大地のお守り
情報ギルドが公開した情報は大きな反響があったらしい。
まだ関所の街のスタンプラリーすら始まっていないプレイヤーが殆どの中、台地の下のエリアの情報、魔獣の情報、そして次の街の情報等が一気に公開されたのだ。
「それにしても皆スタンプラリーのところで苦労しているのか」
「いや、その前の強化で苦労しているんだよ。台地の下に飛んだら魔獣のレベルがいきなり上がる。中途半端な装備じゃ移動できないのを知っているから皆金策しつつ神魂石を集めている」
今までのエリアだと先行組、俺たちが新しい街に着くとそれから1週間以内には他のプレイヤー達も街にたどり着いていたけど、今回は先行組とは大きく差が広がっている。
「まあ、俺たちもオアシスの街でレベルを上げないと次に進めない。神魂石の強化も終わっていない。この街に腰を据えて経験値と石集め、関所の街にいる他のプレイヤーとは場所が違うだけでやることは同じだよ」
なるほど、そう言うことなんだな。トミーからはすんなり強化して強くなっているのは俺だけだと言われたけど、流石に短期間で結構散財したから俺も金策をしないといけない。神魂石のストックももうかなり減ってきている。
トミーも言っているけどとりあえずこのエリアではこれ以上の強化はないだろうと俺も思う。
そうなるといつものペースで周辺の探索になるんだけど俺はその前に行くところがある。
隠れ里に入ると通路にユズさんが立っていた。俺が挨拶をするとタロウとリンネも挨拶をする。ポンチョのフードの中にいたクルミもそこから出てくると俺の肩の上でジャンプした。
「タクさん、いらっしゃい」
「お邪魔します」
「主、リンネは父上と母上のところに行くのです」
「うん、行ってこい」
「はいなのです」
俺の頭の上から飛び降りたリンネが祠に向かって駆け出した。俺たちはユズさんと一緒に村長の自宅にお邪魔する。いつものお土産のイチゴを渡してから村長、ユズさんと話をした。この間タロウは村長の家の庭でゴロンと横になっているし、クルミはおとなしく俺の膝の上に座っている。
「雪のエリアの次は荒野のエリアですか。プレイヤーさんは大変ですね」
「でも楽しんでますよ」
「楽しんでいるのならそれが一番でしょう」
「ありがとうございます」
俺は村長にお守りについて何か知っているか聞いてみた。
「この隠れ里ではタクさんもご存知の通り、各家の前に大主様、九尾狐の置物が置かれています。この村ではあれがお守りみたいなものなんですよ」
「なるほど」
村長さんは大主様なら何か知っているかも知れないと言った。
俺はお礼を言って村長さんの家を後にすると大主様がいる祠に足を向けた。参道を歩いていると階段の上にいたリンネが走ってきて俺の頭の上に飛び乗ってきた。
「ちゃんとご両親に報告をしてきたかい?」
「はいなのです。それで父上が主を待っているのです」
「わかった」
階段を上がると祠の前に大主様と奥方の2体の九尾狐が俺たちを待っていた。俺はまず自宅で採れた果物を奉納する。
「リンネが世話になっておる。見るたびに少しずつ強くなっておるののはタクの指導が良いからだろう」
「当人も毎日頑張ってくれています。大助かりですよ」
俺が言うと大きく頷いている2体。リンネの母上の表情が緩んでいるのは俺が見ても分かる程だよ。俺は今攻略している荒野のエリアについて詳しく話をし、新しい街を訪れた時にそこに住んでいる住民から大地のお守りというのを手に入れたと伝え、その効果について何か知っているのか聞いた。
「大地のお守りというのは初めて聞いたがタクの今の話を聞いていると加護の様なものかもしれんの」
「加護、ですか」
なるほど。加護か。加護と言えばランドトータスの加護、雪原の加護を持っているな。これは思っていた通り。島のヌシに聞いた方が良いだろう。
「そう。いずれにしても大事なものだと思うぞ。大切にすると良いだろう」
「わかりました。ありがとうございます」
俺たちはまた来月伺いますと言って祠のお参りを終えると次にキクさんのコンビニ店に顔を出した。持参しているポーションを店に寄贈する。
「いつも悪いね。タクが定期的にポーションを分けてくれるので大助かりだよ」
そう言われると嬉しいもんだよ。
「そのポンチョはうちで買ってくれたものだよね」
「そうなんです。クルミが気に入ってまして、街の中じゃいつもこれを着ていますよ」
「そうかい。また良いの入ったら取っておいてあげるよ」
