西の領地にて3
西の領地に滞在して、早くも1か月が過ぎた。
ルーカス王子達は、善戦していて、森の真ん中くらいまで、魔獣を追いやっているそうだ。
もう少ししたら、私の出番が来るだろう。
魔法の勉強は、ずっと、アルフレッド公に教えてもらっているけれど、劣等生のようで、未だに、自分の中の魔力の流れが見えず、減った感覚も、つかめない。
アルフレッド公から彼の魔力を流されれば、わかるのだけれど、自分の魔力はさっぱりだ。
アルフレッド公の手のひらに流すのも、彼が怪我をしているか、具合が悪くないと流せない。
実は、これは、西の領地に来る前に判明したのだけれど、私の白い光は、治癒の力だからか、手のひらを当てる対象が、治癒の必要が無い場合、祈っても、発動しない。
アルフレッド公と手のひらを合わせて、祈って白い光が流れる場合は、彼が、どこか怪我しているか、具合が悪い、ということになる。
治癒専用なので、この西の領地では、週に一度、ルーカス王子とリリアナ妃が戻ってきたら、2人の手を握って、治癒魔術を発動させているのが、唯一の訓練だろうか。
2人とも、魔獣と戦っているので、身体のどこかしらに傷があるし、寝袋で寝ているから、疲労も溜まっている。だから、毎週、真っ白い光が、2人を包んで、癒していた。
本当は、騎士達にもやってあげたいのだけれど、それは禁止されている。
王族が、王族以外と手を合わせるなんて、絶対に許されないから。
そして、それをやってしまうと、対象の人数が多くなったら、治す時間も取れない。
大地を癒すときに、まとめてその大地の上にいる騎士達を癒すのが、ぎりぎり許される範囲だそうだ。
ともあれ、魔力が枯渇しかけてもわからない私は、アルフレッド公がそばにいて見ていなかったら、治癒をかけてはいけないと厳しく言われている。
アルフレッド公は、私の魔力が減っていき、限界に近くなるのが、見えるらしい。
白い光の輝きが、弱くなってくるのだそうだ。
ルーカス王子達がまた、魔獣の討伐に掛かっているある日、再び、アテーナム川の船着き場の街に連れて行ってもらった。
今日は、料理人も一緒で、料理人達は、フェロー王国の料理を出すお店で、カレー味を勉強してくれる。教えてもらえるといいのだけれど。
王宮に帰っても、時々、カレー味の料理が食べられたら、嬉しい。期待しよう。
また、アテーナム川が見える公園を、アルフレッド公とおしゃべりしながら散策していたら、突然、どこかで、魔獣の咆哮と悲鳴が聞こえた。
「え!?」
「何!?」
私の周りに、騎士が数人駆け寄り、アルフレッド公と同時に警戒する。と、公園の入り口に、いきなり、魔獣が湧き出て来た。
「街中に、魔獣だと!?」
アルフレッド公も、抜剣する。
「大公殿下!ユーリ様は、馬車にお連れします!」
騎士が、私をかばいながら、アルフレッド公に声をかける。
「そうしてくれ!私も、目の前の魔獣を倒したら、すぐ馬車に戻る!」
「アル!気を付けてね!」
公園には、大勢の人が逃げまどっている。隠れて護衛していた騎士達が、すでに魔獣に向かっているけれど、アルフレッド公も、逃げまどう民を守るため、魔獣に向かった。
私は、足手まといだ。騎士に守られながら、逃げる人波を避けつつ、馬車に戻る。
馬車に戻って、「入ってください!」と馬車に乗せられ、扉が閉じられる。
ほうっとため息をつき、アルフレッド公が、早く戻ってきてくれないかな、と思っていたら、突然、馬車が動いた。
「え?アルフレッド様を待たないの?」
御者に声をかけたら、逃げてくる人が多く、危険なので、少し先まで動かすと言う。
気になったけれど、少し離れた所で、止まり、ほっとする間もなく、突然、扉が開いて、騎士の一人が、乗り込んできた。
「どうされ・・・?」
口元に、濡れた布。ぷーんと、鼻につく、臭い。
・・・私は、意識を手放した。
乗り込んできた騎士が、私をかつぎあげ、すぐ隣の馬車に放り込み、その馬車は、怪しまれない程度の速度で、その場を駆け去った。




