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テイマー忍者 〜ソロ忍者は従魔と共に駆け回る〜  作者: 花屋敷


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鹿せんべい

 開始と同時にパラディン4人が一斉にヘイトを稼ぐ。その間に前衛部隊と神官部隊がボスの左右に展開。遠隔攻撃部隊が岩を登って位置どりができると頭を狙って攻撃を開始する。ヘイトは無視して魔法を撃つが、魔力管理はそれぞれの魔法使いでやってもらう。神官はパラディンが攻撃を受けとめている時はパラディンのフォロー。タゲが遠隔部隊に移った時にしっかりと魔力の補充をする。連続してヒールをしないことでヘイトを稼がない。


 前衛がタイミングを合わせて剣を振るい、その直後に魔法を撃つ。前衛はヒットアンドアウェイで剣を振ったらすぐにボスから離れる。


 狂騒状態のボスの動きは読めないが、それまで前衛は左右から足を狙って攻撃することになった。


 俺と従魔達はやることが変わらない。タロウとリンネは敵対心が低いので最初から全力で攻撃する。クルミは戦闘前にパラディンに魔法壁の魔法を入れ、戦闘が始まるとボスにスロウの魔法を入れる。その後はリキャストごとに上書きだ。やることが変わらないのがいいよ。


 従魔達に言うと任せておけと強いリアクションが返ってきた。


「明日は強い敵をぶっ倒して一番乗りなのです」


 頭の上に乗っているリンネ言うと皆から頼むぞと声をかけられている。確かに勝ったら一番乗りだ。


「それにしても壁を登って岩の上から攻撃するという発想はなかったぞ」


 スタンリーが言うと皆そうそうとか、よく気がついたなとか言っている。


「今までは凹凸がある壁じゃなかったじゃない、土の壁やあるいは闘技場みたいになってただろう?あれっと思ったのと同時に2時間という時間制限、これを考えたら今までのやり方じゃない別のやり方があるはずだと思ったんだ」


「でもタクの言う通りかも。普通なら2時間と聞いたらボスが弱めなんだとか思ちゃうけど、戦闘のやり方を工夫すれば今までと同じ強さのボスでも2時間で倒せるよという事だったのね」


 神官のルミが言っている。



 打ち合わせが終わったタイミングで情報クランと攻略クランからクラリアとマリアの2人がNM戦のフィールドに飛んだ。


 その間他のメンバーは俺の庭で雑談をしている。


「おそらくタクはボス戦の攻略方法の正解を引き当てたんじゃないかと思う。スクショを見て俺が現地を見た時の風景を思い出したけど、タクが言っている場所は4メートル以上の高さがある。ボスが壁を登らない限り角の攻撃は届かない。と同時にボスは遠隔攻撃の手段を持っていないんじゃないかなと思った」


 スタンリーが言った。2時間の時間制限の意味をよく考えた結論だという。


「魔法部隊だけで倒せるんじゃないの?」


「いや、戦闘開始時に魔法部隊が攻撃を喰らうとまずいよ、やっぱりパラディンは必要だ」


「あと狂騒状態がどうかだよね」


 そんな話をしていると2人が戻ってきた。


「タクの言った通りね。3箇所ほど上に登れそう。あそこならボスの攻撃は届かないわ」


「作戦が決まったな。明日は倒すぞ」


「「おー!!」



 翌日、セーフゾーンから再びエリアボスがいるメサまで移動した俺たち。そのままフィールドの近くまで飛んで最後の打ち合わせをした。


「今回は最初から飛ばすぞ」


 スタンリーが言った。


「タロウとリンネもぶっとばすのです」


「うん、頼むぞ」


 ここからはパラディンと俺が一緒に先頭を歩く。左に曲がってボスの姿が見えてきた。そのまま進むとボスが頭を下げ、ツノを突き出して突進してきた。クルミのスロウの魔法がボスに命中した。


「戦闘開始」


 その言葉で遠隔攻撃部隊が岩を登って上の平らな部分に移動する。その間に盾に強烈な突きが入った。なんとか耐えているパラディン達。


「行くわよ」


 マリアの大きな声が聞こえた。岩の上に陣取った5人の魔法使いと1人のハンター、合計6名が遠隔攻撃を開始した。魔法使いも最初から大きな魔法を撃つ。


 魔法を2、3発撃ったタイミングでボスが向きを変えて崖の上の魔法使いを攻撃しようとして槍の様な角を突き出すが届かない。


「いいぞ、ここまでは作戦通りだ」


 下から登ってこないとわかったのでさらに魔法を撃つ。うちのリンネも岩の上に上がるとそこから強烈な魔法を連続して撃つ。


 パラディンは自分たちからタゲが離れると持っている片手剣で左右から足を狙って切りつける。ボスの後ろ足の蹴りの威力が分からないので背後には立たない。


「魔力量に気をつけて」


 マリアの声が飛んだ。攻撃の範囲外だからと好き勝手に魔法を撃って魔力量がなくなったら後半苦しくなる。ここにいる連中は皆トップクラスだけどそれでも声を出し合って確認し合う。これが大切なんだよな。


