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全てを騙した男

 ◇◇◇◇◇


 金貨200枚から十五パーセントが引かれた金額。

 金貨170枚がアリアに支払われたのは、彼女が騎士団と共に出発する前日の夜だ。


 遺跡から持ち帰った荷車はフィルネに預けられ、依頼完了でギルド報酬が支払われたわけだが。

 その翌日、グレンはさっそくフィルネに手伝いを頼まれた。

 依頼主のサヴァロンの所に荷車を運び、報酬金の金貨200枚を回収しに行く為だ。

 

 その道中でフィルネが何かを話してくる事はないとグレンは思っていたのだが、予想は外れて何気無い一言がグレンに投げ掛けられる。


「ねえ。その靴なに? 一体何処を歩いて来たのよ。森の中でも走り回ったわけ?」

「え? ああ、いや……うん。僕にもいつ汚れたのかわからないや」


 特に気にせずグレンは答えたが、森の中を〝アクセラレーション〟で爆走したグレンの靴は思った以上に汚れている。

 ギルドの制服は靴もセットだが、シャツと違って靴は一足しか持っていないので、汚れても直ぐに替えが無いので仕方ないのだ。


 だが、それでフィルネに何かバレる事はないだろうとグレンは思う。

 それより、彼女に敬語を使わないように意識する方が神経を使う作業だった。


「へぇ。そうなの……お客様の所に行くんだから、少しは気を遣ってよね」

「そ、そうだよね。ごめん……ね」


 とはいえ、アリアを助けに制服を着替えずに行ってしまった事自体はグレンもさすがに後悔していた。

 別にシャツや靴の汚れを気にしたわけではない。

 派手なギルド制服の印象を盗賊達に与えてしまった可能性があったからだ。


 フィルネと他愛もない会話をしている間に、一軒の大きな家に辿り着いていた。

 依頼主、サヴァロン・デミタスの家だ。


 フィルネが呼び出しベルを鳴らすが反応はない。

 何回か鳴らしたが誰もいる気配がなく、結局その日グレンとフィルネは出直す事になった。


 しかし────翌日もサヴァロンは家にいなかった。

 更にその翌日も、サヴァロンは居なかったのだ。


 フィルネとグレンはギルドに戻り、どうしたものかと話していると。

 アリアとレオン、そして騎士団がベーチャ達を連れルウラへ戻って来たという話が飛び込んできた。


 その直ぐ後で、サヴァロンの事で頭をかかえていたフィルネとグレンに向かって、ガイが興奮気味に話し掛けてきた。


「おい、サヴァロン家に居たか?」

「いや、いませんけど?」

「やっぱりか。何でも奴は盗賊と手を組んで盗賊が待ち伏せしている場所に、冒険者を美味しい依頼で誘導していたらしい!」


 フィルネはもちろん、さすがのグレンも驚いた。

 その後、騎士団がサヴァロンの家に突入したらしいが中は既にもぬけの殻だったという。

 何が何やらわからなかったが、それから二、三日かけて情報が出揃ってきた。


 結局。アリアとレオンの言い争いで騎士団が動き出した頃から、誰もサヴァロンの姿を見ていなかったようだ。


 サヴァロンは自分の依頼を受けた者に〝差し入れ〟と称して睡眠導入薬を混ぜたパンを提供しており。

 深い眠りについた冒険者を盗賊達が襲う、という手口で数件の余罪があった事がベーチャの口から明らかになった。


 レオンを疑ったアリアは勿論、ギルド側もサヴァロンに騙されていたわけだが。

 実はベーチャに手口を持ちかけたのも、サヴァロンらしいので。結局は、彼に関わった全員が転がされていたわけである。


 こうしてサヴァロンには賞金がかけられた。

 今後、彼の存在も想定して依頼を見極める必要があるとグレンは気を引き締めていた。

 しかし、被害を被った者はもう一人いる。


「ちょっと、本当最悪。サヴァロンの報酬金回収出来ないじゃない! 私が受けた依頼だから、私の給料から報酬金の十パーセント分が引かれるのよ!」


 珍しく客の少ない掲示板の前で、グレンはフィルネの愚痴に付き合わされていた。


 冒険者ギルドでは、何か問題があると依頼を受付した従業員にペナルティがある。今回は報酬金の踏み倒しがほぼほぼ確定なので手痛い。

 従業員には人を見極める目も必要という事なのだ。


 しかし報酬金を払わなかった依頼主なんて、過去にも殆どいない。そんな事をすれば二度とギルドに依頼を出せないし、冒険者登録も出来ない。

 もちろん国からの法的処置もある。


 故に、サヴァロンのような相当な悪人じゃない限り起こり得ない事なので、フィルネは相当に運が悪かった。

 グレンもさすがに彼女が可哀想に思える。

 しかも、あの依頼はグレンが打ち切りを考えていた依頼でもあるのだから余計に申し訳ない。


「そ、それは最悪だね。大変なら、僕が代わりにペナルティ受けようか?」

「は? なんでそうなるの? どうして何もかも全部しょいこむのよ!」

「いや、な、何の事です?」

「もういい……」


 急に子供のように怒るフィルネにグレンが困っていると、それをいつの間にか隣で黙って見ている従業員制服を来た者の姿が目に入った。

 年齢は五十台後半、白髪混じりのオールバックに少し強面の顔はまるでベテランの冒険者だ。


 あんなに怒っていたフィルネも急に黙ってしまう程のその人物は、冒険者ギルド〝ルウラ支店〟の支店長──マルクス・レペットだった。

 

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