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「画家モグラっていないよな……」


「となると自力で探すしかないか」


「いやまぁそれが普通なんだがな」


もふもふタイム、いや、さすさすタイムを終えた父親パーティーは次の階層を目指すべくモグラの里で手がかりを探したが。


「楽せず地道にイキますか」


父親は元いたダンジョンの通路に戻るべくモグラの里に侵入したときの穴の方へと歩き出した。


が、すぐにその足を止めて立ち止まった。


「ちょっと待て、これどうやって戻るんだ」


「もしかして詰ん……」


灰茶色の空洞の辺りをぐるりと見渡す。


そして。


父親は胸に左手をあて、ひとつ大きく息を吐いた。


「ふつうにあったな……階段」


「あの滑り台はショートカットの遊具か」


彼の目に映り安堵したモノ。

上へと続いて繋がっているであろう綺麗な石の段で出来た中幅の階段が壁際に存在していた。


「おーどんどんモグラを忘れていくんだろうなこの文明」


「このまま放置していたら地上まで侵略されそうだ」


まぁ、ここはよく分からない塔の中だから安心? か。

父親パーティーは方向転換しその階段の方を目指し里の中を移動した。


「農家からしたら気絶するくらいの地獄だろうけど、まぁまぁ好きだったなこの里」


右足は、石の段を踏み上を目指す。


「ん…………なんか揺れてないか?」


父親は段にかけていた足を里の地に戻し。なんとなく察知したその違和感の方へと目をやる。


微かな振動、次第とその音と揺れは増し。


突如、壁は破られた。


激しい衝撃音と少し聞き覚えのある鳴き声が空洞に響き渡った。

掘削工事現場の辺り、うねうねと(うごめ)く銀色の蛇が、

現場にいたタチモグラたちが一斉に弾き飛ばされ蹴散らされていく。


辺りを覆う土煙、その中を貫き、突き抜ける銀色の……。

全身が鋭い棘で覆われた銀の長く伸びた巨大なフォルム。言い表せないナニカがモグラの里を突如貫き襲った。


辺りを狂ったように滅茶苦茶に蛇行しながら暴走する銀色は強引に通り過ぎたルートの建物を破壊していく。


そしてやがて。


父親パーティーの方へ、出口を求めるよう階段の方向を目掛け(そら)を疾る。


「女神石像、モグ蔵、散開だ!!」


そう叫ぶと女神石像とモグ蔵は頷き了解し、散り散りにその場から離れて行った。

並みじゃない危険を察知し既に抜刀していた白蜜をゆったりと構える。


「お前さん見たことねぇなはははダレだよ! 相変わらずわけがわかんねぇが……爆王斬!!」


銀のトゲトゲヒモの巨体が石の階段の方へと突き抜け風を切りながら駆け抜ける。

父親はその脅威を引き付け華麗に避けた身ですれ違い様に放った炎の斬撃。

紅く光る斬り傷から、巨大な炎球が発生し銀のヒモの中途を呑み込んだ。



「あんまりギラつかせるなよ俺と戦争だ、エロいゲーム」





「かましたが(ひる)まないし手応えがあまりない気が、なんでだ!」


「それに……こういうのってだいたい」


父親は再び白蜜をだらりと構える。


「戻ってくるよナァそりゃ!」


父親たちが滑り降りてきた穴からその銀の棘の暴走特急が再び姿を現してきた。

里の中央に向かい集まっていた父親パーティーの各々。


「女神石像は離れてアクアスナイプで援護だ、モグ蔵は作戦【回避】」


俺の予想ではあのトゲトゲは触れると痛そうだモグ蔵の出番はないな。生き残って撫でられることが仕事だ。


きたか。


銀の棘の暴走特急が一直線に父親に向かい速度を上げ突っ込んで来る。


まさに衝突間際。


「爆王斬!! ぐぴぴ」


