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「おい悪いがそんな趣味はないんで、帰らせてもらう」


深緑の衣装を纏った予期せぬ来客に対し父親は言い放った。


こいつはおそらく月のオカマ幹部の1人、ティクティカ別のエロいゲームの敵だ。魔女とナニを取り決めていたかは知らないがこれ以上の訳の分からない連続はごめんだな……。

面倒くさいのが来たなあ。


「アラ、どうなっている魔女」


「ちょっと手違いがあったのかしら」


「約束をヤブル気か」


スキンヘッドは怪訝な表情だ、魔女を刺すような鋭い目で見ている。

さすが月のオカマ幹部、魔女相手にもびびってはいないようだな。


「それはないわ」

「そうねここはひとつふぇあに。ティックバトルで決めるのはどうかしら」


「くウフフ! 私と貴女が?」


「うふふ」

「この渋メンくんと戦ってもらうわ、こう見えてそこそこ腕の立つティッカーよ」


「おい! なんでそうなる!」


父親は勝手に事を進め始めた魔女を遮るように言った。

ラヴあスの父親が月オカマと戦うだと……。


「ごめんなさいね、互いが納得する形じゃないと後々の処理が面倒なのよ。このまま商品が帰るとなると、ね」


「……中立ってわけか」


「そうね」


どうする……隙を見て逃げるっていう手があるが、このクソトレーダー魔女……また唱え切る前に眠らされたら最悪だぞ。

いや、何言ってんだ俺は、山田燕慈はそんな弱腰でエロいゲームをやってきたってのか────。


「まさかティッカーとは! 魔女、どこかで戦争でも始める気なのカシラ、くウフフ!!」


高らかに笑い、テンションが一段上がっている月のオカマ。


やっぱこいつらグルか? 地球侵略を企てる前の段階か? よくわからねぇエピソード0をされても困る。

そんな陰謀知略はエロいゲームには不要だぜニシ亡、狩野サハラ。


「くウふふ、別に貴女とやってもよかったのヨ」


「うふふ、今日は色々あって遠慮しておくわ。それとも飼い慣らす自信がないのかしら」


おねぇ言葉が、ややこしいなこいつら……。よく平然とやり取りできやがるな。仲が良いのやら悪いのやら。


「この私が? くウフフ、月の十六衆も舐められているようだな」

「わかったワ、私とヤリアオウじゃないの渋メンティッカー」


深緑の長身は両手を大きく広げ、口角を吊り上げ父親の方を見る。

やる気満々のかかって来いということだろうか。さすがオカマそこらのボスより迫力があるぜ。


月のオカマ幹部……こいつもヤバそうだが。魔女を相手にするよりは……。


ちらりと魔女の顔色をうかがってみる。


うっすら微笑んでいる、つまりそういう事なのだろう。

こんなクセのあるヤツらに値踏みされてもな……。


後ろにピッタリと付いてきている女神石像と石の板たち。父親は彼女らの方を振り返り見て話しかけた。


「女神石像、石の板くんちょっとややこしいことになった協力してくれるか?」


女神石像はうんうんと頷き、石の板はくるりとその場で宙返りしてみせた。


ヤツとヤツのモンスター、ティックの実力が未知数な以上、女神石像たちのチカラも借りないとな。別ゲーの敵と対決なんて……案外システムの差であっさりイケればいいが。マァ、魔女相手よりは数段はマシだ!


「よぉし、やるしかないのか!」


気合の入った渋い一声。

彼のその言葉を皮切りに魔女が動く。


「チェンジチャネル!」


そう唱えると。

辺り一面に広がる草原は、白と黒の景色へと。月面のステージへと一瞬にして変わってしまった。


戦いの舞台は月かよアガるな!


「クウフフ、覚悟はキマッたようね渋メンティッカー」


「一応聞いておくけど、作法は知っているのカシラァ? このままアナタのティックたちとヤリあってもかまわないワ」


「今宵、月は俺のもの」


「クウフフ!! なぜ知っているのかしら面白いオモシロイわー! カグヤに献上するのが惜しいぐらいにナ」


「……カグヤ? 献上だと? どういうことだ」


「アナタが知らなくていいことよ! カグヤのあとは私に首輪されるんダカラ」


カグヤ……たしか地球にいるヒロインのことだ。そんなものは月にはいないはずなんだが。俺もティクティカはラヴあスほどやり込んでねぇから訳わかんねえ……。

こいつ何か企んでいるみたいだな。


噛み合わない敵との会話は途切れ。


満天の星空の中、ニセモノの月に降りたち睨み合う両者は。


「「今宵、月は」」


「俺のもの!」「私のモノだ!」


「「ゲッカ」」


「「ドウ、ドウ!!」」


何であれ逃げるより、目の前の敵を倒す。


それが俺のやってきたゲームだろ。


月面のステージで始まってしまったティックバトル。深緑色の月のオカマ幹部と父親パーティー、渋メンの自由を賭けた逃げ場のないエロいゲームとエロいゲームの初バトル。開始!!





