メサの中にNMがいた
PWLの4次募集が締め切られた。約15,000人の募集に対して10万人以上の応募があったそうだ。相変わらず人気があるゲームだよ。これから抽選をして当選者の発表。そのあとにあるであろうキャンペーンに期待をしている俺。
午後からオアシスの街に移動するとタロウに乗って一気に北のセーフゾーンを目指す。タロウが気合い入ってるよ。何も言っていないのにぶっとばすんだよな。短時間でセーフゾーンに着いた。柵の中に入るとしっかりと撫でてやる。
「タロウ、頑張ったな。ここでしっかり休むんだぞ」
「ガウガウ」
尻尾をブンブンと振って体を寄せてくる。
「タロウは主が大好きなのです。主のためにぶっ飛ばしたと言っているのです」
「そうか。ありがとな」
休んでいる間、疲れていないクルミは柵の中を走り回っているよ。時々柵の上にのって遠くを見たりしている。この子は好奇心が旺盛なんだよな。
「リンネはいいのか?」
膝の上に乗っているリンネを撫でながら聞いてみる。
「リンネは主の膝の上がリラックスできるのです。ここがいいのです」
「そうか」
「主、今日も木偶の坊の熊野郎を倒すのです?」
おい、言い方がこの前よりも過激になってるぞ。
「そうだな。この周辺にいるでかい熊を倒して経験値を稼ごう」
情報クランと攻略クランの連中が北上してくるまではこの周辺でレベル上げだ。フレンドリストを見ると彼らはレベルが上がって159になっている。このエリアのレベル上限が170じゃないかって言ってたな。ここから見る限り北にはまだ広大な荒野が広がっている。それを見ると上限が170というのが妥当な数字に見えてくるよ。しかもまだこの先に村か街がありそうな雰囲気もある。
いずれにしてもこの先の方にはまだ何かがありそうだけど、まずはこの周辺で経験値稼ぎだ。
コヨーテを倒して北に進むと敵がワイルドベアになった。レベル160の熊が俺たちの相手だ。熊を倒しながら周囲をチェックするが風景に変化はない。相変わらずの荒野に大きなメサがところどころに聳え立っている。
「あの大きな岩に行ってみるぞ」
ワイルドベアを倒した俺たち。俺は右前方の聳えている大きなメサを指差した。
「みるぞ。なのです」
途中で出会う熊を倒してメサにたどり着くとゆっくりその周りを回る。もちろんこここも魔獣がいる。そいつらを倒しながら周囲を歩いていると俺たちが歩いてきた反対側。岩の東側に洞窟が見えた。幅も高さも5メートルほどある洞窟の中に入ってすぐにタロウが身体を沈めて低い唸り声を出した。リンネもクルミも同じ格好になる。
「今までよりも強い敵が中にいるのです」
中に強い敵がいるのか。何だろう。
「よし、まずは偵察だ」
「静かに参るのです」
その通りだよ。俺たちはゆっくりと洞窟の中に入っていく。中は通路になっていて20メートル程先が広くなっているのが見える。
壁に沿って歩いていくと広場の全景が見えてきた。聳え立っている岩の中をくりぬいた様な作りで一辺が30メートルはあるであろう広場の中央に一頭の大きな熊が四つ足で立っている。それまで倒してきたワイルドベアよりも2回りは大きい。しかも下顎から前に伸びている牙があってそれが大きい。あれで突いてくるのかもしれないぞ。
(ミント、あれはNMかい?)
(はい。フィールドNMです。名前はスローターワイルドベアです)
スローターとは殺戮という意味があるらしい。
(討伐の条件は?)
(はい。討伐は最大5名。制限時間30分です)
(ありがと)
NMの様子が分かった。俺たちは静かに洞窟の入り口に戻った。洞窟に入ってすぐの場所は安全地帯なのか、周囲に見えている熊が襲ってこない。
「ちょっとここで休もう」
「はいなのです。作戦会議なのです」
「その通りだよ」
休むと聞いたタロウがすぐに座って背枕をしてくれる。座るとリンネとクルミがいつもの定位置。足の間と肩に座った。
NMのレベルはいくつだろう?俺たちのレベルは157。ただ実際はこれに16はプラスになるから173だ。いつもの4人は、このエリアのレベル上限は170だと見ていると言っていた。それが正しいと仮定するとNMのレベルは180かそれよりも少し下になるかな。1パーティ限定で戦闘時間が30分。ギリギリ勝てる設定となると178くらいかも。レベルを上限の170にまで上げた上に装備で2つか3つ、あと加護を持ってれば1つ上がるとすると173とか174。ん?そう考えると178だと楽勝になるのかな。179か180はあるんだろうな。でないと皆んなが倒しちゃうぞ。雪原のNMもそうだったし、そこそこの難易度にしてるはずなんだよ。
180だとして、30分でレベル差7の180のNMを倒せるか?ん?ちょっと待て、昨日今日と結構な数の敵を倒してるな。そろそろレベルアップしそうな気がする。158になったらレベル差が6になる。少しでも勝つ確率が上がるだろう。それでダメだったらレベルを上げて再挑戦すればいい。
「よし、先にレベルをあげよう。洞窟の敵はそれからだ」
起き上がると全員で気合いを入れた。
岩から出るとそこらにいる熊を片っ端から倒していく。1時間ほど倒したところでレベルが158になった。
