西のセーフゾーン
キャンペーン2日目、午後の外の活動でレベルが上がって163になった。セーフゾーンから北に進みながら、目につくワイルドベアを倒しまくっている。
魔獣のレベルは165から166に上がったけど関係ないね。
「ほらっ、熱いのを喰らえ、なのです」
リンネが火の精霊魔法で166のベアのとどめを指した。
「主、ガンガンやるのです」
「ガウ」
リンネが言うとタロウもクルミもそうだそうだと言わんばかりに尻尾をブンブンと振ってくる。もちろん俺だってこの期間に沢山経験値を稼いでおきたい。
敵のレベルは上がるけど風景は変わらない、荒野に多数のメサが聳え立っている。その周囲をチェックしながら北上をしていると166のベアを倒したタイミングで端末が鳴った。
「主、お電話なのです」
「うん、ありがとう」
3体の従魔が周囲を警戒してくれている中、電話にでる。相手はクラリアだ。
「セーフゾーンが見つかったわよ。西の山裾にあったの」
「周辺の敵のレベルは?」
「168ね。西の山裾を北上すれば見つかるから。あとそこに転送盤があるの。オアシスの街と繋がっているわ」
「了解。ありがとう」
通話を切ってフレンドリストを見るとクラリアとトミーのレベルが166になっていた。俺は従魔達に新しいセーフゾーンが見つかったという話をする。
「主、そこに参るのです」
「ガウ」
「もちろんだ。ただそこにいる敵のレベルが168だそうだ。俺達はもう少し北に進んで経験値を稼ぐぞ。西に移動するのはそれからにしよう」
「しよう、なのです。わかったのです。主の言う事に間違いはないのです」
いや、結構間違ってるぞ。従魔には言わないけど。
セーフゾーン周辺の敵のレベルが168、こっちのレベルは163。北に進みながら経験値を稼ごう。今日の宝探しはお休みだ。
その後もメサをチェックしつつ北上した俺たちはワイルドベアのレベルが167になったところまで北上してこの日の活動を終えた。
夕方、自宅でクールダウンしているといつもの4人がやってきた。
「宝探しは行ったのかい?」
縁側に座るとトミーが聞いてきた。
「昨日ね。今日はずっと外で魔獣を倒していたよ」
彼らは昨日、今日と集中して東西の山裾を北上しながら経験値を稼いだそうだそのおかげで166までレベルが上がったと言っている。
「宝物は何が出た?」
「2時間程エリアにいたけど、見つけた宝箱は7つ。中には数千ベニーの箱が2つとポーションの箱が4つ、印章が入っていた箱が2つだったよ。まだ1回しか行っていないけど、前回よりは宝箱の数が多いなという印象を受けた」
情報クランは宝箱の中身の情報も集めている。メンバーで手分けしてヒアリングすると同時に彼ら自身も宝探しのエリアに入っている。
「聞き取りと、クランメンバーの話をまとめると、今のところはタクと同じで2,000ベニーとかポーション、印章が多いわね。新しくきたプレイヤー向けなのかもしれない。あと神魂石が2つ入っていたという情報もあるの」
クラリアが教えてくれた。
「だからと言って、全てが新しいプレイヤー向けのアイテムだけとは思えないんだよな」
トミーが言うにはこれから宝箱の中身を変えてくるか、あるいは序盤はまだ開放していないエリアがあって後半になってそのエリアを開放してくるかもしれない。
色んな可能性を考えているんんだな。
「セーフゾーンは結構北にありそうだよね」
俺が聞くとスタンリーがうなずいた。オアシスの街から6時間だが途中で戦闘がある。下手したら7時間かかるかもしれないと言っている。確かにこのクランの攻略スピードで判断したらいけないな。
「セーフゾーン近くまで行くとエリアの北の高い山が視界に入ってくるんだ。なのであのセーフゾーンがエリアボス戦の前の最後の休憩所じゃないかと見ている」
聞いたら北に見えている山は高くて遠目に見る限りだと山越えをする設定になっている様には見えないらしい。だからそこが北の端じゃないかと言っている彼ら。
