ワンダフルナイトパレード
ヒーリングワンダースパを堪能した一行は
ついに第5層の扉の前に立つ。
全員の表情が引き締まる。
「......行くぞ」
ローランドが扉を押し開ける。
【ワンダフルナイトパレードへようこそ♪】
扉を開けた先は——完全な暗闇。
「......暗い」
次の瞬間。
ぱっと広がる満天の星空。
「......!」
ダンジョンの天井に広がる夜空。
流れ星が走る。月が輝く。
「きれい......」
全員が息をのむ。
「ルーちゃん!スタートよ!」
「はーい♪」
どこからか
楽しいお祭りの音楽が流れてくる。
♪ ♪ ♪
「なんですの......これは......」
「夢......ですか......?」
遠くから光の粒が近づいてくる。
カラフルに光を纏ったマスコット達が
ゆっくりと練り歩いてくる。
丸くて愛らしいスライムのマスコット。
ふわふわした羽を持つ妖精のマスコット。
きらきらと輝くドラゴンの子供のマスコット。
みんな楽しそうに踊りながら
音楽に合わせてステップを踏んでいる。
「わぁ......!」
リゼが思わず手を叩く。
「かわいい......!」
エミリアがペンを握ったまま固まっている。
「......これを......記事に......どう書けばいいの......」
モルガンが眼鏡を押し上げながら
呆然と眺めている。
「......ダンジョンとは......
いったいなんなのですか......」
ローランドとバーディーは
無言で立ち尽くしている。
クラリスは言葉を失って
ただ空を見上げていた。
花火が上がり始める。
どーん!!ぱらぱら......
夜空に大きな光の華が咲く。
どーん!!どーん!!
ぱらぱら......
ぱらぱら......
次々と打ち上がる花火。
赤、青、金、緑。
「......綺麗」
クラリスの目に涙が浮かぶ。
お父様とお母様と
一緒に見たかった。
「......お父様......お母様......
こんなに綺麗な景色が......
あったんですね......」
「ルーちゃん!次のイベントよ!」
「はーい♪」
【緊急〜♪臨時アナウンスで〜す♪
ただいま第5層で
魔物の異常発生を確認しました♪
パレードを一時中断しま〜す♪
繰り返しま〜す♪
魔物が来てまーす♪】
「......え?」
マスコット達が突然止まる。
音楽が止まる。
「......なんですの?」
次の瞬間。
地面が揺れる。
どどどどど......!!
「な......!?」
足元から無数のスライムが湧き出てくる。
本物のスライムだ。
「魔物だ!!」
ローランドが剣を抜く。
しかし。
どごおおおん!!
花火が連続で炸裂し始める。
「爆裂魔法!?」
違う。花火だ。
でも爆発音は本物の魔法と区別がつかない。
どごおおおん!!どごおおおん!!
さらに。
夜空に幻覚が広がる。
何百、何千もの魔物の大群。
空を埋め尽くすワイバーン。
地を揺らす巨大な足音。
どどどどど......!!
「......な......」
地平線の向こうから
巨大な影が現れる。
「......あれは......」
全員が息をのむ。
巨大な四つ足の獣。
山のような体躯。
光る赤い目。
「ベヒーモス......!!」
伝説級の魔獣。
一国を滅ぼすと言われる存在。
「さらにあれは......」
夜空に翼が広がる。
「ドラゴン......!!」
何十頭ものドラゴンが
夜空を埋め尽くす。
幻覚だ。
でも今の一行には
それが幻覚だとわかる余裕はない。
足元の本物のスライムが這いずり回り
頭上には幻覚のドラゴンが舞い
耳元では花火が爆発し続ける。
「はぁ......はぁ......はぁっ......!!」
クラリスの頭に蘇る記憶があった。
5年前。
魔王軍が城を堕とした夜。
爆発する城壁。
逃げ惑う人々。
魔物の大群が城へ押し寄せる。
「......っ」
どごおおおん!!
また花火が炸裂する。
赤く光る無数の目。
終わらない爆発音。
押し寄せてくる魔物の群れ。
「......お父様......お母様......」
ガタガタ震えるクラリス。
「......お嬢様!?」
リゼの声が遠くに聞こえる。
あの夜と同じだ。
「......いや......」
「クラリス様!お気を確かに!!」
「......いやぁぁぁ!!!!」
ひゅんーーー
リゼがクラリスとともに
転移魔道具を無理矢理使う。
それを見て全員が続く。
ひゅんーーー
ひゅんーーー
ひゅんーーー
「こんな魔物が外に溢れたら......!