「やったー、なのです」
「よし、これで一度NMに挑戦するよ」
「ぶっ倒すのです」
「ガウガウ」
再び岩の洞窟の入り口で俺は端末からポーションとサーバントポーション、そして煙玉を取り出して装束のポケットに入れた。負けたらまたレベルをあげて挑戦だ。
「いいか、制限時間が30分だ。最初から全力でぶっとばしていいぞ」
「ガウ」
「やってやるのです」
クルミはタロウの上でジャンプした。皆気合いが十分だ。
空蝉の術を唱え、クルミから魔法壁を貰うと通路を歩いて奥に進んだ。
広場に出ると俺たちを認識したNMの大熊が後ろ足で立ち上がった。3メートル以上はありそうだ。大きな咆哮とともにこちらに襲いかかってくる。
「やるぞ!」
クルミがスロウの魔法を入れる。俺から見てタロウが左、リンネが右に陣取った。いつものポジションだ。大熊の攻撃を横に避けながら刀を振るう。分身が1体剥がされた。外見に似合わず動きが早い。
リンネが氷と火の精霊魔法を交互に撃っている。タロウが横から大熊の腹を蹴っ飛ばす。うん、いつも通りだ。クルミは定期的にスロウの魔法を撃ち、それ以外は広場の壁際で待機している。これもいつもの行動だよ。
時間が30分しかないので相手の攻撃を分析する暇はない。ただひたすらに剣を振る。魔法の選択はリンネにお任せだ。NMの大熊の攻撃は両前足の長い爪の振り下ろしと牙の突き出しだ。何度か対応すると奴の爪の攻撃を避けることが出来る様になった。スロウも効いているので空蝉の術のリキャストは問題ない。リンネの氷の魔法が顔に当たると一瞬身体が硬直する。どうやら氷魔法が有効の様だ。そのタイミングが狙い目だ。2本の刀で首筋に切り付ける。
タロウの蹴りが入った。すると大熊が俺の方に突進してきた。牙が迫ってきた。何とか躱したが分身が2体消される。少し引き返してはまた突進してくるNM。
「狂騒状態だぞ、全力で行くんだ」
「ガウ」
「はいなのです。これでも食らえ、なのです」
何度目かの突進してきたタイミングでリンネの氷の魔法が足に命中して一瞬動きが止まった。そのタイミングでタロウがジャンプしながら後ろ足で横から大熊の顔に蹴りを入れた。顔が大きく反対側に触れる。そこにリンネの2度目の魔法と俺の刀が顔に突き刺さる。
「グオオオオオ」
大熊が2本足で立ち上がった。再び蹴りが横っ腹に、魔法が顔に命中するとNMの大熊がそのまま倒れ込んで光の粒になって消えた。
「よっしゃぁ」
「ガウガウ」
「主がでっかい木偶の坊のクマさんを倒したのです」
壁際にいたクルミも俺に近寄ってくると何度もバク転をする。
(ミント、討伐時間は?)
(はい。討伐時間は21分50秒です)
意外と早く倒せたぞ。体力は多かったけど、物理攻撃だけの相手で助かったよ。
NMが消えたところに大きな宝箱が現れた。
「宝箱なのです。ウハウハなのです」
俺が端末を近づけると音がして宝箱が消えた。俺たちはその場から移動して洞窟の入り口に腰を下ろした。
「主、何が入っていたのです?」
「オッケー、見てみるよ」
「ワクワクなのです」
リンネはそう言い、タロウとクルミは尻尾をブンブンと振っている。
端末を見るとNMを倒した戦利品が入っていた。
・500,000ベニー
・神魂石(全6種類)
・大地の盾
・大地の靴 (全ジョブ)
・スローターワイルドベアの牙
・大地の加護
結構入っていた。周りで座っている従魔達に戦利品を言うと大喜びしているよ。
(大地の靴の特性は?)
(はい。装備するプレイヤーのジョブ特性のアップです。強化も可能です)
(ジョブスキルのアップって?)
(はい。タクの上忍の場合は素早さがアップします)
(今の忍靴よりも性能は上ってこと?)
(はい。12段階強化すると大地の靴の方が上位の装備になります)
(それ以外のジョブについては?)
(その情報は持ち合わせていません)
自分のジョブだけ教えてくれるんだな。
それにしても、忍靴が素早さアップの効果だったが大地の靴はその素早さの効果が忍靴よりも上になるってことか。数値の開示はしてこないからどれくらいアップするのかは実践で検証して感覚で掴まないといけない。
大地の盾について聞いてみると、パラディンの専用装備だが体力と防御力が同時に上がる優れものだということが分かった。AIのミントによれば12段階の強化が可能だという。これ狙いで挑戦する価値はありそうなアイテム、装備だよ。
スローターワイルドベアの牙はアイテム扱いになっている。何かの合成原料かな?ミントに聞いてみたら合成の錬金で使うことができるアイテムだそうだ。どんな形をしているのだろうと端末から取り出してみた。白い大きな牙だ。
「コヨーテさんの牙よりもずっと大きいのです」
牙を見たリンネが言った。確かに大きい。ん?これも橋を使う時の材料になるのかな?いずれにしても自分の木工と窯業では使いそうにないアイテムだ。一応オアシスの街に戻って店売り金額を確認してから橋の工事現場にいるNPCに持ち込んでみよう。要らないと言われたらこっちで持っておけばいいし、換金してもいい。




