ぶつぶつ言いながら楽しんでいます
明日は1日メンテ、そして週末の土曜日からはキャンペーンだ。
メンテの前日の夕方、いつもの4人が自宅にやってきた。この2日間で俺たちはレベルが162に上がり、クランは163になっている。
今日はプライベートというか雑談メインなので縁側で話をする。マリアがタロウをしっかり撫で回してから縁側にやってきた。
俺が縁側に座るとその隣にタロウが座り、その背中にランとリーファが乗る。クルミは頭の上、そしてリンネは俺が座っている膝の上に乗ってきた。
2つのクランはキャンペーン期間中の活動は経験値稼ぎをメインにするが、各自が宝探しをしたり合成をしたりできるために自由時間を多めにするという。
「この期間でレベルをエリア上限だと思われる170まで近づけたいな。168になれば一度メサのNM戦に挑戦しようと思うんだ。その時点でこちらのレベルがいくらまで上がれば勝てそうかが見えてくる」
「大地の盾と大地の靴があるからね。多少なりともレベルが上がっているのは間違いないでしょ?」
スタンリーとマリアが言った。情報クランも同じ考えをしている。
「タクはどうするんだ?」
「基本午前中は変わらない。午後は経験値を稼いだり、宝探しをしたりかな。基本いつもの通りだよ」
「タクの場合はもう十分に強いからね」
クラリアが言うと他の3人もそうだそうだと言っている。何と言っても強化されているバンダナがあるからな。そこは自分でも分かっているんだ。
宝探しの話題になった。前回と違って今回は期間中ずっとやっている。箱の中身については前回同様で武器、防具は出ないんじゃないかと言っている4人。俺もそれには賛成だよ。ジョブに関連するアイテムは用意していないんじゃないかな、低レベルから高レベルと全てのプレイヤーが使えるアイテム。薬品類、印章、神魂石、指輪に腕輪。この辺りだろう。
「箱の中に黒の神魂石があるかもね」
「あるんじゃないか、そしてまたタクがそれを見つける」
「いや、流石にそれはないって。奇跡はそう続かないよ」
「そこで翡翠の指輪ですよ」
スタンリーとマリアの話を俺が否定すると、そのあとでトミーがそう言った。幸運を呼ぶと言われている翡翠の指輪だけど効果は分からない。でもトミーが言う様にいいものが手に入るかもしれないな。それでもまた黒魂石を自分が見つけるとは思えないけど。
「主に期待すると良いのです。いいものを見つけてウハウハになるのです」
それまで俺の膝の上で大人しくしていたリンネが言った。
「タクに期待しちゃっていいのかな?」
「主に期待しちゃっていいのです」
クラリアの言葉にリンネが言い切ってるよ。
PWLなどのVRMMOをメインに扱っている情報サイトによれば、PWLは今回の4次募集を持って大量の募集は一旦終了するらしい。あくまで噂だが、ここにいる4人はその情報は正しいだろうと言っている。
「サーバーに負荷をかけないためだろうな」
「綺麗なグラフィックとNPCの対応が売りのゲームだしね」
そんな話を横で聞いている俺。彼らの予想だと、今後は退会した人の補充という形で不定期に少ない数の募集をかけるんじゃないかということだ。
「それだったらPWLをプレイしたい人から文句が出るんじゃないの?」
俺が言うとトミーがそれと関連しているかどうかは分からないがPWLを運営している会社が新しいVRMMOのゲームを開発中だという情報がネットに流れているんだと教えてくれた。
「もちろん運営会社は具体的には何も言ってないぞ、ただネットによればPWLの大ヒットを踏まえて、ガチの攻略じゃなくてぬるめのゲーム、つまりPWLと似た様なゲームを開発中だということだ」
このゲームのサーバーを増加させずに新しいゲーム開発に舵を取ったのか。
