デザインを変更しよう
週末のバザールでは事前に作った焼き物が好評だった。事前にかなりの量を作っていたこともあって、閉店時にも少し売れ残っていたよ。売り物がなくなるよりは売れ残りがある方がずっといい。
「今日もウハウハになったのです」
閉店時間が来て店じまいをしている時にリンネが言った。顔を向けるとタロウもクルミも尻尾を振っている。確かに今日は沢山売れた。
「そうだな。お前たちがしっかりサービスしてくれたからだよ」
そう言って3体の従魔達をしっかりと撫でてやる。彼らはお客さんが買うたびに尻尾を振って愛想を振り撒いてくれたし、スクショをお願いされるとちゃんと対応してくれるんだよ。彼らのおかげで沢山売れたと言っても過言じゃない。減っていた端末の残高が戻りつつあるよ。
店じまいを終えると開拓者の街をのんびりと歩く。隣を歩くタロウが尻尾を振りながら俺に身体を寄せて歩いている。これがタロウのお気に入りの歩き方なんだよな。クルミは今はそのタロウの背中に乗っている。リンネは俺の頭の上だ。
歩きながらそろそろ焼き物のデザインを変えようと思っている俺。従魔達の置物はもちろん、お皿やコップも新しいデザインに変更することでまた売れるんじゃないか思ったりしている。
「主、明日はどうするのです?」
頭の上から聞いてきたリンネ。
「うん。今日はずっとバザールだったから、明日はいつも通りに戻るよ。朝はみんなで畑の見回りと焼き物作り、午後は外に出る」
外で戦闘すると聞いて3体の従魔が激しく尻尾を振り出した。
「コヨーテさんをぶっ倒すのです」
「そうだ。頼むぞ」
翌日の午後、オアシスの街の北門から外に出て午後いっぱい周辺のコヨーテを倒して経験値を稼ぐ。この調子でやれば明日か明後日にはレベルが上がる気がするんだよな。このオアシスの街は周辺に結構な魔獣、コヨーテが徘徊している。そしてそのレベルは158と俺たちにとっては美味しい相手だ。
翌日の夕方、そろそろ終わろうかという頃にレベルアップが来て153になった。
「やったーなのです」
「ガウガウ」
従魔達も大喜びだ。153になったということはこれに装備や加護の分の16レベルをタスと実質169レベルに近いレベルになったということだ。次からはもう少し北に進んでもいいかもしれない。相手がコヨーテなのか、他の魔獣になるのかはわからないが相手のレベルが上がればまた沢山経験値が入ってくるだろう。
夕方にいつもの4人が開拓者の街の自宅にやってきた。彼らもレベルが上がって156になっている。彼らと会うのは4、5日ぶりだよ。
「バザールは好評だったみたいじゃないか」
縁側に座ってお茶を飲んだところでスタンリーが言った。彼は事前に情報クランからバザールの様子を聞いていたそうだ。
「おかげで沢山売れたよ、しかも売り切れにならなかった。最近散財続きだったから少しずつでも金策しないとね」
そろそろ従魔の置物のデザインというかポーズを変えてみようと思っているんだと彼らに言った。
「デザインを変えたらまた売れるわよ。沢山準備した方がいいわね」
そう言ったマリア。他の3人もそれは間違いなぞと言っている。そういえば以前聞いたなマニアみたいなプレイヤーがいて従魔の置物をコンプするんだとか。その人の為に作るわけじゃないけど、そろそろデザインを変えようとは考えていたんだよ。マリアは新しい従魔の置物ができたら絶対に買うと気合い十分だ。
「マリアみたいなマニアが多いんだよ」
スタンリーが笑いながら言っている。なるほど、よくわかりました。
彼らはオアシスの街の東西の門から出て周辺のコヨーテを倒しながら少しずつ活動範囲を東西それぞれに広げていく作戦だという。
「東西の端を確認できたらその周辺を探してみる。またNM戦をやる洞窟があるかもしれないし」
「タクと違って俺たちは今はまだ街の周辺のレベル158のコヨーテがちょうどいい相手なんだよ。コヨーテは虎と一緒でAGI値が高い魔獣だ。動きが素早いので武器の攻撃がフルヒットしないことがある。もちろん倒せるが、討伐に時間がかかっているんだ」
