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テイマー忍者 〜ソロ忍者は従魔と共に駆け回る〜  作者: 花屋敷


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翡翠の指輪

 一旦オアシスの街に戻った俺は隣と向かいの家を見たが誰もいなかった。活動中なんだろうな。なのでいつもの4人にメッセージを送ってから街の中にあるアイテム屋に顔を出してスローターワイルドベアの牙の買取価格を聞いた。


「錬金合成の原料ですね。買取価格は100,000ベニーになります」


 いい値段するな。聞いたらこれはNMからのドロップ品なので定価の8割の買取ではなく、商品の価値そのままで買い取るそうだ。結構高いがそこまでお金には困っていない。お礼を言って店を出た俺。


「牙を売ってウハウハしないのです?」


「うん。そこまで貧乏じゃないぞ」


「主はお金持ちなので余裕綽々なのです」


「余裕綽々って程じゃないけどな。ちょっとだけ余裕がある。という程度だよ」


 それにしても、リンネはまた難しい言葉を知ってるよな。余裕綽々なんてリアルでも滅多に使わないぞ。


 アイテム屋を出た俺たちは南門を出て目の前にある工事中の橋の向こう側にいるNPCのおっちゃんの元に向かった。確かに2人しかいない。偉い人の姿がない。


「ああ、たくさん牙をくれたプレイヤーさんじゃないか。タクと言ったっけ?どうしたんだね?」


 作業員のNPCの1人が話かけてきた。相変わらずNPCの対応がリアルすぎるよ。でも名前を覚えてもらったのは嬉しいね。俺は実はと言って端末からスローターワイルドベアの牙を取り出した。


「これってこの橋の工事に使えますかね?」


 そう言うと2人が牙を覗き込んでからおいおい、嘘だろう!と大きな声を出した。


「これって大熊のNM、スローターワイルドベアの牙じゃないか。兄ちゃん、あいつを倒したのか?」


「ええ、北にある大きなメサの中にある洞窟にいたので従魔達と一緒に倒してきました」


「主が倒したのです。楽勝だったのです」


「ガウガウ」


 俺が言った後でリンネとタロウが尻尾を振りながら言った。クルミは何度もジャンプしている。


「強い奴を倒したんだな。いや、使えますか?って、これがあれば橋がずっと頑丈になるんだよ」


「そうなんだ。じゃあこれを差し上げますのでよかったら使ってください」


「いいのか?こいつは滅多に手に入らない材料なんだが」


「問題ないのです。主がいくらでも取ってくるのです」


 いや、いくらでもと言ってもだな、リポップ時間がわからないからな。そう思っているとおっちゃんが言った。


「いやそんなに要らないんだ。この橋の工事ならこれが1個あれば十分なんだよ。それにしてもプレイヤーってのは本当に強いんだな」


 感心した声を出している。1個でよかったのか。とにかく渡せて一安心だよ。


「ちょっと待ってな」


 NPCの1人のおっちゃんがそう言うと橋を渡って街の中に消えて言った。待っててくれというので待っていると5分程しておっちゃんが戻ってきた。


「この前タクも会った街の偉いさんにこの話をしたら偉く喜んでくれてな。お礼に渡してくれとこれを預かってきた」


 おっちゃんがそう言うと音が鳴って端末に何かが入ってきた。端末を見ると、


・翡翠の指輪


 となっている。


「翡翠の指輪?」


 俺がつぶやくと、その通りと2人のおっちゃんが言った。


「そいつはこの近くの鉱山から採れた翡翠を加工した指輪だよ。俺たちの間じゃ幸運を呼ぶ指輪と言われている」


「この前頂いた大地のお守りみたいなものですか?」


 俺が聞いたらおっちゃんが答えてくれた。


「大地のお守りは自分の身を守るお守りだ。こっちの翡翠の指輪はつけていると幸運が舞い降りると言われている指輪だ」


 なるほど。似ている様で効果が違うんだな。でも幸運の指輪を付けているといいことがあるかも知れない。


「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」


「頂きます。なのです」


「おう、大変だけど頑張ってくれよ」


 おっちゃんの声を聞いて橋を渡ってオアシスの街に戻ったが、歩きながら考えてみる。ひょっとしたら宝探しの時に運が上がったりしてな。それだったら楽しそうだ。指輪だし邪魔にならない。装備しっぱなしでいいだろう。


 そんなことを考えながらオアシスの街の自宅に戻るとすぐに隣からいつもの4人が庭からやってきた。俺の帰りを待っていたそうだ。庭のテーブルに座る4人。俺は家からもう1つ椅子を持ってきた。


