お茶会の後で
お茶会が終わって、自分の部屋に戻り、ベッドに、体育座りし、一人、ため息をついていた。
ドルチェとレーテには、少し疲れたから、今日は、もう一人にしてほしいと頼んで、下がってもらっている。
この国は、召喚した者に対しての思いが重すぎる。
少なくとも、召喚されたことに対して、それほど、悲しんでいない。
むしろ、この国の皆さんは、優しいし、美しい姉が2人もできて、毎日が幸せだ。
日本に帰れと言われても、帰りたくないと断言できるから、なおさら、罪悪感が募る。
それにしても、アルフレッド様。
アイリーン王妃と、リリアナ公爵令嬢の話からすると、彼は、女性をそばに寄せなかったみたい。
初めて会った時も、閉じこもって社交に出ていない、と言っていた。
としたら、私との婚約も、本当は、嫌だっただろう。きっと。
ノブレスオブリージュ。
王族としての義務感で、神の御使いを、妻にするだけ。
大事にしてくれるだろうけど、きっと、愛してはくれない。もしかしたら、白い結婚かもしれない。将来、子供が欲しかったから、そうなら、とても悲しい。
それに、そもそも、相手を知るほど、一緒に居ない。
こちらに来て、1カ月。ほぼ毎日、午前中は、アルフレッド公の授業を受けているけれど、授業時間以外で、彼と話をするというか、顔を合わせる機会が、ほとんどない。
授業は、詰め込み授業なので、私語を挟む余裕もないのだ。
そして、授業中のアルフレッド公の態度は、学校での生徒に対する教師のものと同じだった。婚約者に対する態度ではない。
それに、授業が終わると、アルフレッド公は、王宮に行って、深夜になるまで戻ってこない。おやすみなさいの挨拶さえ、できない。
御使いお披露目と、婚約式までの準備期間が非常に短く、王族と、政治や外交担当の貴族達が、寝る間も惜しんで、打ち合わせや、政務にいそしんでいるためだ。
アイリーン王妃もリリアナ公爵令嬢も、王や王子と、めったに会えていないと、お茶会で話していた。
本当は、アルフレッド公とゆっくり、お互いを知るための時間を取らせてあげたいのですけれど、と、アイリーン王妃には、謝罪された。
国内だけなら、どうにかなるかもしれないけれど、国外から大勢集まるので、どうしても、アルフレッド公だけ政務から外すのは、難しいと。
神の御使いについての情報および、国外の情報に最も詳しいのが、アルフレッド公なので、彼無しでは、準備が進まないそうだ。
婚約式が終われば、平常に戻るので、そうしたら、アルフレッド公は、また、自分の宮殿に籠るだろうから、お話する機会が増えるでしょう、それまで我慢してくださいね、と。
でも、アルフレッド公と親しくなることができても、夫婦の愛情を期待するのは、諦めたほうがいいのかな、と、普段の彼を見ていて、少しだけ、寂しく思う。
義務で仕方なく、受け入れたにしても、彼は、優しく気遣ってくれる。
せめて、迷惑はかけないように、友達みたいな関係で、過ごしていければいいのかな。
寂しくなんかない。
私には、姉が2人もできた。明日も、また2人と会える。
婚約式で着るドレスの仮縫いに、付き合ってくれるのだ。
婚約式で着るドレスは、召喚された翌日から、作成が始まったと聞いた。
身体のあちこちのサイズを、ドルチェとレーテに、測りまくられたのは、そのため。
デザインは、アイリーン王妃とリリアナが、相談して決めてくれたそうだ。
「ご自分でデザインを選ばれたかったと思いますが、今回は時間が無く。」
申し訳なさそうに謝られたけれど、ドレスなんて着たことがないから、選んでくれて、正解だと、思う。
気持ちを切り替えようとして、うまく切り替えられなくて、ぎゅっと押しつぶされるような思いに、手を胸にあてて、うつむく。
「本当は、アルフレッド様と相思相愛に、なりたかったな・・・。」
政略結婚だとしても、愛し愛される関係に、できれば、なりたかった。でも、それを求めたら、きっと、アルフレッド様を苦しめてしまう。
頼めば、御使いの命令に逆らおうとせず、愛しようとしてくれるだろうけど、それは、私の欲しい愛情じゃないから。
寝台から、アルフレッド公の寝室につながる扉を見ながら、何度目かのため息をつく。
「安心して・・・?でしたら、なおさら、鍵は、つけられませんね?
神の御使いを守るのは、私の義務です。従って、何かあった時、あなたのそばにすぐ、駆け付けられるようにしなければなりません。」
ふいに、アルフレッド公に先日言われた言葉が蘇り、涙が出そうになった。
私を女性として意識していない、言葉に。