銀の先端、先頭に炎の斬撃を食らわし、巨大な爆発花火が起こる。

そしてぐぴキャンを駆使し硬直をキャンセルしすぐさま回避行動に移りその突進をいなした。

灰茶色の地に衝突し中規模の穴ぼこを作りまた過ぎ去り走り去る銀のヒモ。


「痛いたいたいタイッ!!」


回避行動を取った父親の身に目測を誤り銀の棘の突進が掠ったようだ。


「痛ェ……あぁ馬鹿みたいに突っ込んで来るのはやっぱそういう系かよ!」


まるで爪を立てて連続でつねられたような痛さだ……。訳わかんねえな。


「ぐぴっと、これ以上の痛みは戦もしたことない現代日本人には勘弁だぞぉおい!」


パイナップルパイナップル天然水を使用してダメージを食らった身体を癒す。


「やべぇ……この飲み物人間辞めれそう」


瞬間に痛みが引いていく、いや無くなる。体の調子がリセットされたような奇妙な感覚だ。


女神石像のアクアスナイプが次々と突き刺さる。距離を取った位置取りで的確にダメージを与えているようだ。


スーパーアーマーでも付いているのか、攻撃をものともせずUターンした銀の棘がまた速度を上げ向かう先は。


「完全にヘイト稼いじゃったか……好都合!」


ニヤリと口角を上げ白蜜をどっしりと地に脚をつけ構える。


「……と行きたいところなんだが」


スコップを手に持ち銀の棘の生物に勇敢に接近して立ち向かうモグラの里住民。

わちゃわちゃと外敵を追いかけ回している、


「ガッツは認めるが……しょーじき滅茶苦茶に邪魔なんだがモグラくんたちよ、ハハ」


激しい攻防が続く、モグラ叩きならぬ穴を突き抜け駆けて来る銀のヒモをモグラと父親パーティーが叩く。

爆炎とスコップと水のレーザーが巨大な敵に刺さるまさに総力戦だ。


そして異変がおとずれた。


その強力な……生物を覆っていた銀の棘の外殻が砕け中身が剥き出しとなる。

うっすら縞模様の入った赤褐色の生身が電子の世界に曝け出された。


「こいつの正体がなんとなく分かった気がする」


「ミミズさんはもっと進化していたっていうね!」


「チンポ剥き出しナラぁぁぁあ!!」


迫り来る銀のミミズに対し白蜜を振りかぶり、全力で下ろす、その勢いを。


「【爆破斬】【爆王斬】ぐぴっと【爆破斬】【爆王斬】!!」


ぐぴキャンを駆使し傷付いた身体を瞬時に癒し、技の連発で失ったまりょくを補給する。



「くたばれええぇエロいげぇえええええむ!!」



怒涛の滅多斬りだ。完全にハイになっている。炎神のようなまさに全力の炎の爆発暴力が銀のミミズの外殻をぶち壊し砕き中身を焼き焦がしていく。

その狂った炎の連続攻撃に敵の動きが弱まり怯んでいるのが分かる。


そして。迎えたトドメの瞬間。


オーラ張り手をチャージし力を溜めに溜めていたモグ蔵の巨大な青い張り手の強烈な一撃が剥き出しの中身に炸裂した。


ついに。


その巨大なモンスターは地に伏し蠢き、動きを止め。


たくさんの光の粒へと、還った。


モグラ住人たちがスコップを投げ捨て飛び跳ねる。紛れも無い勝利。


長い攻防の末、決着したモグラの里住民父親パーティー連合軍と銀のミミズとのたたかい。

ラストアタックを飾ったモグ蔵がモグラ住人たちに胴上げで祝福されている。


「ハハ、ええーもってかれたなぁーー」


銀ミミズとの戦闘を終えた女神石像が父親の元へと駆け寄ってきた。


「おつかれ女神石像」


気が高まって、差し出した右手のグーを。

その石の両手は、きゅっとおおいつかんだ。

思いがけない女神のサービスに、


「ふっ、ハハハ」


目を合わせ笑い合うふたり。


完全に流れる勝利のムードに。

静かに響き渡る微かな振動が、うるさい。

段々と大きさを増し、穴の道を突き抜けた。