 従魔達は庭で遊び出したよ。


「北のメサの中に洞窟があってNMがいて、そいつを倒してきたって言うメッセージを見たからな」


「タクはよくNMを見つけるな。しかも皆初見で勝利している」


 トミーとスタンリーが言うとクラリアとマリアも頷いている。


 俺はまずテーブルの上に端末の地図を置いてNMがいる場所を彼らに言った。


「中にいたNMの正式名はスローターワイルドベア。コヨーテを倒して北に進んでいくとワイルドベアが徘徊しているエリアになるんだ。そのエリアの中にある大きなメサの洞窟にこいつがいた。レベルは179か180だと思う。長い爪で攻撃してきて、狂騒状態は爪を立てながら突進してくる。物理攻撃だけだったよ」


 俺の言うことを端末に書いているクラリア。


「タク、戦闘時のレベルはいくつだった?」


「今と同じ、レベル158で挑戦した」


「16レベル足して実質174、NMが180として6レベル差か」


 頭の中で計算したトミーが言った。


「NMとの戦闘の条件は?」


「パーティ単位、つまり最大5名。制限時間は30分」


「何分で倒したの?」


「21分50秒」


 そう言うと早いな。というトミー。


「リポップ時間はどうなのかしらね」


 そう言ったのはマリアだ。それは俺もわからないぞ。


「ドロップ品について教えてくれる?」


・500,000ベニー

・神魂石(全6種類)

・大地のパラディン

・大地の靴 (全ジョブ)

・スローターワイルドベアの牙

・大地の加護


「加護が出たのか」


 スタンリーが言ったが他の3人も身を乗り出してくる。

 俺は盾と靴をテーブルの上に置いた。その方が彼らがAIに聞いて説明する必要がないからね。


「それ以外に50万ベニーとスローターワイルドベアの牙ってのが出たよ」


「この大地の盾はパラディンなら喉から手が出る程欲しい装備だぞ」


「大地の靴もすごいわよ。ジョブによってステータスが変わるなんて装備なかったもの。しかも盾も靴も12段階の強化ができるのよ。神装備になるわ」


「牙は錬金の合成の原料みたいね」


 現物はないが品名を言ってAIに聞いたみたいだ。


「そうなんだけどさ」


 俺はそう言ってからその牙を橋の工事現場に持ち込んだ話をした。最後に牙のお礼だと翡翠の指輪を貰ったところまで言うと4人が絶句したよ。その指輪の効果を説明したらまた驚かれた。皆がAIに聞くだろうから俺は指輪もテーブルの上に置いた。


「なんとまあ、タクらしいと言うか」


 指輪から顔を上げたトミーが言った。


「そう言うけどさ、牙って言うからさコヨーテの牙と同じかなと思ったんだよ。店売りの値段を調べたら100,000ベニーだったんだ。店売りする前にどんな反応をするのか橋の工事現場に言って話をしたら1個だけ必要だったんだよって言われてさ。じゃあどうぞってあげたらお礼だと翡翠の指輪をくれたんだよ」


「NM戦で手に入れた牙を橋の工事現場に持っていくという発想がタクなのよね」


 マリアが感心したというか、呆れた様な声で言ってるよ。


「あの工事現場で手に入る翡翠の指輪はタクが持っている1個しかないということだ」


 確かにそうなるな。


「幸運を呼び寄せる指輪。今までこのゲームじゃなかったアイテムね」


 クラリアが言った。


「効果があるかどうかは分からないけどね」


「でもさ、実際に幸運の指輪があるってことは隠しパラメーターのプレイヤーのLUK(幸運)がアップする代物かもよ。全く効果がないアイテムを運営が用意するとは思えないもの」


 マリアの言葉にその通りだと皆が頷いている。


「それでこの大地の盾なんだけど、俺は要らないというか使えないから差し上げるよ」


「いや、ちょっと待ってくれ、その前に」


 スタンリーが言った。


 ん?


「この盾が必ずドロップするのか、それとも防具枠、武器枠になっていて他のが出る可能性があるのか。悪いがもう一度挑戦してくれないか。残念だがタクが倒したNMのレベルが180近くあるとすると今の俺たちに勝機はないからな」


 彼が言うとその可能性もあるのかという話になった。


「この前の公式のアナウンスでフィールドNMのリポップ時間が変更になったでしょう?このエリアのNMも対象だと思うのよ。なので数時間でリポップするかも」


「分かった。明日もう一度挑戦してみるよ」


 大地の盾については次のNM戦のドロップを見てから判断することになった。2つ出たらそれぞれのクランで購入する。1つだったらその時に相談する。いずれにしても俺には要らない装備なのでそちらで決めてくれと言っておいた。


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