久しぶりの釣り
この日は昼過ぎまでひたすらに工房で焼き物作りをした俺。次回のバザールで売れ残るくらいに沢山作ったぞ。大事な金策だから頑張ったよ。従魔の置物はもちろん、お皿やコップもいっぱい焼いた。
テーブルの上に並んでいる出来上がった焼き物を見ている従魔達。
「これで主がまたウハウハになるのです」
「ガウ」
「うん、ウハウハというか、散財したからまたお金を稼がないといけないんだよ」
ランとリーファもよくやったと俺の前でサムズアップをしてくれた。
安定した金策があって本当によかった。
昼過ぎまで合成をした俺はランとリーファに留守番を頼んで自宅からオアシスの街の別宅に飛んだ。別宅に着くとすぐにスタンリーがやってきた。彼らは少し前にこの街に着いたそうだ。そして彼らはレベル154になっていた。
「いつも通り、庭を繋げさせてくるか」
「どうぞどうぞ」
しばらくすると庭と庭が繋がって、そこからスタンリーが入ってきた。と同時に向かいからトミーとクラリアもやってきた。情報クランも攻略クランとほぼ同じタイミングで1時間程前にこのオアシスの街に着いたそうだ。どちらもコヨーテの牙を100個渡して通過したと言っている。
俺たち4人は庭にあるテーブルに座っている。マリアはこの街まで来たところでリアルの用事があってログアウトしたそうだ。
「ただ俺たちも攻略クランも橋に着いた時にはNPCが2人しかいなかったんだ。作業着姿のNPCが2人だけ。タクが言ってた私服のNPCはいなかった」
「えっ?そうなの」
俺はトミーの顔を見た。街の偉いさんはいつもあの場所にいないのか。
「おそらくだけど、最初の1組目だけがその私服のNPCが対応するんじゃないかというのが私たちの見方。それがパーティだったらお守りをメンバー分くれたんじゃないかな、タクはソロだから1つだけ渡したのだと思うの。そう考えるのが一番スッキリする」
「なるほど。最初だけなのか」
お守りだからばら撒く訳にはいかないのかな。知らんけど。
彼らはパーティで100個渡して橋を渡って街に入って来たそうだ。街に入ってまず家を押さえたんだよと言っている。
「この街は荒野の中にあるとは思えない程緑が多い街だな。水路も張り巡らせていて街の中を歩くのが気持ちいいよ」
スタンリーが言っている。それは俺も同意だよ。
「確かに気持ちいいわね。それにしてもコヨーテの牙が橋の原料になる。そのコヨーテの牙は荒野にいるコヨーテを倒して手にいれる。よく考えて作り込まれてるわね」
「しかもだ、南の荒野の小屋、あそこにいるNPCは牙を800ベニーで買い取ってくれる。何も知らないで牙で金策をしていて牙を持っていなかったら街に入ることができない。いやらしいよな」
プレイヤーが関所の街で金策で苦労するだろう。それが台地の下に飛んできたら小屋の周辺にいるコヨーテを倒した牙をその場で買い取ってくれる。コヨーテを倒して経験値は稼げる上に牙1個を800ベニーで買い取ってくれるのならこれで金策しようと考えるプレイヤーがいてもおかしくない。
情報クランはまだ情報を公開していない。明日か明後日には公開する予定だそうだ。今は手分けをして街の中を歩き回っていると言っている。
「ただ街の中のアイテム屋でも800ベニーで牙を買い取ってくれるのは確認してるんだ。この街まで来たら金策の手段が1つはあるということだな」
なるほど。そこはしっかりと確認しているんだ。流石だよ。
「それでみんなは装備の強化はしたの?」
俺が聞くと1段階目は終わったそうだ。一部のメンバーだけ武器を2段階強化したらしい。
「神魂石が足りないのよ。関所の街ででも使ったでしょう?この街を起点に神魂石集めね」
なるほど。
「タクはこれからどうするんだい?」
「街の外に出て経験値を稼ごうと思う。装備も強くしたのでそれも確認したいしね」