「アラ来ないのネ? 意外と冷たァいノネ、くうふふ」


戦いが始まったがモンスターを召喚せず、1人立っていた月のオカマ幹部。

自分の戦闘力に自信があるということだろう。

そりゃそうか相手は父親の事なんて微塵も知りはしない。

馬鹿正直にやるのも楽しいだろうが焦る必要はない。相手の手札を見させてもらおう。


「渋い見た目同様そこそこ戦い慣れているのカシラ。ナラ、まずは小手調べ」


「出ろ!! ファイブズール」


どこからか取り出した手のひらの上の色とりどりの宝石。

その宝石から光の線を放ち月面に召喚され現れたスライムたち。


【風の粘液(ズール)】【水の粘液】【石の粘液】【木の粘液】【鉄の粘液】


スライムか。数では相手が上。

父親は女神石像と石の板にこっそり作戦を伝え。


「作戦タイムは終わりカシラ。ナラ、イカせてもらう」


「ファイブズール弾幕よ!!」


先制攻撃、身を削り作られた粘液の弾丸が父親パーティーに向け放たれた。


(カード)たのむ、女神石像を守れ!」


石の板は父親の指示に従い女神石像の前に立ち盾のように敵の弾丸を受け止めた。


「アラアラ、ティックを守らせるなんて渋い選択ネェ」


父親を狙い放たれた弾丸を斜め前方に移動しながらステップを折り混ぜ避ける。

が、5体のスライムから繰り出される激しい弾幕につかまってしまった。

その連続ダメージを負ってしまう。


「ッッっい!! ……なるほどォ!」


痒いな! 小手調べの実力は分かった。

月のオカマの指示により斉射したため、ファイブズールたちの弾幕に切れ目が出来た。


「今だ、爆破斬!!」


その隙を見逃さずズールたちに突貫していった父親。

攻撃可能圏内に入り、近場の風の粘液にその炎の斬撃を浴びせ付随の中規模の炎の爆発が敵を襲う。


「まだ生きて……!」


しぶとく攻撃に耐え生き残っていた風のズールの全身を拳に変え繰り出されたパンチが父親のボディーに決まった。


「ッッゲームでも食後の腹はダメだろ! 爆破斬!!」


ものともせず、再び振り下ろした白蜜で風のズールを斬る。炎に呑み込まれた風のズールは緑の宝石の元へと光の線となり還っていった。


「ナニ、炎だと!?」


観戦していた月のオカマは彼の繰り出したその炎の技に驚いた。


「驚いたわね渋メンくんまさか炎使いだなんて……」


月面の離れたテラス席で優雅に茶を飲んでいた白い魔女、その細めた目と微笑み。潤った下唇を軽く右の中指で撫でる。


「そんなに驚くか、うおっと」


巨大な鉄の粘液のパーが上から押しつぶそうと狙った、父親はこれに反応。バックステップし回避。

さらに弾幕が再び接近してきた父親を寄せ付けないよう垂れ流された。


「クウフフ! クウフフふ! 炎使いとは、ますますカグヤにはご退場願わなければナ!!」


また急に一段テンションを上げ狂気を増していく深緑色の月のオカマ。


そういや炎は特別だからこいつらが驚いても無理もねぇな。このフザけたエロいゲームにとってはな!