「……おいおい出て来るにしても早いぞー、勝利の喜びを分かちあわせろ」


父親の頬をゆっくりとながれ伝う水の玉。

銀の暴走特急、2号のお出ましだ。





「はぁっ……悪いが律儀に付き合ってられるかよ。みんなお疲れなんですよ」


祝勝ムードだったモグラたちは投げ捨てたスコップを慌てて取りに走る。


「モグ蔵は引き続き作戦【回避】だ、無茶はするなよ」


取り止められた胴上げ、宙からどすりと尻餅をついたモグ蔵は倒れながら右手の6指を挙げ答えた。立ち上がり銀のミミズに対して構えいつでも逃げれる準備を整えたようだ。


「……女神石像、そろそろ溜まってるよなリミットメルトだアタマをよぉく狙え」


父親は眉間をトントンと左の人差し指でさし。

女神石像は彼の右手を握りながらうんうんと頷いた。

離された石の両手はすぐさま彼に指示された行動に移った。

両手を握り合わせ祈りを捧げ、みずいろの魔法陣が構築される。

リミットメルトを発動し、並々ならぬアオいオーラが女神石像の全身をつつんだ。


コピーされた魔法陣が多重に展開、宙に次々と構築されていく圧巻。

そして、彼女の頭上に浮かび上がったアオ色の∀のサイン。

全ての準備は整った。


その美しい石の顔は、勇ましく強く叫んだ。


みずいろの魔法陣群から発動され放たれた、アクアスナイプ∀の一斉射。水の矢は収束するように1点に集まる。

完璧に捕捉された銀の先端、うねる水の矢は絶対に狙いを外さない。

水の矢の雨がその銀の棘の装甲を貫き脆弱な赤褐色の肉に突き刺さった。鋭い破裂音のような水の衝撃音と飛沫(しぶき)が弾けるように上がる。


「これがアクアスナイプの、女神石像の(フル)パワーってことか!! ナイスコントロールだ」


手痛い水の矢の斉射を里の中央へと突進していた鼻っ面に受けた銀のミミズは進路を変え、仕切り直すように石の階段の穴へと逃げ込んだ。


そう来たならッ!


「女神石像来いっ!!」


彼が勢い良く伸ばした右手に、

バチンと元気な石の手が遠慮なく重なる。


「よおおおし!」


口角を上げ、叫んだ父親は彼女の手を引いて向かう。

その音の鳴る方へ。


「何年やってるとおもってんだよ!」


感覚は研ぎ澄まされているというよりはいつも通りだ。


「そうだここは次元が違うんだ、俺もリミットメルト!!」


音が大きくなり段々と近付いて来る。

解放された紅い熱い激しいオーラが父親の全身と相棒の白蜜をつつむ。

目を合わせ、手を離した彼女は理解し少し後ろで、見守ってくれている。

上段にゆったりと構えた美しい刀身の白蜜は、ヤツを先回りしていた。


「二次元じゃァ……ないんだよバーチャルは!!」


大きな壁際の穴からチラリと覗いた赤褐色。


今だ。絶対このタイミング!


紅いオーラは解き放たれた。


「ウケとれ銀ミミズ!! 斬波爆王斬ザンパァッッバクオーザン!!!!」


「ラヴして! 恋して! 土に還れぇえええ!!」


白蜜を振りかぶり空から地を斬った。凄まじい熱量の炎の斬撃ビームが形を成し銀のミミズに放射され襲う。その穴に通されたヒモにもはや逃げ場はない。突っ込んで来たその長い身が縦に両断されていく、斬られた場所から順に無数の炎の小爆発が起こる。


ご自慢の銀の棘装甲ごと一刀に両断され、ボロボロに焼けた銀ミミズ。その巨大なヒモはドスリと穴の滑り台の中で倒れ動かなくなった。

そして白く染まる光の粒へと、還っていった。


「この次元だ」


今度こそ役目を終え仕舞われた美しい刀。


圧巻のゲームプレイに喜び抱きついてきたのは、元気な石の彼女だった。

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