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テイマー忍者 〜ソロ忍者は従魔と共に駆け回る〜  作者: 花屋敷


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偵察なのです

 この日、工房での焼き物作りを終え、縁側でクールダウンしていると情報クランから連絡が来た。攻略クランと合わせて21名の準備が整ったそうだ。明日の午後から俺の自宅でボス戦の打ち合わせをすることになった。


「明日の午後に友達が大勢この家にやってくるぞ」


 端末に来たメッセージを読み終えると庭のあちこちでリラックスしている従魔達を前にして言った。


「強い敵をぶっ倒す作戦会議なのです?」


 縁側に座っている俺の前に集まってきた従魔達。


「そうだ。エリアボス戦の前の打ち合わせだよ」


「主、お茶と果物はしっかりと用意するのです」


「おう、任せとけ」



 翌日の午後の早い時間にエリアボス戦に挑戦する仲間達が自宅にやってきた。前回のエリアボス戦でタクと同じパーティになった攻略クラン所属の魔法使いのアップルもいる。


 洋室の上にお茶と果物を用意していた俺、家にやってきた両クランはお土産に果物を持ってきてくれたのでそれもテーブルの上に並べた。エリアボス戦の打ち合わせと言ってもまだ相手も分からないし今まで通りかなと思っていたけど、そうじゃなかったよ。


「食べながらやりましょうか」


 クラリアがそう言って始まった打ち合わせだけど、情報クランと攻略クランはあのメサの転送盤からフィールドに飛んでエリアボスを見てきているそうだ。俺はそれをするのを忘れてたよ。


 彼らによると転送盤から飛んだ先から伸びている洞窟の先がボスのいるフィールドで、エリアボスはマッドエルクという大きな鹿でツノが槍の様に先端が尖っていてその角が複数あり、しかもその角は鋭利な先端以外に柄というかそれ以外の部分も細かい角が生えている。


「突き刺されたら相当なダメージを喰らうぞ」


「突きと引きの2度ダメージを与えるよな」


「蹴りは間違いなくある。安易に背後に立つのはまずい」


「魔法を撃ってこられたら厄介よね」


「あの角は剣で切り落とせるのかな」


「流石に無理じゃないか。切るためには近づかないといけない。あの図体のボスに近づくのはリスクが大きいぞ」


 聞いている限りは鹿だとナメると大変な目に遭いそうだ。もっともエリアボスだから弱いことはないんだろうけど。


 果物を食べた一部のプレイヤーが縁側や庭に出てきた。思い思いの場所に座ったり立ったりしている。俺は庭の土の上でタロウの背枕で座っている。


「角を突き出した突進と蹴りは間違いないだろう。あとはあの大柄な身体だ。体力もありそうだ」


「そんなに大きいの?」


 俺が言うと周りからでかいぞ。大きいわよという声がする。


「俺たちがイメージする鹿の2倍以上だ。そして角はまるで槍だ。魔獣の角の突きをまともに喰らうと下手すりゃ1撃で戦闘不能になる」


 ダイゴが俺の方を向いて教えてくれた。


「基本はいつも通り2枚の盾で対応。がっちりヘイトを稼いでくれ」


 攻撃は魔法使い部隊はボスの顔、物理攻撃部隊は左右から脚を狙って攻撃をすることになった。狂騒状態でどうなるのかは分からないがそれは今までもそうだった。そこは行き当たりばったりにならざるを得ないよな。ただ戦闘時間が2時間と短い。ちまちまとやっていると時間切れになりそうだ。


 スタンリーが俺に顔を向けた。


「ボス戦は2時間制限と言っても長期戦に変わりはない。クルミの魔法がキーになる。スロウと魔法壁が効いてくると思うんだ」


 それは間違いない。18%のダメージバックと8%のスロウ、有ると無いとでは大違いだ。


「クルミ、頼むぞ」


 俺が言うと頭の上でジャンプしたよ。


「タクと従魔達はいつも通りで頼む。タロウもリンネも敵対心が低いしタクには蝉がある」


「わかった」


「主に任せるのです。安心なのです」


 俺が言った後でリンネが言った。

 タロウとリンネはボスの左右から攻撃だ。俺は一時的に盾をするのでパラディン2人の近くに立って攻撃する。


「毎回言ってるけど、ダメだったらまた挑戦すればいいだけの話。思い切ってやりましょう」


 クラリアの締めで打ち合わせは終わった。ボス戦には明日の午後に挑戦することになった。それまで各自で薬品などの準備をする。俺は薬品以外に煙玉と撒菱は常に持っているので特に準備しなくても良さそうだ。もちろんサーバントポーションも持っているよ。