情報クランはセーフゾーンをベースに周辺を探索し、攻略クランはもう一度西の山裾を北上するそうだ。
「西の山に何かあるかもしれないでしょ?印章NM戦のフィールドとか」
マリアが言っているがその通りだよな。東にセーフゾーンがあったから西は探さなくても良いと言う訳じゃない。
彼らも経験値稼ぎばかりをするつもりはないそうだ。それ以外に宝探しもする。この期間中はフリーの時間を増やすらしいよ。
次の日、ログインするとそのまま畑の見回りと工房で焼き物造り。これはどんな時でも外せない。
それが終わるとオアシスの街に飛んだ。今日はまずはセーフゾーンに行くのが俺たちのミッションだ。
オアシスの街を出ると俺が何も言わなくてもタロウがその場に座った。俺が乗るとその前にリンネ、その前にクルミが乗った。のっそり起き上がったタロウ。
「タロウ、まず西に進んでくれるかい?そこから山裾を北に行くんだ」
「ガウ」
西の山裾にあるセーフゾーンには転送盤があるという。そこを記録したらこれからの活動が楽になる。
タロウが吠えて走り出した。レベルの低い敵を避けてぶっ飛ばして1時間弱で山裾に着いた、そこから山裾に沿って北に向かって駆け出す。
オアシスの街から2時間ちょっとで俺たちは山裾にあるセーフゾーンの柵を見つけた。柵の中にある小屋が見えていた。
「タロウ、ありがとうね」
「ガウガウ」
背中を叩くと尻尾をブンブンと振ってくれた。
柵の内側に入るとタロウから降りた。その場から北方面を見ると高い山が連なっている。山越えは厳しそうだ。なのであの山がエリアの北限なんだろう。
「主、お家に入るのです」
頭の上から声がする。
柵の中にある小屋の扉を開けると中に情報クランの連中がいた。
「こんにちは、なのです」
「やあ、いらっしゃい」
トミーが言い、他のメンバーもお疲れとか言ってくる。彼らと挨拶を終えると部屋の隅を見た。
「確かに転送盤があるな」
とりあえず転送盤を登録する。これで次から楽になるぞ。
転送盤を登録すると情報クランの連中が集まっているところに近づいた。
「ここが北方面の探索の拠点になるのだろう」
トミーが言った。
「確かにあの北の山越えは無理だよね」
北の山裾のどこかに洞窟があってその先にエリアボスがいるんじゃないかな、なんて言っている彼ら。
情報クランはレベル166でこの周辺の168のワイルドベアを相手に経験値を稼いでいるらしい。
「タクは163か。でも余裕だろうな」
「そうなるかな」
自分の実質レベルを考えたら問題ないだろう。そう思っていると頭の上から声がした。
「楽勝なのです」
少し休んでから俺達は小屋を出た。情報クランは小屋から西方面で経験値稼ぎをするというので俺たちは山裾に沿って北に進んで見る。出会うワイルドベアのレベルは168だ。2時間程倒しているとレベルが上がって164になった。
「やったー、なのです。また強くなったのです」
「そうだ。皆また強くなったぞ。この調子で頑張ろう」
「ガウ」
その後1時間ほど経験値を稼いだ俺たちは小屋の転送盤に乗った。飛んだ先はオアシスの街の冒険者ギルドの中にある転送盤だった。
ギルドの中は多くのプレイヤーで賑やかだった。これは想像外だったよ。
俺達が転送盤に現れると皆が注目する。タロウやリンネ、クルミは有名だからな。女性プレイヤーがスクショを撮りまくっている中、足早にギルドから外に出た。
「皆主を見ていたのです。有名なのです」
「ガウ」
「違うぞ、有名なのはお前達だぞ」
そう言っても主なのですと言うリンネ。タロウもクルミもそうだそうだと言わんばかりだよ。ここで俺が何を言っても納得してくれないのは知ってるから黙って彼らを撫でながらコテージに移動し、自宅に飛んだ。
今日は転送盤の確認もあってオアシスの街のギルドに飛んだけど、明日からは転移の腕輪で移動しよう。