5年前の地獄の再来だ!!」
最後にローランドが叫びながら
スライムを一匹蹴り飛ばし
転移魔道具を使った。
ひゅんーーー
「おかえり〜♪」
全員ぐったりした顔で戻ってくる。
「......」
「......」
「......なんですの......あれは......」
「スタンピード......」
「......ベヒーモス......古の魔獣ですよね......?」
「......たぶん」
「......お嬢様......」
リゼがクラリスに寄り添う。
「......大丈夫ですわ」
震える声でそう言うクラリスは
全然大丈夫ではなかった。
「5年前の魔王軍のスタンピードに
あまりにも似ていて......」
「......」
全員が黙る。
ヴェルハイム伯爵家があの夜に何を失ったかを
みんなが知っていた。
「......ごめんなさい......ワタクシ
足を引っ張りましたわ......」
「そんなことない」
ローランドがきっぱりと言う。
「クラリス嬢は何も悪くない」
「......ローランド様......」
ルーちゃんは入口であっけらかんと言う。
「5層から魔物が出ないように
結界張ったのでご安心くださ〜い♪」
「あんなのが外に出たら国は滅ぶぞ......」
「......ええ」
クラリスがゆっくり頷く。
「またのチャレンジお待ちしてま〜す♪」
ルーちゃんがにこにこと見送る。
「......必ずリベンジしますわ......」
悔しそうに帰っていく一行。
「メグミどうだった〜♪
メグミの頭の中のイメージ通りに出来たかな?」
「ばっちりよ〜!少しやりすぎたかもくらい!」
「パレードの演出......一応メグミの記憶を
再現したけど、初披露だったから♪」
「大丈夫だったよ!
こういうテーマパークが前世であってね?
もろパクリなんだけどどうせこの世界の人には
バレないでしょ......って感じで」
「......うんうん♪」
ルーちゃんがじっとメグミを見る。
「......なに?」
「......メグミってほんとうに楽しそうよね♪
ダンジョン作ってる時」
「......そりゃあ」
メグミは少しだけ笑う。
「前世では行けなかったからね。
せめて自分で作ってやろうって」
「......そっか♪」
「......ルーちゃんはどう?
受付嬢、楽しい?」
「......楽しいよ♪みんな喜んでくれるし♪
メグミがいるし♪」
「......よかった」
数日後ーーー
第4層ヒーリングワンダースパの噂は
あっという間に国中に広がった。
王都貴族地区。
「ねぇ聞いて!
あの最強ダンジョンの第4層に
とんでもないエステがあるらしいのよ!!」
国中の貴族婦人達の話題は
ワンダースパの噂で持ち切り。
「全身つるつるになるし
疲れは全部吹き飛ぶし
肌はぴかぴかになるし!!」
「......クラリス伯爵令嬢......
なんですのこの潤いすべすべお肌は......
これがまさかあの例のダンジョンで......!?」
「そうなのですわ!!」
友人達がクラリスの肌をまじまじと見る。
「......本当に綺麗......」
「あれはもはや楽園でしてよ!!」
さらにエミリアの最新冒険譚が国中に出回る。
【ワンダーランド第4層体験記——
この世界に革命が起きた。
そして第5層は地獄だった】
「......エミリアさんの肌が
とんでもないことになってるらしいぞ!?」
「記事読んだ!?すごくない!?」
「行きたい......!!」
「でもあの最強ダンジョンよ?
私たちには無理じゃ......」
「国やギルドから腕利きの
護衛を雇えばいいんじゃないかしら!?」
「護衛......!?」
「第4層まで連れて行ってもらえたら
相当額の謝礼を出せばいいのよ!!」
「名案ですわ!!」
「すぐ手配しましょう!」
こうして国に新たな需要が生まれた。
貴族婦人達の間で
護衛を雇ってダンジョンへ行くという
前代未聞の文化が生まれ始めた。
そしてその依頼は
やがて国の騎士団にまで。
ローズマリー副隊長の耳にも
届くことになる——。
こうしてさらに
ワンダーランドは爆発的な
大人気ダンジョンへと成長していく。
——ようこそワンダーランドへ♪
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
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