アスレチック・オン・ザ・マッスル
魔法が使えない。
魔法使いとして生きてきた者にとって
これほどの絶望はない。
「......信じられませんわ」
「俺も魔法なしはきついな......」
ローランドもローランドで
剣技に加えて風魔法を剣に付与する
魔法剣士というスタイル。
剣から斬撃を飛ばすというのが
ローランドの強みなのであるが
まぁ、このダンジョンではたいした
役には立たないのは周知の事実。
「なんて嫌なダンジョンだ......!」
「でも......」
バッシュが前に出る。
「......ここからは」
ゆっくりとポーズをきめる。
「俺の出番ですね」
「......バッシュ?」
「クラリス様。私にお任せを」
クラリスは思い出す。
これまでのバッシュを。
第1層で真っ先にリタイヤ。
第2層でお化けに発狂してリタイヤ。
主を守るはずが毎回一番最初に消えていく護衛。
「......正直、全然頼りないので不安ですが......」
「お嬢様、それは正直すぎます」
モルガンが小声で言う。
「それでも......行きますわよ!バッシュ!」
「はい!!」
第3層に足を踏み入れると
広大なアスレチックエリアが広がっていた。
「......なんですのこれは」
高くそびえ立つ壁。
宙に浮かぶ足場。
ぐるぐると回転する円柱。
空中にぶら下がる鎖。
「まるで......修行場ですな」
モルガンが感心したように呟く。
「修行場どころじゃないわよ......」
最初の仕掛けは回転する円柱。
足場の上に乗ると
円柱がゆっくり回り出す。
「バランスを崩したら落ちますわね......」
「行きます!」
バッシュが真っ先に乗り込む。
円柱が回転し始める。
「......っ!」
重心を低く落として
円柱の回転に合わせて足を動かすバッシュ。
「すご......!」
リゼが思わず声を上げる。
「騎士団時代に
不整地での訓練は
散々やりましたので!」
次々と円柱を渡り切るバッシュ。
「みなさんどうぞ!手を貸します!」
バッシュに引っ張られながら
なんとか渡り切る一行。
「......元騎士か、やるな」
ローランドが素直に呟く。
次の仕掛けは空中ブランコ。
天井から無数の鎖がぶら下がっている。
下には毒の沼。
「これは......飛び移るしかないですわね」
「バーディー」
ローランドが相棒を見る。
「任せろ」
バーディーが真っ先に鎖を掴む。
その腕力で鎖を手繰り寄せながら
次の鎖へ飛び移る。
「うおおおお!!」
豪快に渡り切るバーディー。
「......さすがですな」
モルガンが静かに感嘆する。
「次!」
バーディーが鎖を手前に引き寄せ
一行へ渡す。
「掴まれ!離すなよ!」
「ひぃぃ......!」
リゼが目をつぶりながら渡る。
「下を見るな!前だけ見ろ!」
「は、はい!!」
クラリスも歯を食いしばって渡り切る。
「......やりましたわ!」
「まだまだいくぞ!」
高くそびえ立つ壁。
突起を掴んで登るボルダリングエリア。
「魔法で飛べれば一瞬なのに......!」
クラリスが悔しそうに壁を見上げる。
「お嬢様、ここは私が」
バッシュが背中をむける。
その背中は広く
筋肉は鎧の上からでもわかるほど。
「クラリス様、背中に掴まってください」
「......え?」
「運びます」
「......ちょ!?」
有無を言わさずクラリスを背負ったバッシュは
そのまま壁を登り始める。
「うそ!?人を背負って登るんですの!?」
「騎士団時代に負傷した仲間を運んで
城壁を登ったことがあります」
「......バッシュ」
「これくらいは朝飯前ですよクラリス様!」
バーディーもローランドを背負って登る。
「......なんか複雑な気分だな」
「黙って掴まってろ」
モルガンとエミリアとリゼと次々と
バッシュとバーディーに担がれて
力を合わせてよじ登る。
「ぜぇ......はぁ......」
全員が壁の上に立つ。
「......バッシュ、お見事ですわ!」
「お役に立てて光栄ですクラリス様!!」
誇らしそうに胸を張るバッシュ。
最後の仕掛け。
浮遊する石の足場。
横から槍が飛び出してくる。
「タイミングを見極めながら
渡るしかありませんわね......」
槍の間隔を観察するクラリス。
「......3秒に1回ですわ」
「3秒か......」
「私が盾で槍を受け止めます!
その間に渡ってください!」
バッシュが大盾を構える。
ガキン!!
ガキン!!
「今です!走れ!!」
「「「はい!!」」」
一気に走り抜ける一行!
バーディーが最後尾でバッシュの盾を補強する。
「押さえろ!!」
「おうっ!!」
ガガガガガ......!!
2人の盾役が全ての槍を受け止める。
「渡り切りました!!」
扉が現れる。
全員が扉の前に集まる。
「......行くぞ!」
ローランドが扉を押し開ける。
【第3層クリアおめでとう♪
第4層はヒーリングワンダースパ♪
お疲れの体を癒してくださいね〜♪】
「やったァァ!!」
「クリアしましたわ!!」
「バッシュ!!」
クラリスが振り返る。
「......今日のバッシュは
頼りになりましたわよ!!」
バッシュをぎゅっと抱きしめるクラリス嬢。
「ク......クラリス様!?」
「よくやりましたわ......バッシュ」
バッシュの目に光るものが......
「......クラリス様ぁぁぁ!!」
「な!?泣くんですの!?」
「うれしくて......!」
「情緒が不安定すぎますわよ!!」
バーディーがバッシュの肩を叩く。
「......よくやった」
「......ありがとうございます
バーディー殿......!」
屈強な男二人が
無言で頷き合う。
「ヒーリング......ワンダースパ......?」
「なんですのこれは......」
目の前に並ぶカプセル型の個室。
「回復ゾーン......?」
「ダンジョンに......回復ゾーン......?」
全員が首をかしげながら
カプセルを覗き込む。
「......入ってみますか?」
「......入りましょうか」
「すごいね!全員でクリア♪」
「護衛兵さんダメダメだったの巻き返したね〜」
「うんうん♪完全にバッシュ回だったね♪」
「第4層......みんな喜んでくれるかな〜?」
「絶対喜んでくれるよ♪にしし♪」
ついに成し遂げた初の第3層クリアは
ローランド達とクラリス一行の
混合パーティだった......。
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