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テイマー忍者 〜ソロ忍者は従魔と共に駆け回る〜  作者: 花屋敷


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全滅

 次の日、自宅で畑仕事と工房で焼き物作りをした俺たちはオアシスの街経由で北のセーフゾーンに飛んだ。時刻は1時前だったが既に2パーティほどが集まっていた。


「今日はよろしく」


「こちらこそ」


 挨拶を交わしてセーフゾーンで待っていると少し遅れてメンバーが転移し、全員が揃った。その場でアライアンスを組む。アップルは俺たちのパーティだ。


「今回もよろしくね」


「ガウ」


「よろしくなのです」


 全員が揃うとセーフゾーンを出る。いつも通り俺たちが先頭だ。途中で魔獣を見つけると一番近いパーティがそいつをやっつける。アライアンスだからほとんど止まることなく荒野を歩いて目指すメサに着いた。


 順に転送盤に乗ってボス戦をするフィールドに飛ぶ。ここからが本番だ。

 各自がもう一度薬品を確認している。パラディンは4人で打ち合わせだ。


「クルミ、魔法を頼む」


 俺が言うとクルミが4人のパラディンに魔法壁を張る。魔法をかけ終えると俺の前でジャンプした。準備完了だ。


「行こうか」


 スタンリーの声でパラディンがフィールドに入った。洞窟の中央にいたエルクが顔をパラディンに向けるとエルクが馬の様に前かきを数度したあとでいきなり突進してきた。


 二人のパラディンが盾で受け止めるがズズズと後ろに押される。


「想像以上に強烈だぞ」


 なんとか盾で耐えているジャックスが大声を出した。

 その時にはすでに他のメンバーがフィールド内に入ってボスを囲む位置どりをしている。

 スタンリーが片手剣をボスの横っ腹に振り下ろした。するとボスが向きを変えてツノを突き出してスタンリーに突っ込んだ。強烈な突きを喰らってフィールドの壁まで吹っ飛ばされる。それを見たトミーが反対側から大剣を振り下ろすと今度は後ろ足でトミーを蹴っ飛ばした。同じ様に彼も吹っ飛ばされる。神官からヒールシャワーが飛ぶと、その神官に向かって攻撃を仕掛けてくる。パラディンがなんとかそれを食い止めた。


「ヘイトがたまらない。こちらが攻撃したプレイヤーを攻撃してくるぞ」


 これは困った。魔法部隊も魔法を撃つタイミングがわからない。スタンリーとトミーはごっそりと体力を削られたがなんとか生きている。後衛は一撃で戦闘不能になるだろう。


 タロウとリンネは敵対心が低いがそれでもタロウが蹴るとボスがタロウに攻撃をしてくる。それを走り回って交わしている間にリンネが魔法を撃つ。するとボスがリンネに顔をむけるがするとタロウがまた蹴りを入れる。


 ダメージソースがタロウとリンネだけだ。これではジリ貧だよ。パラディンが挑発スキルを発動するとタゲが彼らに向くが、そこで他のプレイヤーが攻撃をするとすぐにそちらにタゲが移ってしまう。


 俺は分身を4体出しているので3回までは攻撃できるが、リキャストが追いつかなくなってきた。


 クルミのスロウの魔法が入っていてもボスの動きは素早いんだよ。これスロウなかったらもっと早く動いて攻撃してくるってことだよな。


 周囲の仲間もなかなか手を出しづらい。ここまでヘイトの抜けが早いボスは初めてだ。いや抜けるとかいう次元じゃない。ヘイトがたまらない。どうやって倒すんだ?これ。


 蝉のリキャストを待っている間、ボスを攻撃しているタロウとリンネを見ていた俺はフィールドの中をぐるっと見回した。隠れる場所はないし、何かの陰から攻撃ができる様な場所もない。当たり前なんだけどな。


 地面近くを見ていた俺は視線を上にあげた。ゴツゴツと凹凸がある壁がフィールドを囲んでいる。


 蝉のリキャストがゼロになったので分身を4体出して攻撃するがボスの体力はほとんど減っていない。一方で流石にパラディンも疲れが見えてきているよ。4人が2人組になって交代でヘイトを稼いでいるけど、誰かが攻撃したらタゲは移るし、ヘイトを稼ぐたびにボスの角か蹴りがくる。硬いパラディンもごっそりと体力を削られているよ。


 これは今回は勝てないかもと思いながらもう一度フィールドを見た俺はあることに気がついた。あの周囲の凹凸がある壁の岩を登って上から魔法とか矢を撃ったらこっちが攻撃し放題じゃないか?


