ファントム・ラビリンス
国の護衛部隊である騎士団は
少数精鋭の強者揃い。
元冒険者の生え抜きから
英才教育を受けた貴族まで
様々な人間が所属しているが
この国で最強の部隊として
絶対的強者の地位を確立していた。
騎士団の副隊長
リンダ・ローズマリーは
貴族の出身ながら上流貴族に嫁ぐのをやめ
数々の戦で武功をあげた
国でも有名な女騎士である。
今回の任務は新しく出来た
噂のダンジョンの視察。
冒険者達がまるで攻略できないと
騒ぎになっている高難易度ダンジョンらしい。
「副隊長見えました。
あれが例のダンジョンです」
「うむ。」
山の麓に大きく口を開いた形で
そのダンジョンは存在していた。
ダンジョンの攻略など、
駆け出しの頃に腕試しに挑戦して以来だ。
どれほどの魔物がいるのかと思えば
トラップだらけで進めないらしい。
第1層には魔物すらいないという。
ダンジョンというのは魔物の巣窟になっており、
魔物を倒すと落とすアイテムを売るのが
冒険者達の生業であり常識だ。
鉱石や魔石がメインだが、
宝石を持っている魔物なんかもいる。
冒険者に人気のダンジョンというのは基本
この落とすアイテムの価値が高い場所になる。
「魔物は出ませんが
宝箱がたまに現れるそうです」
人をおびき寄せる仕組みにはなっているようだ。
しかし
めちゃくちゃ冒険者が並んでるじゃないか......
30分ごとに1パーティ挑戦できるとのことで
現在3時間待ちだ。
「おい......騎士団まで来てるじゃねえか!」
「あれが噂のローズマリー副隊長か......」
くっ!優先的に入ることはできんのか!?
安全確保?のために制限を設けているとのこと。
なんだ、そんなダンジョン聞いたことないぞ!?
朝9時から受付開始で
遅くても16時には受付終了らしく
夜は入口が封鎖されるらしい。
管理している者がいる?どういうことだ?
そしてやっと順番が来た。
「ようこそワンダーランドへ♪」
可愛らしい受付嬢がお出迎え。
「騎士さんそんな重装備だと危ないよ〜♪
泳げないとぉ......死んじゃいますよ?」
攻略のヒントを出す不思議な受付嬢に入場料を払うと
リタイヤ用に転移魔道具を渡される。
どちらかというと、転移魔道具を1人1個買うと
入場の許可が出る?仕組みのようだ。
「何人まで同時に入れるのだ?」
「今は6人までですね〜♪ダンジョンが拡張されたら制限解除の可能性はありますけど〜♪」
今回の騎士団は5名。
「騎士団さんで今日の受付は終了でーす♪」
追い返される後ろに並んでた冒険者たち。
次回割引券のようなものを渡されて
渋々帰っていく......。
「ではいってらっしゃいませ〜♪」
パーティを分断させられる罠があるとのことで
今回の騎士団の作戦は全員がっちり固まっての
ダンジョン攻略という作戦だった。
騎士団の実力はさすがのもので
罠を的確に回避したり耐え凌いだりしていく。
「ルーちゃん!すごい!この騎士さん達
第1層クリアだよ!」
「おお〜♪最近は1日1組くらい
第2層にたどり着くようになってきたね〜♪」
【第1層クリアおめでとう♪
第2層はファントム・ラビリンスです!
いってらっしゃいませ〜♪】
謎のアナウンスにビビる騎士団達。
しかし謎の粘液まみれになってしまったことへの
対応でそれどころではないのだ。
「この粘液は気持ち悪いが、
日頃の鍛錬により
心身ともに鍛え上げた我々は
この程度の罠では屈しない!
先へ進むぞ!」
「はい!副隊長!!」
1人だけ落下に耐えかねて転移魔道具を使った騎士がいたが4人はクリア。おめでとうぱちぱち☆
暗いジメジメした細い道。
時おり何やら変な物音が聞こえてくる。
ひゅーどろどろ......
なんの音だ?
コツン。コツン。
なんだか足音が1人分多い気がする。
ひひひ......
「うわ!誰だ!?」
耳元で囁く何か声のようなものが聞こえて
騎士団は混乱する。
「......間違いなく精神攻撃だ!
