表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/96

騎士団長の呼び出し


 マルクスいわく『助けに行った事は上手く誤魔化した』という事だったが、少々別の問題が出たようで。

 その件でグレンは王城に顔を出す必要が生じたとマルクスは伝えてきた。

 結局はそれが本題だったのだ。


 マルクスとの話し合いが終わったグレンは、カウンター奥の店長室から出て再び店内へ戻る。

 既に冒険者達の間で王国案件の話が広まっており、店内はお祭り騒ぎだ。

 そのあまりの賑わいにグレンは気圧され唖然となっていた。


 グレンのいた中央大陸では、王都の冒険者ギルドは大体が王国案件をやっている。

 故に別に騒ぐ事はなかったのだが。それが〝明日から始まります〟となると、こうも賑わうものなのか? とグレンは驚かされていた。


 しかし驚いている暇はない。

 マルクスから、王城に行くように言われている。なんでも騎士団長を尋ねる必要があるとかで。

 グレンはギルドを出て直ぐに王城へと向かった。



 ルベリオン王国の王城──シュタンストール城の大きな門の前に立つ兵士に、マルクスから預かった書状を見せるとグレンは城壁の内側へ通された。

 直ぐに別の者が現れ城の中へと案内され、城内ではまた別の者がついて「こちらへ……」と、幾つかの扉を抜けて、案内された部屋に入ると何故かアリアがいた。


 その奥には、グレンと同じ程の背丈の男が立っている。

 背丈こそ同じだが、その顔はとても華やか。わかりやすく言えば超絶美形だ。


 地味なグレンと対称的に金髪に長髪という派手な男。その男が爽やかに微笑み、グレンに挨拶をした。


「わざわざ来てもらって申し訳ない、グレン・ターナーくん。騎士団長のナルシー・ロミリアンスだ」

 

 名前を聞いて、目の前にいる派手なイケメンが、あの有名なナルシーだという事にグレンは驚いた。

 他人との関わりを極力避けてきたようなグレンでも、その名前くらいは聞いた事がある。


 剣術の才に恵まれ、若干三十歳にして西方大陸最強と謳われる男──ナルシー・ロミリアンス。

 彼の初動の速さは〝雷速(ライトニングスピード)〟と呼ばれ、殆ど一撃で勝負を終わらせる事から『西の雷』の異名でも知られている。


 そう言えば西の雷は王国騎士団長だったか……と思い出しながらも、グレンの緊張は一層高まった。

 しかし、そんな人間が一体何用なのかはわからない。

 マルクスも詳しく言わなかったが、王国案件が決まった事とは別件らしいと聞いていた。


「さて、揃ったので早速だが本題に入ろう。実は先日捕まえたベーチャの事だ。調査報告で、ベーチャを捕まえたのはアリアくんとなっていたのだが。ベーチャ本人が〝派手シャツ〟一人だと言ってるのだ。

もちろん。彼等も面子があるから、女性一人にやられた……とは言えないのだろうけどね」


 ナルシーは困ったように額に手を当てるが、それが過剰な演技だという事はグレンにもわかった。

 

 派手シャツ──つまりグレンが、遺跡から帰って来たアリアと行動を共にしていた事は、ヴァルハラ含む捜索隊の証言で王国も既に知っている。


 王国がマルクスに説明を求めたさいには、あくまで〝責任を感じた従業員が単身でアリアを探しに行った〟という風に説明したそうだ。


 要するに今回の一件は、盗賊達を拘束したのはアリア一人であり、グレンはそのアリアを探しに行く途中で戻ってくる彼女に出会った。という事になっていた。


 そして、元々依頼処理能力が高い事で評判だったルウラ支店は。今回の件で〝冒険者との確かな連携と信頼関係がある〟という風に王国から高く評価され。

 その結果が、ギルド案件の決定である。


 ────しかし、ナルシーは続ける。


「ただ。僕は少し腑に落ちなくてね。ちょっと二人とも僕について来てくれたまえ」


 アリアとグレンは顔を見合わせ、黙ってナルシーに付いていくが、二人の顔は少し複雑な表情だった。目の前の男に疑われている事は明らかだからだ。

 

 まさか尋問でもされるのだろうか?などと不安を抱きながらも、やがてたどり着いたのは何故か王国騎士の稽古場だった。

 ナルシーは十数名の騎士が稽古してる間を抜け、壁にかけられている二本の木製の剣を手に取りながら話始めた。


「疑っちゃ悪いんだが、アリアくん一人であの集団を倒せるだろうか? 僕はね、ベーチャという男を決して軽視はしていない。盗賊の〝わりには〟そこそこ戦えるんだ。そう、だから────」


 話半ばにナルシーは持っていた木剣の一本を空中に投げ放った。

 それは綺麗な放物線を描きアリアの頭の上に落ちそうだったが、横に立っていたグレンが咄嗟にキャッチする。 

 それを見届けてナルシーは話を締めた。

 

「僕と軽く勝負しようじゃないか」


 最初からグレンが剣を取るとわかっていた様な微笑みを浮かべて、ナルシーは剣を構える。

 いつの間にか、稽古してた騎士達も全員が手を休めて、その異様な光景を興味深そうに見ていた。


「そういう事ですか……」とグレンは漸くナルシーの思う所を理解出来た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