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ビリディ達のルート


 ギルドに来たグレンとアリアはナルシーを探す。

 王国案件の依頼に来てるなら、カウンターの方にいるだろうと歩いて行くと。

 フィルネとナルシーの姿を見つけたが、二人は何やら言い合っていた。


「────いや、だから。今回の魔物の件に関しては彼の力が必要不可欠だと思うんだ」

「団長様、毎回それ言ってませんか? 自分の部下を使えばよろしいではないですか。こっちも従業員が足りてないんですよ。私の意見としては、騎士団の人がもっとシッカリしてくれないからギルドに負担がかかるんですよ!」


 早口で捲し立てるフィルネの言葉にナルシーが困惑している姿は、このギルドで名物になりつつあった。

 ナルシーに対してあそこまで言い切る人間は、フィルネくらいだろう。


 〝西の雷〟ライトニングスピードのナルシー・ロミリアンスも、ギルドの金髪少女フィルネ・レンペルの〝ライトニングマウス〟には敵わない……なんて、冒険者の間では噂になっていたり、いなかったり。


 そんな二人を見て、アリアは言う。


「そもそも団長さんも、フィルネちゃんに話し掛けるからダメなのよね」


 グレンはアリアに同意の頷きを返した。

 それを言うなら、そもそもナルシーが直々にギルドに来る必要がない、という話に戻るのだが。


 とりあえず、グレンは言い合う二人の間に割り込む。


「あの。ちょっといいですかね?」

「おお、グレンくんじゃないか。丁度良かった、実はキミに頼みたい案件が……」

「だから、彼は忙しいんです。私の仕事も手伝わないといけないし。依頼主の所に、取れるかもわからない依頼報酬を取りに行ってもらわないといけないし。アダマンサイホンのツノの件も結局解決してないし!」


 何か責めらてる感が否めないグレンだったが、ナルシーも戸惑っており。

 とりあえずこの場を解決しないと本題にも入れない様だったので、先ずはナルシーの話を聞くと。


 どうやら王国騎士は、まだ死生蝶の事を知らないようで。あちこちに増えている〝ヤル気の無い〟魔物についての調査を依頼に来たようだ。


 それについては既にグレンは解決しているし、ギルドのアダマンサイホンの件についても後程解決するつもりである。


「ナルシーさん、その件なら大丈夫だと思います。後は現存している魔物を倒していけば数は減っていくはずです……。フィルネも、アダマンサイホンの件は後で解決するから少し待ってよ」


 と、グレンは二人に〝死生蝶〟の話をした。

 既に原因は解決しており、以後は復活する魔物もいなくなるはずだと説明すると。

 ナルシーは「なるほど……」と、フィルネは「ふーん」と納得し争いは収まった。


「それで、ナルシーさんにお願いがありまして。実は死生蝶の発生源である石碑の件で、ビリディさんに話を聞きたいのですが」

「ああ、それなら今から私が付き添う事にしよう」


 と、ナルシーと共にシナッと場を立ち去ろうとするグレンにフィルネが叫んだ。


「ちょ、ちょっと! まだ仕事あるんだけど?」

「ご、ごめんフィルネ。面会は日中しか無理だから、終わったら手伝うよ」


 口を尖らせるフィルネに謝り、ナルシーと共にグレンとアリアは城の地下にある牢獄へと向かった。



 城の牢獄への入り口。そこを通り過ぎ、ナルシーは更に奥の部屋へと向かう。

 到底牢獄とは思えない部屋だが、そこにビリディはいた。


 この世界の牢獄は意外と簡素だ。

 それは魔力結界があり脱獄は不可能だからなのだが、ビリディの場合は魔力結界が効かない。

 その為仕方なく、普通の部屋の中に大きな鉄格子の檻が置かれていた。


 そこは看守の部屋なので、牢の見回りや食料の配給に行く時以外は常に看守がいる。

 頑丈な檻と、人の目でビリディは監視されているようだ。


 まるで捕えられた獣のような扱いだが、本人は以外とケロっとしていた。


「おう。久しぶりだな、どうした俺を釈放しにきたか? 俺はまだあの戦いの決着を認めてないぞ。もう一回やろうぜ!」


 ビリディはグレンの顔を見るなり、ニヤリと笑い戦いを煽ってくる。

 その姿はまさに餌を前にした獣で、相変わらずの戦闘狂っぷりにグレンが困っていると。

 ナルシ-が言う。


「模範囚になれば早めに出られるさ。グレン君が西方大陸に上陸してからのキミと水巫女の行動について聞きたいそうだ」

「なんだ、そんな事か。何が聞きてぇんだ? 別におもしれぇ話は無えぞ」

 

 ビリディはつまらなさそうにドカっと座り込む。


「ビリディさん、イルマール大森林を通ってないですか?」

「イルマール? ああ、遺跡のある森か。通ったぞ」


 ビリディは言う。

 彼はチャミィの能力により、誰に助けられたかは覚えていないが。シースの港町に降りた事は覚えている。


 そこからリュシカと二人、イルマール大森林の中腹にあるシャトルファングの拠点がある遺跡を目指したと答えた。


 思い起こせば、前にベーチャという盗賊がアリア奴隷船に連れていく為に、イルマール大森林を北に抜けていた事をグレンは思い出した。


 とはいえ彼らのアジトは遺跡内ではなかった気がするのだが、ビリディはシースから遺跡の方へ移動したというのだ。

 

「ビリディさんって、西方大陸に来た事はあるんですか?」

「ああ? ねぇよ。こっちの奴等のアジトすら知らなかったんだからな」

「アジトの場所は知ってたんですか?」

「俺達を助けた奴が言ってた。森は、王都への最短ルートだが地元の者でも殆ど通らないから人目につかない道だってな。そして盗賊の拠点が、その途中の遺跡の地下にあるって事も聞いた」


 つまり、チャミィの情報でビリディとリュシカは遺跡を目指した事になるわけだが。

 チャミィは、二人に何をさせたかったのだ? とグレンは疑問を感じたが、ビリディは続ける。

 

「まあ、実際には遺跡の地下に行っても何も無かったけどな」

「その時、リュシカさんも遺跡の中に?」

「当たり前だろ。あんな状態で放っておけねぇよ」


 当時リュシカは、海上からずっと人が変わったように不気味な雰囲気だったという。

 丁度、遺跡に着いたのが夜で、その日は遺跡で一泊したらしく。

 その次の朝から、何故か普段のリュシカに戻っていたというのだ。


 ならば十中八九、リュシカの魔力が石碑の精霊を起こしたと思って間違いないだろう。


 おそらくアリアの時とは逆で、駄々漏れしてたリュシカの魔力が石碑に吸われ、石碑の中の〝死生蝶〟が力を得たのだ。


 代わりにリュシカの中の精霊は再び眠りについたのだろうとグレンは考えた。


 精霊状態のリュシカを歩かせるのは色々と危険だ。

 そう考えると〝たまたま〟だろうが、チャミィの意味不明な誘導は結果的にファインプレイとなっていた。


 本当に今回は、地味にチャミィが色々と絡んでいるなぁ……などとグレンは思っていた。



 

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