全員気をしっかりもて!」
副隊長が、そう言った次の瞬間
「きゃぁぁぁーーー!!!」
「うわぁぁぁ!なんだ!?」
突然女性の悲鳴が鳴り響く。
騎士の目の前に青白い人の顔が浮かび上がる
「出たーーーー!!!!」
一目散に逃げ出す騎士。
「ばかもの!離れるな!」
恐怖に負けて逃げ出した騎士はそのまま落とし穴に見事に吸い込まれていった。
「ああああぁぁ......!!」
「ち!バカが!転移魔道具を使えー!!」
副隊長の声が聞こえたかはわからないが
はぐれて1人になってしまったら
リタイヤするように指示はしてある。
「進むぞ!」
第1層で浴びた粘液のせいで
歩きにくく何やら寒い。
「幻覚を見せる魔法というものがある。
恐らくその類いだ。全員意識をしっかり保て!」
「いや、副隊長......なんですかその顔は!」
「は?なんだ?」
騎士の1人の目の前に現れたのは
副隊長が白目を向いたおぞましい顔。
そしてそのまま口は裂け
恐ろしい形相で甲高く笑い出す
「キャキャキャキャキャ......!!!」
「うわぁぁぁ!!」
「幻覚を見せると言ったろう!?騙されるな!」
泡を吹いて倒れる騎士。
ダメだ......
仕方ない。
転移させよう。
残り2人になった騎士団。
「くそ、目的はクリアではない視察だ。
いけるだけ進むぞ!」
「はい!副隊長!」
扉をあけて進むとそこは
全面ガラス張りの迷路になっていた。
「な、なんだこれは」「うわぁ」
自分の姿が何十人も映し出されている。
壁が全てガラスだ。手探りで慎重に進んでいく。
「離れるなよ!」
「はい!」
ゴツン!
頭をガラスにぶつけてしまう。
なんて嫌なダンジョンだ。
歩くだけでこんな疲労するのは初めてだ。
「副隊長!魔物です!!」
現れたのはスライム。
なんてことはない初級の魔物。
しかし
ガラスに映し出されたそのスライムは
何十体と視界に入ってくる。
実際にはこのスライムは1匹しかいない。
このガラス張りの迷宮の中では
正確な位置と数が全く把握出来ないのだ。
こんな状態で襲われたらひとたまりも無い。
「うわぁぁぁ!!」
剣を振り回す騎士。
ガシャアァアン!!!
ガラスが割れるとその一部だけは
姿が映されなくなる。
壁のガラスを破壊するしかないのか?
暴れて剣を振り回す騎士。
「落ち着け!」
副隊長の声も届かないのか
その騎士は剣を振り回し暴れ続ける。
【......壁を傷つけないでね〜♪】
は?
壁から何やら声が聞こえた。次の瞬間
どごおおおん!!
壁が爆発
「うわぁぁぁ!!」
爆風で吹っ飛ばされた騎士の目の前には
何十体ものスライムが覆い被さる。
「ギャァァァ!!」
「1匹だけだ!惑わされるな!!」
時すでに遅し。騎士はあえなく気を失う。
ただ上をのんびり通り過ぎて行っただけの
スライム1匹にやられてしまった騎士。
「......く!......ここまでか......」
1人になってしまっては何かあったら終わり。
ローズマリー副隊長は
ここで無念の転移魔道具を使うことになる。
「おかえりなさい〜♪」
ダンジョンの入口で5人の騎士団は無事再会。
「副隊長!申し訳ございません!」
「......撤退だ!帰ったら報告書をまとめるぞ!」
「はい!」
「......こんな屈辱は初めてだ!くそ!」
顔を赤らめて心底悔しそうにするローズマリー副隊長。
「またのチャレンジお待ちしてま〜す♪」
ニコニコと手を振る受付嬢を尻目に
騎士団はフラフラと城へ帰還する。
「ルーちゃんお疲れ様〜」
「メグミ〜今日も大盛況〜♪」
仲良く抱き合う二人。
「第2層も、少しずつ手を入れていこうか〜」
「お化けもっと怖くしたいね〜♪」
「ねぇ気づいてた?あの女騎士の隊長さん」
「どうしたの?」
「冷静なフリしてたけどさ!
......めっちゃ、おしっこちびってたよ!」
「うひゃー♪」
「あはは♪」
ダンジョンの入口を封鎖して
二人はそのまま街へ出かけてしまう。
「今日も呑むぞ〜」
「わーいやったやった〜♪」
どうやらこの二人......夜になると変装して
街の酒場で呑んだくれているらしい......
騎士団でも攻略不可!
その最強のダンジョンの噂は
瞬く間に国中に広がっていくことになる......。
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