小屋があった
俺と従魔は引き続き北の道を進むことになった。ただ打ち合わせでも確認したけど急いでいない。後続組はまだ来ていない。つまりいつも通りの活動をすればいいってことだよ。
午前中の自宅での作業を終え、霧の街に飛んだ俺達はコテージから市内を歩いて北門に向かう。まだプレイヤーがほとんどいない街の中は歩きやすい。歩いているのはNPCとクランメンバーだけだ。
知り合いと挨拶をしながら北門から出た俺たちは土の道に沿って進み出した。街の周辺のジャングルモンキーやフォレストジャガーを倒しながら北に進んでいくと緑と茶色のオークが徘徊しているエリアに入った。ここから攻略の難易度が上がる。霧の中から魔法や矢と言った遠隔攻撃をしてくるオークが厄介なんだよ。ただ、幸いに俺たちには関係ない。タロウとリンネには好きに戦闘してもいいと言っているのでこ彼らが敵を見つけてはガンガン攻撃をするんだよ。
リンネがジャングルの中に向かって魔法を撃ったと思ったら次の瞬間にはタロウがそいつを蹴っ飛ばして光の粒に変える。道の左右のジャングルとか視界が悪いとか関係なく片っ端からやっつけるので俺とクルミは応援するだけだ。たまにリンクすると俺も刀を振って倒しているけど圧倒的にタロウとリンネが倒しているよ。倒すと不規則だけど印章や神魂石が端末に入ってくる。
片っ端から緑と茶色のオークを倒しながら進んでいくこと4時間弱。霧の中、道沿いに平屋の小屋が見えてきた。小屋の周辺にいるオークのレベルは178に上がっている。小屋の周囲はジャングルだ。柵もなければ広場すらない。あれがリヨンさんが言っていた小屋だろう。近づくと小さいがしっかりとした作りになっているよ。
「主、お家があるのです。中にはいるのです」
「そうしよう。タロウ、周囲に敵はいるか?」
「ガウ」
「いないのです。今がチャンスなのです」
小屋のドアを開けると中はがらんとしているんだけど部屋の隅に転送盤があって光っている。
「ここにビューンと飛べるのがあるのです」
「うん、乗ってみよう」
『霧の街に飛びますか?』
というウインドウが現れた。その下に『はい』と『いいえ』がある。
端末を見るとここは”ジャングルの北の小屋”という名称だ。
「ここは元気になる場所じゃないよな」
転送盤から離れた俺は床に腰を下ろしている3体を見て言った。
「はいなのです。ここは雨宿りをする場所なのです」
「そうだな。雨が降ってきても大丈夫な場所だ」
俺が小屋の床に腰を下ろすとすぐにタロウが寄ってきて俺の背中の後ろに座った。
「タロウ、いつも悪いな」
「ガウ」
タロウの背枕で座って足を広げると足の間にリンネが入ってきて顔を太ももに置き、クルミはお腹の上に乗ってきた。従魔達がいつもの場所に腰を下ろしたところで俺が言った。
「ちょっと頭の中を整理するよ」
「主はシンキングタイムなのです」
リンネは最近英語づいてるな。
それはいいとして、俺がレストランのリヨンさんから聞いた話の通り、道沿いに小屋があった。道はまだまだ先に伸びていてすぐには到着できない。なのでまずはここまで来て転送盤を登録し、ここからさらに道の奥の探索をしろということだ。霧の街からここまでは戦闘をしながら4時間弱かかっている。道がもっと続いているとしたら毎回街から道を歩いて移動するのは面倒だ。今までのエリアでも途中でセーフゾーンか転送盤があった。
ここはまだ中間点で、ワープを登録して、次からの攻略をショートカットする目的の小屋だとなると、ここから道の先、終点かどうかは知らないが、とにかく道が続いている先まではあと4、5時間かかるということになる。
考えごとをしながら無意識にお腹に乗っているクルミの背中を撫でていた俺。ふと目を下にやるとクルミが目を閉じてゆっくりと尻尾を振っているよ。完全にリラックスしているな。
俺はタロウの背枕のままで道沿いの小屋を見つけたとメッセージを4人に送った。
送り終わると立ち上がる。
「あの転送盤は霧の街に続いている。一旦街に戻ろうか」
「はいなのです」
転送盤に乗って飛んだ先はプレイヤーズギルドだった。そこから出るとギルドのホールに攻略クランのパーティがいてテーブルに座っていた。タロウを見つけたマリアがすっ飛んできた。
「いいタイミングだった。少し前に戻って来たところだったんだよ。皆にタクのメッセージの内容を説明していたところだったんだ」
スタンリーが言った。俺は彼らの隣のテーブルに座った。
「残念ながら俺たちはまだ街から4時間のエリアまで行けてないんだ。2種類のオークの対応に追われていてね。なので奥に進まずに経験値を稼いでいるんだよ」
彼らは東門から伸びている道を探索している。ジャガーと猿のエリアからオークエリアに入ると最初に相手をするのは物理主体のブラウンオークだ。今はそれを相手にして経験値を稼いでいるのだと教えてくれた。
話をしていると俺とスタンリーとマリアの端末が鳴った。クラリアからで今から霧の街に戻るという。マリアがギルドにいると返事を入れると、しばらくしてギルドの転送盤に情報クランの連中が現れた。
「お疲れ様」
「皆ここにいたんだ」
「まだ他のプレイヤーもいないし、打ち合わせにはいいんじゃない?」
「そうだよな」
そんな話をして10名と俺たちがギルドのホール内にあるテーブルに適当に座る。貸切なのでどこに座っても誰にも迷惑をかけない。
情報クランもまだ街から4時間程度の移動は出来ていなくて攻略クランと同じで経験値を稼いでいるところだという。打ち合わせをしなくてもトップクランになると自分たちの力量に合わせた行動が似てくるんだよな。両クランとも今倒している敵のレベルは176から177だそうだ。
俺のメッセージは2つのクランメンバーにも転送されていたらしく、早速打ち合わせが始まった。
まずはメッセージを送った俺がもう一度話をする。
「敵を倒しながら道を進んで4時間程。道沿いに小屋があって、その小屋は”ジャングルの北の小屋”という名前が付いている。小屋の周辺の敵のレベルは178。緑と茶色のオークで変化はない。小屋の中はそんなに大きくなくて、どうだろう。このギルドーホールの半分あるかないかくらい。小屋の外側、周囲に柵もない。すぐそばまでジャングルの木が生えている。セーフゾーンではない。小屋の中には転送盤があるだけ。殺風景だよ」
「ありがとう。間違いなくその小屋がレストランのNPCから聞いていた小屋よね。」
「そうなるね。道がまだ先に続いていることと、小屋があった場所が霧の街から4時間の距離だということから、小屋がある場所が大体ルートの中間地点になるんじゃないかな」
「あとは、メッセージにも書いたけど俺が見つけて小屋の名称がジャングルの北の小屋という名前だった。普通に考えたら西の小屋、東の小屋がありそうだよな」
俺が言うとその可能性は高いなというメンバー。
探索についてはジャングルが深い上に霧がかかっていて遠くが全く見えないのでエリアの端が分からない。これは結構心理的に圧がかかってくるよなと皆が言っている。あの目標まで頑張ろうという目印が見えないんだよ。
攻略クランと情報クランはまずは今調べている道をレベルを上げながら進んでいくことになった。まずはそれぞれの道で小屋を見つける。
俺たちは小屋から先を探索する。
「レベル上げをしながらのんびりやりましょう」
「そうしよう」