「まだまだ行くぞ月オカマ!! 俺の炎、目が焼き切れるぐらい見ておけよ!!」





ド派手な、水の竜巻が月面を沿い駆けていく。

前線で父親が粘液(ズール)たちと攻防を繰り広げている間に女神石像はアクアとーねーどの発動に成功した。

猛スピードで迫るソレは3体のズールを呑み込み上空へと巻き上げていく。


「よし女神石像狙い通りだ、爆破斬!!」


月面を蹴り高く舞い上がった身は、上空に縮まり集まったズールたちに迫る。

炎を纏った白蜜は敵を斬り裂き、上空に爆発花火が咲き誇る。

水と炎のコンビネーションにより3体のズールはまとめて光の線となり宝石の中へと戻っていった。


残る一体、ニセモノの月は普段のゲームプレイの時と重力が変わらない。そのまま落ちてきた父親に向かい粘液の全身を拳に変えて迎え撃つ。


「爆炎斬!!」


一瞬木の拳と刀がぶつかり合い、すぐに技のパワー差で押し勝った炎の斬撃が木のズールを宙から舞い降りながら切り裂く。

さらに発動されたアクアスナイプによる水の矢の追撃が父親を援護。

見事にその矢に貫かれた木の粘液は戦闘不能となり主人の元へと帰って行った。


小手調べ、ファイブズールたちを無事殲滅した父親パーティー。


その勝利を得た瞬間。


「エネルギーウィップ」


青い光を放つ鞭が父親に向かい一直線に伸びていった。


「うおっ!?」


一時の勝利を手にした一瞬の油断。

父親はその線に対し反応し身体を半身にし上体を反らした。

しかし生命を得たようにその青い先端は父親の身体を絡めとろうと再び襲う。

必死の回避行動、その青い光の蛇に対し素早い反射神経をみせる。

彼の上半身を掠めた青い蛇。


深緑色の長身の口角が吊り上がる。


「ヘソノヲ」


その瞬間、青い線はピッタリと鳩尾(みぞおち)の辺りに張り付いた。

青い光の鞭を操っていた月のオカマの左手と父親の身体がその線で繋がった。


【ヘソノヲ】

狙った獲物を逃がさない超便利な拘束技だ。


「そんなにその炎の力を魅せつけるなんて我慢出来ないじゃないの」


「クウフフでもザンネン♡ その自慢の炎。まだまだ調教の余地があるワ」


「私が死なない程度に刈り取ってアゲル」


左手を手繰り寄せるようにくいっと引っ張る。

突然、大きな力が加わり上体を前方に崩してしまった父親。


「そして電撃(アイ)よ!」


青い線を伝い月のオカマの左手から送電された青い雷が父親の身を焼いていく。


「くっ……」


全ての下ごしらえを済ませて獲物に向かい猛スピードで突進していくスキンヘッド。

ソレに対し発動されたアクアスナイプ、水の矢がダメージを負った父親を援護する。


「アラァン、水を刺すナ! 美しいティックちゃん」


水の矢が突き刺さろうとした瞬間身体を捻り深緑のシルクを掠めた一矢はぬるりと曲がり遥か彼方へと過ぎ去っていった。


「追い詰められた獲物はコワイコワイ♡ 装備は万全で仕留めえええる!」


猛進する月のオカマ、その勢いは止まらない手負いの獲物の元へと肉薄していく。


「……ったく、ビリビリはなんでか嫌いだっての!」


「クウフフよく耐えた。ソシテこれぐらいなら耐えラれるカシラ、壊れても治してアゲええええル! ルナティックブレードⅡ!!」


どこからか取り出された三日月のように刀身の曲がった黒刀。右手に握られその表情は狂気を増し月のオカマは斬りかかる。


「ハハ」


ぶつかり合う直前。渋い男はその白い歯を見せる。

ヘソノヲから送られた電撃により煙を上げた黒いスーツ、だらりと上段に構えた白蜜は敵を迎え撃つ。


「爆王斬!!」


かち合う、二つの刃。

一瞬の輝きと火花を放ち。

月面に咲いた爆炎が2人を呑み込む。

その灼熱の炎の中。目を輝かせ、ヤツはその美しい刃を構え直す。


「ぐぴっと行くぞ月オカマ!!」


「【爆炎斬】【爆炎斬】【爆破斬】【爆王斬】!!」


この瞬間を待っていたと言わんばかりに連撃は止まらない月のオカマ幹部を切り裂き燃やす。


「──なナンダこの炎は!? 連撃は!? ごおおおォォクおおおオオオ」


「ぐぴぴでマダマダ俺の炎を魅ていけヨ!!」


「【爆炎斬】【爆炎斬】【爆炎斬】【爆炎斬】【爆王斬】!!」


荒ぶる炎は止まらない、炎神のような凄まじい熱量の猛攻が続く。

炎は黒スーツと共にワラい舞い踊る。


「──ジョ、冗談ではないィィ!! イ、イリュージョンムーブッッっ!!!!」


炎のコンボを一方的に受けていた月のオカマの姿が突如霞み無くなり、一瞬にして移動し後ろの地へと後退した。


「うお!? なんだその技おいおいこっちのターンだぞ!!」


ハイになり滅茶苦茶に振り回していた白蜜は空を斬り、父親は慌ててターゲットを追撃すべく追いかける。


「ハァハァ……チッ使うしかない!」


手痛いダメージを負ったヤツは皮袋から取り出した金平糖をガバっと手に取り一気に口の中へと詰め込もうとする。

その時。

猛スピードで月面を滑る水の竜巻が月のオカマに向け疾り抜ける。


「あーンッッにゃニィ!? ──ぬおおおお」


「ナイスだ、俺たちはパーティーッちょうどソレが欲しかった!!」


お食事中に訪れた水の竜巻、金平糖はバラバラになり。上空に巻き上げられた深緑色のローブ。

また、黒いスーツは月面を蹴りその連携技のタイミングは逃さない。


「爆王斬!!!!」


黒い夜空に咲き誇る巨大な爆発花火。

父親パーティーは深緑色の月のオカマ幹部に回復の隙を与えず、水と炎の猛攻を叩き込んだ。



「これが、炎神(えんじん)の炎……!!」


月面で優雅に茶を飲んでいる姿はなく。

その力強く美しい炎の特大花火は彼女の星色の瞳に、炎炎と輝き、焼きついた。

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