「よろしくお願いします」
「します。なのです」
これでこの里での目的は達した。次は港の街だ。
隠れ里を後にすると自宅経由で港の街に飛んだ。ここから対岸の島まで船だ。時間は短いけど久しぶりに船に乗れると従魔のテンションが高い。
島に渡るとそこの桟橋から転送盤を使って島の北部にある小屋まで飛んで、そこから歩いてダンジョンに向かった。レベルの上限はあるが俺たちの敵じゃない、適当に倒して北に進んでいくとダンジョンの入り口が見えてきた。
中に入るといつもの様に大きなランドトータスが洞窟の中にいた。
「こんにちは、ご無沙汰しています」
「ガウ」
「ご無沙汰なのです」
「タクと従魔達か。そういえば久しぶりになるの。また強くなっておる様だ」
ここでカーバンクルの卵を貰ったこともあり、クルミがヌシの前に行くとその場で何度もジャンプをする。
「なるほど。カーバンクルのクルミはタクのことが大好きな様だ」
テイマーギルドでも聞いていたけどこうして神獣のランドトータスから直接聞くと嬉しくなるね。
「クルミもどんどん強くなっているので大助かりしています」
俺がそう言うとクルミがまたジャンプしてるよ。
「ところで」
と俺は隠れ里で大主様に話をしたのと同じ内容、今攻略しているエリアの人から大地のお守りというのを手に入れたことをヌシに話をした。
黙って俺の話を聞いていた島のヌシ。
「最初にワシがタクを見てまた強くなっているなと言っただろう?あれは装備の事ではなく加護の事だ。タクは大地のお守りという新しい加護を手に入れたのだ」
大地のお守りとは加護の事なのか。
島のヌシが教えてくれたのは大地のお守りの加護は雪の加護と同じ強さだという。つまりレベルが1つ上がる加護だということだ。
「島のヌシから貰ったランドトータスの加護が2レベル分、雪の加護と大地のお守りが1レベル分。合計で4レベル分強くなっているということですか?」
そう聞くとその通りだと言う。これは嬉しい。攻略するのがまた楽になる。
「3つも加護を持っているのはタクくらいだろう。ただ加護があるからと無理をするでないぞ」
「分かりました」
島のヌシによると一時誰も来なかった島のダンジョンに最近またプレイヤーが来ているそうだ。おそらく第2陣のプレイヤー達が挑戦しているのだろう。
「皆苦労しておる様だが、中にはボスを倒して勝利しておるプレイヤーもおる。このダンジョンでの鍛錬を通じて強くなれば今後必ず役に立つだろう」
「自分もそう思います」
またお邪魔しますと島の洞窟を出た俺達はその場で転移の腕輪を使って自宅に戻った。
夕刻に自宅に戻ってメッセージで大地のお守りが加護の事で雪の加護と同じだったとメッセージを入れるとしばらくしてからいつもの4人が自宅にやってきた。ちょうど荒野での活動が終わってクールダウンしていたところだったみたいだよ。
「加護だったのか。となるとタクは加護でレベル3つか4つ分上になっているということだな」
加護の話をもう一度した後でスタンリーが言った。
「となるとどうなるんだ?バンダナで10レベル、加護で4レベル、装備で2レベルだとすると実質16レベル上になるぞ」
頭の中で計算をしたトミー。
「また一段と強くなったということだ」
「当然なのです。驚く事ではないのです」
膝の上に乗っているリンネが言った。こういう場面では必ず俺推しでくるんだよ。背枕をしているタロウもガウガウと吠えている。
クランの連中は加護でレベル1、装備を12段階強化すればレベル2は間違いなく上がるが、その装備の強化がなかなか進まないらしい。
「コヨーテの牙のドロップがいいでしょ?それと比較して神魂石のドロップが悪いと思っちゃうのよ。でも統計を取るとそれほど変わってないのよね」
彼らはオアシスの街の東側と西側に別れて街の周辺の敵を倒している。コヨーテのレベルが158で彼らが154、ちょうどいい感じだそうだ。
じゃあ俺は北門から出たエリアでやろうかな。そうしたらエリアが被らない。まだ他のプレイヤーが来ないのでライバルもいないだろう。
「普通に考えたらそろそろエリアボス。でも多分まだレベルが全然足りない。しかもエリアが広い。ひょっとしたら雪原エリアみたいにNM戦をやる場所があるかもしれない。強化も終わっていないし、時間をかけて探索するつもりよ」
クラリアが言っているがその通りだよな、慌てて次から次とやる必要もないだろう。俺ものんびりと攻略を進めるよ。




