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一話 在り方(3)

銀色の巨大なドームが乱立する中をのんびり歩きながら、抱き枕とナメクジが「あっちはロズウェル星人」「あそこにはヌーン星人が住んでるよ」などと説明してくれる。


「三十種はいる?」

「もっといるよー。個体数が少ないのも含めると百三十二種はいるみたい」

「凄く多いね。生活全然違いそうなのに、よく喧嘩しないね」

「喧嘩や嫌がらせはあるぞ。さっきも見ただろ? でも、起きても片方、もしくは両方が追い出されるから長続きしないんだ」

「それはまぁ――」


――なんと合理的な文明なのだろうか。


「でも、逆に自分は何もしてないのに追い出される可能性もあるってこと……?」


朋里の質問に、抱き枕が「そうだよ」と頷く。


「そんなの酷いよ……」

「まぁ、酷いのは酷いな――だけど、それがこの惑星のルールなんだよ。判定する仕組みがいないから、悪い方は分からない。ただ単純に、嫌悪感などの負のパラメータの値のみが基準になる――良くも悪くもな」

「まあ自浄作用があるだけいいよね」

「あー……」


皆言葉を濁す。ナメクジの惑星が自浄作用のない行く末の一つであることに気がついたからだ。


「この仕組みのお陰で救われていることは結構あるが、いかんせん異星人同士の交流は少ないな。仲が悪くなると追い出される可能性が高くなるから」


先程から遠巻きに私達を見る異星人の様子の理由が分かった気がした。


「でも、あなた達は積極的じゃない?」

「俺とこいつは数少ない例外さ。この惑星にいることより、好奇心が勝ってる」

「あー、なるほど?」

「私とエンペルクは気が合うしね」

「クッソロエプロンが穏やかなのもあるな」


なんというか、二人とも有難い存在である。


「で、今向かってるのが、変わり者仲間のもう一人だ」


エンペルクさんはムカデのように脚をわさわさ動かしながら進む。


「アンダケスダカンポリーってやつなんだが、そいつは異文明の研究が趣味なんだ」

「じゃあ彼にとってここは楽園みたいなもんだね」

「そうなんだよなぁ……」


皆でワイワイと歩いていくと、アンダケスダカンポリーさんのお家らしき球体に辿り着いた。

クッソロエプロンさんもエンペルクさんが「おーい、いるか?」と球体に入っていくので、私達も恐る恐る続いた。


生暖かい銀色の膜を通り抜けると、中は意外と明るかった――と言いつつも、視覚などの五感は今の肉体にはない。あくまで霊体でも操作可能な物質で動き回っているだけなので、明るいと思っていても実際は明るくないのかもしれない。


「おやおや、初めて見るお客さんがいっぱいだね……」


嬉しそうな声に視線を向けると、エンペルクさんそっくりの脚が沢山生えた抱き枕がいた。

二人で並ばれるとどちらがエンペルクさんなのか分からなくなる。


「エンペルクさんと、同じ出身?」


優希が小首を傾げると、エンペルクさんは球体を横に振った。


「言っただろ、こいつは変わり者だって」

「どういうこと?」

「この惑星では好きな身体にできるから、身体が崩壊する度に異星人の身体にして楽しんでるんだ」

「相変わらずエンペルク君は歯に衣を着せてくれないねぇ……」


エンペルクさんは肩をすくめるように球体を少し上下に揺らす。


「私のことはどうでもいいのだよ、それより君達だ。どこから来たのか教えてくれないか?」


ミライが本日三度目の説明をしてくれる。


「なるほど……既に滅びてしまったのか……残念至極……」

「アンダケスダカンポリーさんはどうして異星人の研究をしているんですか?」


悟の言葉に彼はエンペルクさんを真似て出したであろう球体を楽しげに揺らす。


「趣味もあるが、ゆくゆくは惑星に文明を築かせて観察してみたいと思っていてね――ミライ君達のようにね」

「そんな簡単に一人でもできるんですか?」

「簡単ではないが、やり方さえ知っていれば可能だよ。ただ、君達の文明でいう『全知全能』の神というのまでは無理だがね――ミライ君達なら分かるだろ?」

「まぁ……うん。そうだね。ある程度の方向性だけ調節したり、死活問題をどうするか決めたりとかに留めるなら、比較的難しくはないかな……簡単でもないけど」


確かに考えてみれば直近でミライ達が意図的に干渉してきたのは、クラゲの殲滅と、おそらく私達の魂ぐらいなのではないだろうか?


――ミライ達はあまり、人類に干渉しないようにしてたもんね……。


「ミライ君達は何故、『人類』の形に拘るのかい?」

「それが僕達の追い求める物だからだよ」

「ふむ……見る限り人類の肉体はかなり不便そうだがね……」


博士――アンダケスダカンポリーは長いので、博士と呼ぶことにする。博士っぽいし――は観察するように私達を見回す。


「だよな、俺もそう思ってた。二本脚は転倒しやすくないか? 移動も難しそうだ。それに脳ってやつ、一番上が一番重要な機関になってるだろ? 胴体との接続部分が細すぎやしないか?」

「触手も二本じゃ不足しそうだねー」

「それに五感もよく分からないし、脳と心臓の損傷で肉体の致命傷になるのは欠陥じゃないか?」

「脚が一つ損なわれただけで、移動もまともにできなくなる感じだね」

「視覚って、恒星見たら致命傷になりそうだねー」

「睡眠も非効率過ぎじゃないか? しかも動けなくなるって、外敵に狙われる場合が考えられていない」

「肉体のエネルギー変換も非効率だよね。他の生物を捕食しないといけないなんて、グロテスクだよ」

「しかも捕食に必要な歯ってやつも、二回しか生えてこないんだろ? 二回目になくなったら捕食はどうなるんだ?」

「……ボロクソだね」


優希の呟きに思わず吹き出してしまった。

異星人からすると、人類の肉体はかなり改良点が多いらしい。

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