トップクランの連中をもってしてもレベル差2がちょうどいいのか。となるとやっぱり台地の上から飛んだ先の小屋の周りにいるレベル154のコヨーテを倒すには152とか153のレベルがプレイヤー側に必要になるのかな。
俺が言うとその通りだと言う4人。情報クランもそこはしっかりと説明をしているので皆台地の上でレベルを上げ、武器を強化しているのだと言った。
「数パーティがスタンプラリーをしているという情報はあるの。ただ彼らがスタンプラリーが終わってすぐにこの下に飛んでくるのかどうかまでは分からない」
クエストだけクリアしておこうという考えもあるんだな。確かにスタンプラリーは台地の下に飛ぶ権利を得るクエストだから、それをいつ行使するかどうかはプレイヤーの判断だよ。行けると思ったタイミングで下に降りてくるんだろう。
「台地と荒野のエリアは広い。そして攻略が簡単じゃない。俺たちはタクというプレイヤーいたから比較的簡単に移動しているが、これって普通じゃないんだよ」
「俺がいるからなのか?」
トミーに聞き返すと当然だろう4人。
「表面レベルよりも10以上のレベルがあるプレイヤーなんてタクくらいだ。その上タロウという移動手段もある。移動のみならず従魔達の戦闘能力も頭抜けている。普通とは違うのは間違いないな」
「そのおかげでかなり情報が取れているのも事実。タクが取ってくる情報は湯気が立っているホットなものばかりなのよ」
スタンリーとクラリアが言うとここが自分の出番だとばかりにリンネがミーアキャットポーズになった。
「主は一番強いのです。タロウとクルミとリンネも主と一緒で強いのです。いつもコヨーテさんをたくさんぶっ倒しているのです」
「ガウガウ」
タロウも吠え、クルミはジャンプしている。
リンネの話を聞き、タロウとクルミを見ていた4人がその通りだよな。皆強いよな。なんて言うからもう3体とも尻尾をブンブン振ってるし、戦闘に関係のないランとリーファまで歓喜の舞を舞っているよ。
「確かに周りのプレイヤーと比べると自分自身が異質だというのは理解しているよ」
「ならいいんだ。いずれにしてもタクは今まで通りやってくれりゃあいい。そうすれば勝手に情報が入ってきて俺たち情報クランもリンネじゃないがウハウハになるって訳だ」
トミーが言って皆が笑った。
まあ、自分も変わったことをするつもりはないので、これからも今まで通りだよ。
彼らが引き上げたあと、俺は工房に移動すると土を固めて新しい従魔のポーズをいくつか作ってみた。俺が工房に入ると従魔達も皆入ってきて邪魔にならないところにおとなしく座るんだよな。
「これはどうだ?」
「ガウガウ」
「格好いいのです」
「こっちはどうだ?」
「ガウガウ」
「格好いいのです」
どれでも格好いいと言ってくれるのは嬉しいがどれが一番いいんだろうか。
今の焼き物は従魔達が座っているポーズなので、次は戦闘中のにしてみるか。タロウとリンネとクルミは四つ足で前足を少し落として相手を威嚇する様なポーズにしてみる。尻尾は立ててみた。今までのよりもずっと攻撃的なポーズだぞ。3体とも今までとは違って敵を睨みつける表情にした。
ランとリーファはステッキを持って羽根を広げて飛んでいるイメージのものにしてみる。いかにも畑仕事中ですよ。という雰囲気をだしてみた。
「ちょっと焼いてみるよ」
「ワクワクなのです」
素焼きをし、釉薬を塗ってからもう一度窯で焼いた。
取り出してみるとなかなかの出来になっている。
「どうだ!」
俺は焼き上がった従魔達の新しい焼き物を彼らに見せた。それを見たランとリーファは工房の中で歓喜の舞をしてくれた。クルミはタロウの背中の上で器用に何度もバク転をする。
「ガウガウ」
「主、素晴らしい出来なのです。皆格好いいのです。間違いなくこれはウハウハになる焼き物なのです」
「そうか。リンネがそう言ってくれるのなら間違いないな」
「はいなのです。間違いないのです」
リンネも9本の尻尾を振って興奮しながら言っている。どうやら新しいポーズは従魔達には好評だ。俺はそれからログアウトまで同じポーズの焼き物を作った。次のバザールまでに沢山作らないとな。
「お前達が気に入ってくれたのならこれでやるぞ」
「やるぞ、なのです。ガンガン作るのです」
「任せとけ」




