キャンペーンの案内が来た
週末のバザールは大盛況だった。その前の日曜日はメサのNM戦の連戦の最中だったこともあってお休みしていたんだよ。1週間空いたというもあるんだろうな、オープンすると俺たちのテントの前には女性プレイヤーを中心に長蛇の列になった。
「主の焼き物を沢山買うとタロウもクルミもリンネも大喜びなのです」
商品が置いてあるテーブルの横でタロウの上に乗っているクルミとリンネ。商売上手なリンネが言うとスクショの嵐だよ。
「じゃあお皿も買っちゃおうかしら」
「やったー、なのです。沢山買うとよいのです」
そう言うと店の周りで可愛いという声が出る。リンネはどのお客さんにもこの調子でやるもんだから列が途切れない。もちろんタロウもクルミも一緒だ。スクショを頼まれると3体でポーズを取っている。俺はそれを横目に見ながら補充をしても置いた先から売れていく。接客は従魔達に任せてひたすらテーブルに商品を置くのが仕事になった。分業、適材適所でいいんだけどね。
丸2日工房にこもってひたすら焼き物を作って、かなりの数を用意したつもりだったんだけど、5時前には全部売り切れてなくなってしまった。
「主がウハウハになったので今日は店じまいなのです」
「売り物がなくなったんだよ。申し訳ない」
「来週もバザールでは出品されるんですよね?」
「その予定だよ」
「じゃあ、来週来ます」
「本当にごめんなさいね」
「ごめんなさいなのです。来週は早い時間に来ると良いのです」
「そうだね、分かった」
後から来たお客さんには頭を下げて納得してもらった。これはまた作らないといけないな。
店じまいをして自宅に戻ってのんびりしているとトミーが1人でやってきた。情報クランと攻略クランは基本バザールのある日は活動をしていない。メンバーがバザールに出品するからだ。
「早々に売り切れたらしいな。クランメンバーから聞いたよ」
縁側に座ったトミーがお茶を一口飲むと言った。
「今日もウハウハだったのです」
俺の膝の上に乗っているリンネが代わりに言ってくれたよ。タロウも縁側に座って尻尾を振っているし、その背中でクルミが器用にジャンプしている。
「デザインを変えてここまで売れるとは思いもしなかったよ」
「しばらくは続くぞ。沢山焼いた方がいいな」
「そうするよ」
ここからはトミーがゲーム内事情を教えてくれる。彼はこうやって時々1人でやってきてはゲームの様子を教えてくれるんだよ。これが非常に助かっている。なんせこっちはソロで掲示板もネットも見ないからな。
「数日もしたらオアシスの街にプレイヤーがやってくるだろう。情報クランとしてコヨーテの牙が100個いるのは公開している。皆南の荒野の小屋をベースにしてレベル上げをしつつ牙や神魂石を集めているよ」
小屋にいるプレイヤーは155、156のレベルで、周辺のコヨーテを倒すことは問題ないが、皆オアシスの街に来てからの強化を考えて小屋の周辺の敵を倒して石を集めているそうだ。
「皆タクみたいに金持ちで石をがっつりと持っている訳じゃないからな」
「俺はソロだから石は総取りできるからね」
「石もそうだが金も掛かる。普通のプレイヤーは皆金策に四苦八苦しているよ」
金策は合成品のギルド売り、釣り、あとはクエストや採掘、バザールなどだ。使わなくなった装備品をアイテムショップに売るケースもあるが、聞いたらすでに前のエリアで売っぱらっていて、今更売るものがないという話だよ。
俺は農業と窯業をやっていてよかったよ。
「新しいプレイヤーはもう来てるんだろう?」
「先週から来てるぞ。始まりの街は大賑わいだよ」
なるほど。情報に疎いから知らなかったよ。
トミーが帰ってからはログアウトまで工房にこもって焼き物をいくつか作った。今日の売れ行きから見るとまだまだもっと作らないといけない。買えなかった人には申し訳ないし、俺の大きな金策でもある。
週明けにログインすると公式からメッセージが入っていた。
・3日後の0時から24時までの24時間、サーバーのメンテナンスを行います。この期間のログインはできませんのでご了承ください。
ー 多くの新しいプレイヤー達がこの世界にやってきました。それを記念して週末の土曜日の午前0時より翌週の日曜日の24時までの間、歓迎のキャンペーンを行います。具体的には経験値増、アイテムのドロップ率が上昇します。また各種合成スキルの上昇率も上がります。なお、キャンペーン期間中も日曜日のバザールは通常通り開催いたします。
ー キャンペーン期間中、宝探しのイベントを開催します。フィールドのあちこちに30センチx50センチ、高さ30センチほどの大きさの宝箱がありますので、近づいて端末をかざしてください。中に入っているものを手にすることができます。
・宝箱は端末をかざすとなくなりますが、その瞬間に別の場所に宝箱が現れます。フィールド内の宝箱の総数が減ることはありません。
・特別エリアの中のどこに飛ぶのかはランダムです。飛んだ際に端末には『帰還石』というものがアイテムリストに載りますので、それを使うと始まりの場所の門の外に帰還できることができます。この帰還石は特別エリアに入る度に端末に支給されますので、何度でも出入りが可能となります。
・宝箱は全部、もしくは一部が見える状態で配置されます。従い、土の中を掘ったり岩を削ったりする必要はありません。
・気になる宝箱の中身についてはプレイヤーご自身で確かめてください。
・特別エリアには魔獣はいませんのでレベルに関係なくエリア内を自由に移動することができます。
・特別エリアでは足が速くなる魔法やアイテムは効果がありません。また従魔を連れて入ることは可能ですが、従魔に乗っての移動はできません。従魔の能力は無効になります。
一通り読んだ俺は端末から顔を上げた。目の前に5体の従魔達がおとなしく座っている。
「主、お手紙は読み終わったのです?」
「うん。また後で読むとして、まずは畑の見回りに行こう」
「はいなのです」
畑の見回りはよっぽどのことがない限りは欠かせない。ランとリーファが活躍する場面だしね。今も俺の両肩に乗ってステッキを振ってくれる。これだけで農作物がおいしくなるんだよ。
畑の収穫と種まき、果樹園の収穫、そしてビニールハウスのイチゴの収穫が終わると従魔達の遊びの時間だ。俺はビニールハウスの入り口にある椅子に座って彼らが満足するまで待っているが、その時間を利用してもう一度端末の運営のメッセージを見る。
キャンペーンの内容は今までと同じで経験値増と合成のスキルが上がりやすくなるということだけど、それ以外だと予想通り宝探しがあった。これは参加しなければ。しかも今回は期間中はずっとやる書き方だよ。経験値稼ぎと宝探しの並行だな。
端末を戻してビニールハウスで遊んでいる従魔達を見ていると沢山遊んで満足して俺の元に集まってきた。
「しっかり遊んだか?」
そう言うとランとリーファがサムズアップをする。彼らが満足してくれたらそれが一番嬉しい。タロウやリンネ、クルミは外で一緒できるからな。
俺たちはビニールハウスを出ると自宅に戻ってきた。これから午前中は工房だ。従魔達もそれを知っているので俺より先に工房に向かってるよ。
「よし、これから焼き物を作るぞ」
工房に入ると従魔達を前にして言う。
「作るぞ、なのです。主ガンガンやるのです」
「ガウ」
「おう、任せとけ」
従魔達にはっぱをかけられたよ。そのおかげなのかそれなりの数を焼くことができた。まだまだ足りないけど、バザールでの売れ残りを目指して頑張るぞ。