実際に強化してどれくらい強くなったのかが知りたい。なんせ大金をつぎ込んでるからね。
彼らと別れてから俺たちは街の外に出た。この街には東西南北に門がある。街の中心にある大きな池がある場所からそれぞれの方向に真っ直ぐに道が門まで伸びているのでわかりやすい。
別宅の近くにある西門から外に出てみた。周囲の景色はこれまでと変わらないよ。荒野に箱みたいな大きなメサがあちこちにある。
5分も歩くとコヨーテの姿を見つけた。レベルは158だ。タロウがガウと吠えるとこちらに気がついたのか向かってきた。
強化した装備はその強さが実感できる程だ。
「楽勝なのです」
コヨーテを倒したリンネが言っているがその通りだよ。俺も従魔達も強くなったのは間違いないな。小一時間街の周辺にいるコヨーテを倒しまくった俺たちはレベルが153に上がったところで街の中に戻ってきた。従魔達も強いし俺も自分の強さが自覚できた。そこらにいるコヨーテを片っ端から倒しまくったよ。
「そろそろ街に戻るよ」
「はいなのです。明日も戦闘なのです」
「ガウ」
本当に皆戦うのが好きなんだよな。
荒野の茶色の世界の中で活動をしてからオアシスの街の中に入るとほっとする。緑が多くて水が流れている。落ち着くんだよな。
そのまま市内をうろうろしてマップを作成する。1日では終わらないので適当に市内を歩いてからこの街の家経由でランとリーファが待っている自宅に戻った。
マップ作成は3日かかった。街の中をうろうろしてみたけど聞いていた通りに武器屋や防具屋の看板は見つからなかった。ただこの街に釣りギルドがあったんだよ。プレイヤーズギルドでマップ作成のクエストの達成を報告した俺たちは東門近くにある釣りギルドに顔を出した。
「こんにちはなのです」
「ガウ」
「こんにちは」
ギルドの中に人族の中年のおばさんがいた。
「釣りギルドにようこそ。私はこのギルドを見ているパウラだよ。ほう、あんたは釣りギルドに加入しているね」
「上忍のタクと言います。よろしく」
「はいよろしく。ギルドに加入しているのなら問題ないね。釣った魚を持ち込んでくれりゃあここで買い取るよ」
「わかりました」
早速東門から外に出るとすぐに右に曲がってして川の近くまで移動した。このあたりには魔獣はいない様だ。近づいてきたら従魔達がやっつけてくれるだろう。俺は水槽を取り出して地面に置くと釣り竿を取り出した。
従魔達が俺の横に並んで後ろ足を下ろして座るんだよ。竿を投げると糸についているルアーを追って従魔達の顔が動く。見事にシンクロしている。
ルアーが川面に落ちるとしばらくして引がきた。引っ張るとすぐにヒットする。
「主、頑張るのです」
「おう、任せろ」
リールを巻くと30センチほどの魚が釣れた。皆大喜びだよ。水を張った水槽に魚を入れるとクルミが必死で中を覗き込んでいる。
再び竿を川に投げると、しばらくしてヒットした。今度釣り上げた魚は最初とは違った魚だ。サイズは40センチ程と大きめだ。水槽の中の魚が2匹になってクルミがジャンプして喜んでいる。
「この調子でガンガン釣るのです」
1時間ほどで12匹の魚を釣り上げることができた。3種類の魚が獲れた。今日釣れた分は釣りギルドに持ち込んで買い取ってもらうことにする。自宅に持って帰るのはまた違う日に釣れた魚にしよう。水槽の中が魚でいっぱいだよ。
釣りギルドに入るとその場で水槽を取り出した。中を覗き込んでいたパウラさんが顔をあげて俺を見る。
「いいサイズのを釣ってるね。タク、あんた腕がいいよ」
「ありがとうございます」
「これらは全部この街のレストランに売れるんだ。サイズ的にもちょうどいい。これからも頼むよ」
「主は釣りも一番なのです。お任せすると安心なのです」
「そうかい。じゃあ期待しているよ」
「はいなのです」
12匹をギルド売りをしたおかげでお財布がほんの少し潤ったよ。




