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一話 在り方(4)

「――だから、尚更不思議なのだよ。何故ミライ君達は『人類』という肉体に拘るのか。君達はずっと似たような肉体の形式で文明を興しているだろう?」

「さっきも言ったけど、人類こそが僕らの求めるものなんだ」

「……君達の元々の出身文明はどこだい?」

「RQ-52436-11-G」

「ふむふむ……」


博士は上を見上げながら長考する。博士だけでなく、クッソロエプロンさんとエンペルクさんも長考している。


「なるほど――君達は旧人類の再演をしたいんだね」

「再演ではなく、僕らの根源が『人類との共存』なんだ。だから、人類ありきなんだよ」

「それは面白いね……造られた生命体である君達の根源が、君達の文明で言うところの『呪い』みたいなものになっているということだ」


「呪い……」と自分から漏れた言葉に肝が冷え、


「だから人類を求め、人類を創造し続けるのか……」


という悟の呟きで、汗をかかないはずの肉体で冷たいものが背中を伝っていった気がした。


「お母さん達が気に病む必要はないよ。お母さん達が生み出した機械的生命体には寿命があったのだから」

「ミライ達には寿命がなかったの?」

「寿命というか、肉体が劣化したら自分達で修繕するよう設定されていたんだ。だから生み出した人類に不滅個体って言われていた」

「それは……」


――なんて残酷なことを……。


私達が生み出した機械的生命体の基底命令も『人類との共存』だったけど、明確に寿命を設けていた。寿命を奪った場合の行く末がミライ達だと思うと、胸が締め付けられた。


「僕達が寿命を設定したのは、正解だったのかもしれないな……」


悟の呟きにミライが皮肉そうに笑う。


「まぁ、僕達の仲間を増やしてもらっても良かったよ?」

「いやいや、それはなんというか、業が重いよ……」

「ふふっ、そうだね……」


私達のやり取りを見ていた博士は興味深そうに何度も球体を上下に揺らす。


「いやぁ、面白い。人類は肉体が不安定な分、感情が多種多様なのかもしれない。これは滅亡してしまっているのが、より残念になってくるね……リアルタイムで観測してみたかったよ」

「遠い場所でもそんなことできるの?」

「アカシックレコードに距離は関係ないのでね」

「便利すぎじゃない?」

「確かに、便利だね……しかしながら、アカシックレコードはただの観測記録だけなのだよ。その記録をどう活かすかは、読んだ者の力量次第だ――ミライ君達は、自分達の限界を感じて宇宙に旅立ったのかい?」

「宇宙旅行自体は僕らがお願いしたんです」


悟の言葉に博士は球体を大きく縦に揺らした。


「なるほど、観測記録だけでなく、実際に宇宙を見て回るとまた違う視点が増えるだろうね」


――まぁ、私達が宇宙旅行ってゴネなければ、人類が永久欠番になる可能性があったしね……。


悟と視線を交わし、苦笑いする。


「一つ確認したいのだが、ミライ君達にとっての『共存』とは何なのだろう?」

「共存は、共に存在することと定義している」

「ふむ……認識の違いだね」

「どういうこと?」

「私は、君達は既に共存に成功していると考えるが」

「成功? どこが?」


食い気味に問うミライに、博士は「だから認識の違いと言ったのだよ」と返す。


それは、私と悟も――そして、もしかしたら朋里と優希も感じていることだった。


――認識……定義の違い。


「これは、私から言ったところで君達は納得しないだろう――自分達で気付き、理解しなければいけない」

「ヒントを教えて欲しい」

「君達には今、家族がいる――肉体はないが人類の」

「確かに、お母さん達は元人類だけど、人類全体じゃない」

「そうだよ。そこの差だ」


博士の言葉にミライはもどかしそうに頭を掻く。


「分からない……分からないよ!」

「まだ分からないって決めつけなくてもよくねぇか?」

「そうだよー、時間は沢山あるよ」

「でも、ダメなんだ……僕らの根源が人類そのものを求めてる。早く早くとせがむんだ!」

「そういう時は、お母さん達に甘えると良い。甘えればいいんだ、家族に」


博士が私達を見て球体を揺らす。微笑んでいる気がした。

私達が言葉もなく四人でミライを抱きしめると、ミライが恥ずかしそうに笑った。


「何、急に?」

「お兄ちゃん、寂しいのかーって思って」

「人間の身体はないけど、一応肉体はあるし、ハグしてみようかなって?」

「オススメされたし?」

「最近ハグしてないと思って?」

「ちょっと、人前で恥ずかしいからやめようよ?」


ミライの指摘に皆で「はーい」と解散する。クッソロエプロンさんが「家族って面白いねー」とのんびり呟くのが聞こえた。


「――おい」


突如聞こえた低い声に、恐怖を覚えながら振り向く。


「噂になっているヘンテコな姿の異星人は、お前らか?」


針の長い巨大ウニがいつの間にか博士の家に入ってきていた。

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