詰んでいる可能性が高い。ならやはり駒のこいつを殺してもマリカスが覗きに来たり怒ったキキョウに乗った妹が後から出て来て俺が早く死ぬだけだ。プロセス派の王子の別世界の話、それか全く関係のないただのフツウの追加ボスのピエロなら…………4回、潮時か。質問しすぎてイカれて自爆する組織のや──。
「……なんか言えよ気色悪い、オイ!!!! おちょくってんのか!?」
「王……この状況で……やっぱりフツウじゃ……むむぐ」
またいつものクセを発動させてしまっていた父親ことプレイヤー山田燕慈。
いつになく真剣な表情の、額からひっそりと流れ出した汗を顎にまで伝わせながら。
「おっとすまない…………妹によろしくな、あと鬼狂ちゃんにも!」
「……妹? ナニイカれたうぜぇこと言ってんだおっさん。ハッ、キキョウとのシンザも次はこんなもんじゃねーぞ……そのバカな炎絶対殺ってやるからな! それまでそこらの鬼に狩られんじゃねーぞ糞ナチュラ」
「鬼……?」
「ついでにこのケーキも殺ってやるよバァァァァ」
切長の眼は化言語スーツにインプットされている言語を使用し黒のティータイムセットを丸ごと唐草模様の風呂敷に包み込んでどこかへ仕舞い白いケーキの地から飛び降り、父親とサムの視界から姿を消していった。
「あーーッッッ!! 王との優雅なひとときが!!!!」
「王! やっぱり散々戦って逃がすなんてフツウにがっかりですよ!」
「そうかもな…………」
ガキがまた来る? 一応助かったのか……? ……うおおおお、やっぱり殺さなくてよかったーーーー!
急に大きく天に両の手のガッツポーズを突き刺した王を怪訝な顔でピンクの髪が見つめる。
「王……? うわわっ!?」
「BADEND回避だサム!!」
「BADEND……回避!?」
彼は突然サムを抱きかかえ、その場を笑いながらチカラ強くぐるりと踊るように回ってみせた。
「ハハハハハハだってそうだろ!」
「えっと……あははははははそうですよ!」
「ガキなんてまた叩き潰せばいい!! こっちには女神石像とカードもいる!!」
「そうです! フツウに余裕過ぎます王!! あはははははは」
「だよな!! ハハハハ…………」
「あははは……王?」
「マリカス……いや、王子……サム。マリカス……いや、王子……サ────」
予期せぬ来訪者とのバトルにより、始まってしまったミジュクセカイの塔隠しヒロインサムを巻き込むストーリー。父親に成り代わりプレイヤー山田燕慈が順調に攻略を進めてきたラヴあス裏世界、彼が生み出した小さなその炎は、まだ。このセカイに踊り燃え、つづけている。