 挑戦が明日になったので俺も一度はボスの姿を拝んでおきたい。打ち合わせが解散してから俺とタロウとリンネとクルミとでオアシスの街から北のセーフゾーンに飛び、そこからエリアボスがいるフィールドに飛ぶメサまで移動する。


 そこから北西の方角に1時間程進んだ場所にあるメサの中に転送盤があるということなので、俺たちはセーフゾーンから敵を倒しながら北西を目指すことにする。明日のボス戦に備えて身体は動かしておいた方がいいだろうし、何より3体の従魔達が戦いたくて仕方がない様子なんだよ。


 172のレベルの敵を倒しながら進むこと1時間弱、目の前にメサが見えてきた。周囲に他のメサがないのであれだろう。


「あのメサだ。もうすぐだぞ」


「ガウ」


「はいなのです。敵をぶっ倒しながら前進なのです」


 その後数体の魔獣を倒した俺たちはメサについた。目の前にはぽっかりと穴を開けている洞窟がある。タロウやリンネを見ると緊張している風でもないので中に足を進めると30メートル程先に転送盤が見えた。そこに乗ってみた。


『エリアボス戦へ転送します』


 というメッセージの後で『はい』と『いいえ』の選択肢が出た。

 一度転送盤から降りてAIのミントに聞いてみると25名、2時間制限のエリアボス戦だ。時間制限のボス戦は初めてじゃないかな。


「今日は戦闘はしないぞ。様子を見るだけだ」


「偵察なのです」


「その通りだ」


 もう一度転送盤に乗って『はい』をタップすると目の前の風景が揺れた。


 次に俺たちが立っているのは洞窟の中だった。背後をみると数メートル先が壁になっていて行き止まりになっている。通路は前に伸びている。


「主、そろりそろりと参ろうなのです」


 狂言の表現も知ってるのかよ。感心したがリンネの言う通りだ。

 俺たちは静かに通路を進む。しばらく進むと通路が左に曲がっている手前でタロウが前足を落とした。リンネもクルミも同じ格好をしている。

 

 壁から顔を出して奥を見ると大きな広場の中央にでかい鹿が1頭立っている。確かにでかい。想像以上だよ。地面から頭の上までは3メートルくらいだろうか、長さも4、5メートルある。その頭に2本の角が生えていて、先端が尖っているのが見えている。


 ミントに聞いたらあれがエリアボスのマッドエルクだと言う。


 最後は転移の腕輪で逃げればいいと俺は蝉を張って分身を4体作ると角を回って近づいていく。俺の横にはタロウが。頭にはリンネ、タロウの上にクルミが乗っている。


 進むと中の様子がよりはっきりと見えてきた。中央にいるエリアボスは動かない。俺が足を止めるとタロウもその場で足を止めた。ここはまだボスの関知外で、中が一望できる。


 ボス戦のフィールドを見ていて気がついたことがあった。今までは周囲が壁みたいになっていて登れなくなっていたが今回のこの場所は周囲が壁じゃない、壁面が凸凹している。採掘場の後という設定かな。これはこれで新鮮だ。


 エリアボスはエルク(鹿)だけどナメたらやられそうだよな。なんと言ってもエリアで一番強い設定なのだから。


 物理攻撃だけなのかな。でもあの大きな身体で突きや突進、蹴りなどをして来られたら苦労しそうだよ。


 俺たちは静かに下がってフィールドから離れたところで転移の腕輪を使って自宅に戻ってきた。


「大きくて強そうだったな」


「はいなのです。でも主の敵ではないのです」


「ガウ」


 そう言ってくれるのは嬉しいが簡単じゃないぞ。


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