 ここから見る限り数箇所登っていけそうな場所がある。ボスの角の高さよりも高い場所だ。3メートルから4メートルくらい上になる。あの岩の出っ張りの上ならボスの角も届かないだろう。上にある大きな岩の上は平らになっていて3人くらいは立てそうだ。そんな岩が見えるだけで3つ程ある。


 今から間に合うか。


 俺が大声を出そうかどうしようかと思っている時にクラリアの声がした。


「今回は全滅しましょう。出直した方がいい」


「そうだな。仕切り直しだ」


 スタンリーも叫んで応えている。2時間の時間切れを待つよりも全滅して1時間の衰弱の方が早い。俺はタロウとリンネを自分の方に呼び戻した。そして全員で攻撃をして見事に全員が討ち死にしたよ。


 一瞬の浮遊感があって俺と従魔は自宅に戻ってきた。皆衰弱状態だ。


「負けてしまったのです」


「ガウゥ」


 リンネもタロウもクルミも耳を垂らせている。


「今回は負けちゃった。でも次は勝つぞ」


「勝つぞ、なのです。借りを返すのです」


「ガウ」


 転移の腕輪でメサから自宅に戻ってしばらくするとグループメッセにクラリアの返事がきた。1時間後、衰弱から戻った後にメンバー全員で家に来るという。


「主、お茶と果物を用意するのです」


 友達が来ると聞いてさっきまで落ち込んでたのに元気になってるぞ。


「おう、お前達は出迎えを頼むぞ」


「はいなのです」


「ガウ」


 クルミもタロウの上でジャプした。


 1時間すると体力が戻ってきた。従魔達も元気になったよ。


 準備をして縁側に座っているとメンバー達がまたやってきた。ランとリーファも含めて従魔達がしっかりとお出迎えしてくれている。


「急に悪いな」


 先頭で入ってきたトミーが言った。その後から20名のメンバーが庭にやってきた。


「いや、大丈夫だよ。久しぶりの衰弱状態だった」


 皆が好きな場所に座った所で反省会というか作戦会議が始まった。

 

 やっぱりヘイトがすぐ抜けるのが厄介だと言っている。


「ボスを囲んでさ、順番を決めて攻撃していったらどう?」


「そんなに上手くいくか?自分に攻撃してこなくても、次の人に攻撃するんじゃないか?」


「そうだよね」


「敵対心が異常に低いタロウやリンネちゃんにも攻撃してたよね」

 

 話題が自分たちになるとそれまでリラックスしていた従魔達の耳がピンと立った。


「タロウとリンネはでかい鹿さんの攻撃をひょういひょいと避けるのです」


 座っている俺の太ももに顔を乗せているリンネが言った。背枕をしてくれているタロウも横になったままガウガウと吠えている。


「タロウとリンネだから避けられるが、普通のプレイヤーじゃ絶対に無理だぞ」


 ダイゴが言ってるがその通りだ。ボスのエルクの攻撃は早くて鋭い。特に前衛は剣が届く距離、つまりボスに接近して攻撃している。いきなり避けるのは無理だろうな。


「でも必ず勝つ方法があるはずなのよね。勝率がゼロってことは絶対にあり得ない」


 マリアが言うとそりゃそうだが、じゃあそれは何だ?という話になった。

 ここは俺が思ったことを言おう。


「ちょっと気がついたことがあるんだよ」


 俺が言うと全員がこっちに顔を向けてきた。ちょっと緊張するな。


「実はボス戦のフィールドについてなんだけどさ、今までのボス戦のフィールドって周囲が高い壁になってただろう。でも今回のメサの中のフィールドは鉱山の採掘後って感じで壁に凹凸があったんだよ」


 そこで一旦言葉を切って皆が理解してくれている表情を確認した俺は話を続ける。


「今日の戦闘中に俺、その周囲の壁を見たんだよ。凹凸があってさ、その上に登っていけそうな場所が3箇所あったんだ。高さは地上から4メートル位。そこならボスの攻撃が届かない。なので魔法や狩人の遠隔部隊はその岩の上から攻撃したらどうかな」


「なるほど」


「確かに壁は凸凹してたわね」


 俺が話を終えるとメンバーが口々に言っている。俺の従魔達はこれでもかと尻尾を振ってるよ。ランとリーファも俺の前でサムズアップをしてくれた。


「タクの作戦が行けるとなると魔法使いは魔力に気をつけながらガンガン撃てる。狩人は好きに攻撃できるな」


「後でもう一度現場を確認するけどさ、タクのアイデアが使える前提で作戦を練りましょう」


 クラリアが言って作戦会議が始まった。


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