 ウォリアーやマスターモンクは左右から足に剣や拳を振るっている中、タロウはボスの後ろ足を集中的に攻撃している。前衛陣は攻撃するとすぐに後ろに下がっている。ボスが顔をむけるとまた魔法が命中して岩場の方を向くボス。ここまでは作戦通りだ。


 クルミがスロウを撃った。2回目だから20分経過したことになる。


 時々ボスが向きを変え、パラディンに槍の角を突き出してくる。それを盾でしっかりと食い止めてまた攻撃する。


 タゲは魔法使いとパラディンの交互が取り合う形で安定してきた。パラディンの連中は常に準備をしているのだろう。顔を動かして角を突き出してきても慌てずにしっかり対応しているよ。


 今の所俺にはタゲがこない。最初に分身を4体出したがそのままだ。急に攻撃されても蝉で躱せると思っているので思い切って近づいて後ろ足の太ももに刀を振る。


 体力は減っているはずだがボスの動きに変化はない。


 魔法使い部隊は魔力量を計算しながら間隔を開けて魔法を撃っているが九尾狐のリンネは別だ。開幕から強い魔法を連続してボスの顔に命中させている。


「リンネ、大丈夫か」


「任せるのです。でかい鹿さんを鹿せんべいにしてやるのです」


 いや、それは違うぞ、鹿せんべいは鹿の好物なんだよ。鹿がせんべいになるんじゃない。そう思うがリンネがその気で頑張っているのなら水を差すことは言わない方がいいだろう。


「美味しいせんべいになるのです」


 なんて言って強烈な火の魔法を撃っている。


「そろそろ準備して」


 クラリアの声が飛んだ。時間的に狂騒状態が近いってことだな。俺は分身が4体ある。うん、問題ないぞ。


 クラリアが叫んでから15分後、クルミがスロウの魔法を撃った直後、ボスの挙動が変わった。スタンプだっけか、四つ足で地面を叩いて威嚇してきた。スタンプをしながらその場で向きを変えると一番近くにいたパラディンのジャックスに槍の角を突き出してきた。狂騒状態だ。


 ニックが近づくとボスはニックに角を突き出してくる。2人とも盾で受け止めてはいるが、ボスは連続して角を突き出してきて、それを受け止める度に身体が後ろに押されている。遠隔攻撃部隊は今度はボスのお尻に魔法を打ち始める。


 タロウが岩壁を駆け上がってジャンプし、そのままボスの背中側から首の後ろに噛み付いた。ボスは振り払おうとするがタロウはしっかり首根っこを噛んでいて離さない。前衛陣が一斉にボスの顔に武器を突き出して攻撃する。魔法部隊もボスのお尻や足に魔法を撃った。


 タロウが首に噛み付き、全員で攻撃を続けているとエリアボスがその場で横に倒れ込んだ。剣や刀がその身体に向かって振り下ろされるとボスが光の粒になって消えた。


「よっしゃー」


「勝ったぞ」


 ボスが消えて勝鬨を上げる俺たち。タロウは消えたボスから俺のところに来ると尻尾を振りながら身体をグイグイと押し付けてくる。


「タロウ、ナイスだぞ」


「ガウガウ」


「タロウは主の為に頑張ったと言っているのです」


「うん、タロウもリンネもクルミも皆よくやった」


 しっかり撫でてやるよ。


「戦闘時間は1時間42分だったわ」


「岩場の上からの遠隔攻撃が有効だった。あれをしないともっと時間がかかるし、パラディンが耐えられなかったかもな」


 トミーが言っている。


「それは言えるぞ。角を突き出してくる威力はすごかった」


 戦闘が終わって皆が言っている。俺は自分が立てた作戦でボスを倒せたことで満足だよ。


「タクの作戦が攻略法として正しいことが証明されたな」


 スタンリーが言うと周りもその通りだったよ、と言っている。


「とりあえずよかったよ。他にもやり方があるのかもしれないけど、これで勝てるってことが分かったからね」


「そろそろ移動しようか」


 ボスが倒れたあと、広場の周囲の壁の一部が崩れて奥に通路が現れていた。俺たちがその通路に入ると奥に転送盤があった。




『ワールドアナウンスです。新エリアが開放されました』


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