それがもし本当だとしたら、ここにいる4人はそっちのゲームもやるのだろうか。俺はPWLだけで十分だから多分やらないと思う。
聞いてみたら4人全員が新しいゲームが出たとしてもやらないだろうなと言っている。
「変な言い方になるけど、似た様なゲームならPWLやってる方がいいよな」
「スタンリーの言う通りね。毛色が似ているゲームならPWLで十分よ」
「なるほど」
「まだそうだと決まった訳じゃないけどね。私はこのPWLを十分に楽しんでるから他のゲームはいいかなって感じ」
マリアが言った。俺と同じだな。というかここにいる皆は今のところはPWL以外のVRMMOはする気がないみたいだ。というか2つのゲームをやる時間がないよ。
募集や新しいゲームの話が終わると攻略の話になった。
「荒野の北にはエリアボスがいるんだろうけど、その前にセーフゾーンか村、ひょっとしたら街はありそうだよね。それも探さないと」
今彼らが相手をしている熊のレベルから見てエリアの北方面はまだまだ広い。なので必ず街やセーフゾーンがあるはずだと言う前提でそれらを探しながら活動をしている。エリアの上限が170であると読んでいる彼ら。となると最終的にフィールドにいる魔獣のレベルが172くらいまであるはずだ。それから判断しても北はまだ広いという認識だよ。
「荒野のエリアにメサが多くて探すべき場所が多いじゃない。1つ1つチェックしながらだから、なかなか北に上がれないのよ」
「マリアの言う通りで面倒くさいんだ、でもそれが楽しいとも言える」
確かに面倒くさいのはこのエリアの特徴だよ。台地同士がつながっていなくて、わざわざ遠回りをさせたり、前に進む、攻略するためにスタンプラリーをさせてみたりと、このエリアは今までとは違った思想で作られている。でもそれが結構面白いと思っている自分がいる。いつも同じ攻略パターンじゃつまらないよ。
「俺もスタンリーと同じ意見。こう言う面倒くさいエリアがあってもいいと思うけどな。あちこち探すのって楽しいしね」
皆ぶつぶつ言いながらも楽しんでいるんだよな。
そうでないとここまでやらないよ。
翌日は丸1日メンテだった。
メンテが明けると週末のキャンペーンまで2日だ。普通なら午前中は畑と工房、午後に外に出るのがいつものパターンだけど、経験値稼ぎはキャンペーン中にやろうと思っている。自分の中で経験値稼ぎよりもやるべきことがある。それは焼き物だ。
次の日曜日はキャンペーン中でもバザールは開催されると言うのでそれに備えて焼き物を沢山作っておこうと思ったんだよ。目標は完売じゃなくて売れ残りだ。キャンペーン期間だからお客さんの数は少ないかもしれないけど、それでも売れ残った分は翌週に回せば良い話だからね。
丸2日の間ほとんどの時間を自宅、特に工房にこもってかなりの数の従魔の置物、お皿、コップを焼いた。タロウ、リンネ、クルミは外に出られなかったけど大人しく俺が焼き物を作るのを見ていてくれたよ。
「自宅の外に行かなくて申し訳ないね」
「ガウ」
「平気なのです。焼き物を沢山作ってウハウハになるのも大事なのです」
「ありがとうな。明日からはキャンペーンだ。魔獣を倒すと沢山経験値が入る」
そう言うと皆尻尾を振って大喜びだ。俺は作業を止めると工房の中にいる5体の従魔達を前にして言った。
「明日からだけど、朝はいつも通り畑の見回りをするよ。それからは外に飛んで敵を倒すが。そればかりはしない。宝探しもあるからそっちもやるからね」
「ガウ」
「わかったのです。敵をぶっ倒したり、宝箱を開けてウハウハになったりするのです」
「その通りだ。とりあえず今日はもうちょっと焼き物を作るよ」
それから1時間ほど焼き物を作って端末に収納してログアウトした。
明日からはいよいよキャンペーンだ。




