住まう場所
「帰れないことは、理解しました。では、お願いがあります。」
「なんでしょうか?ユーリ様。」
「魔物が減ったら、私の仕事は終わり、ですよね?」
「そうですね。」
「では、その後、市井に下りても困らないような、教育を受けさせてくださいませんか?」
「はい?」
「この国で、女性がどうやって働いているのか、わからないのですけど、何か、私にもできるような職業につける勉強をさせてください。できたら、医者になりたいです!そうしたら、魔物が減った後、安心して王宮から出られますから。」
「ちょ、ちょっと待ってください。ユーリ様、魔物が減ったら、王宮から出るおつもりですか?」
「当然ですよね?私は、王家の人間ではないので、出ていくのが。」
・・・あれ?違うんだろうか?
レジナルド王が、頭を抱えている。隣にいるルーカス王子も、唖然とした顔で、口をはくはくさせている。アルフレッド公は・・・。髪に顔を隠されているので、よくわからない。
「あの、ユーリ様。恐れ入りますが、魔物が減った後で、市井に下りたいと言うご要望には、お応えいたしかねます。申し訳ございません。」
「はい?」
「ユーリ様は、一生、この王宮から出ることができません。・・・あ、王宮がどうしても嫌だとおっしゃるようでしたら、別に宮殿を建てさせていただきますので、そちらでお過ごしいただくことは可能ですけれども。」
「はい?え?なぜでしょう?」
「黒い瞳は、最強の兵器だから、です。」
「???」
「・・・おわかりになられませんか?ユーリ様が、市井に下りられますと、他国が誘拐するかもしれません。そして、その他国が、我が国に攻め入ろうとしたら、ユーリ様の黒い瞳で、人を操れば、非常に容易になるのですよ。他国に誘拐されなくても、ユーリ様の黒い瞳を利用したい人間は、この国にもゴマンといることでしょう。王家から、御身を出すのは、国防上、許されないのです。」
・・・言われてみれば、その通りだった。
市井に下りて働くって言っても、人の顔を全く見ないで働くことは、無理だろう。うっかり魅了をかけてしまいかねない。それを忘れるなんて、私ってば、馬鹿だ。
「そう、そうですね・・・。」
がっくりと、うなだれる。一生、王宮で、飼い殺しってことかあ。もしかしたら、人に会わないように、どこかに閉じ込められるのかも。
「そうすると、私は、どこかの部屋に、閉じ込められて生活する、ってことでしょうか?」
「とんでもございません!神の御使いを閉じ込めるなど、恐れ多い!・・・王宮内であれば、自由にされて構いません。ただ、御身を守るため、護衛は付きますが。」
「そう・・・、なのですね。」
「申し訳ありません。ですが、ユーリ様が、不自由なく、お過ごしになれるように、配慮させていただきますので、何卒、ご理解をお願いいたしたく。・・・住まい以外で、何かご要望はございますか。」
「では、あの、まずは、この国について学びたいので・・・。教育を受けることは、できますか?」
「ああ、確かに。そうですね。家庭教師をつけさせていただきます。学ぶ内容は、教師と相談してくださいますか。」
「助かります。ありがとうございます。」
その時、コツコツと扉がノックされた。
「・・・入れ。」
「新しいお茶をお持ちしました。」
先ほどの年配の女性が、ワゴンを押して入室してきて、私達の前のカップと、熱いお茶の入ったカップを取り換える。
そして、また、すっと退室していった。
・・・今度のお茶は、オレンジ色だ。水色のお茶、飲み損ねてしまった。どんな味だったんだろう?




