主はお金持ちなのです
オアシスの街で自宅を確保したのでテイマーギルドに顔を出した。ここにいるNPCはミシェルさんとブリジッドさん、もちろん2人とも猫族だよ。
「何も問題ありませんね。いい関係です」
「すっかり懐いていますね。親密度もマックスで変わりません」
「主は一番にこの街にやってきたのです。なんでも一番なのです」
リンネがいうと、本当だね、すごいねというテイマーギルドの受付嬢の2人。それに対して当然なのです、なんて言ってるよ。
テイマーギルドでこの街で武器屋や防具屋、忍具店があるのかと聞いたらその店は無いと言われた。やっぱりここでは強化しかできないんだな。
お礼を言ってテイマーギルドを出ると次は強化屋だ。強化屋を目指して街の中を歩いていると他の合成ギルドの看板も目に入ってくる。そういえば雪原のエリアでは合成ギルドはなかったな。雪の世界だからギルドも活動できないのだろうか。
強化屋は大通りとは別の通りにあった。今までとは違ってメインの通りに面していない。
店の扉を開けて中に入ると、そこは他の街の強化屋と同じだった。カウンターがあってその奥にドワーフのNPCが5人立っている。
「上忍のタクだな。あんたは俺が窓口だよ」
カウンターの中央から声がした。相変わらず情報は共有されているよ。
「主はどこに言っても有名なのです」
「ガウガウ」
頭の上からリンネが言い、隣ではタロウが身体を押し付けながら吠えている。
「こんにちは。上忍のタクです」
「いらっしゃい俺はラムズ。この強化屋の責任者だよ。早速強化の話をしたいがタクは色々と持ってるな。よし、奥の部屋で話をしよう」
ラムズさんの後に続いて奥の部屋に入ると、そこにはテーブルと椅子が置かれていた。
「黒魂石を2個使ったバンダナを持っているタクは強化屋の中では有名なんだよ」
強化屋の中では名前が売れてるみたいだ。俺が有名だと言われてタロウやリンネ、クルミが尻尾をブンブンと振っている。
「強化費用は1段階200万、これはこの街でも同じだよ」
「わかりました」
俺は従魔のスカーフを3つ、刀2本、装束と自分のスカーフをテーブルの上に置いた。
「この7つの装備をそれぞれ2種類の神魂石を使って強化をする。3段階強化する。それでいいんだな?」
お願いしますと言って必要な神魂石をテーブルの上に置いた。神魂石は余っていた上にこっちに来てからもコヨーテを倒して手に入れている。
「7つの装備を3段階強化する。1段階200万それが7種類。それぞれ3段階強をするから強化費用は4,200万ベニーだ」
「わかりました。お願いします」
端末から4,200万ベニーが引き落とされた。神魂石と装備を手に持ったラムズさんが奥に消えて5分ほどすると戻ってきた。
「強化は完了したぞ。すべての装備が3段階強化されて12段階になった」
「やったーなのです」
新しい従魔のスカーフをタロウ、リンネ、クルミの首に巻いてから自分も強化した装束と武器を身につけた。
「うん、すべてが12段階強化されている。これでまた強くなったな」
「ありがとうございます」
お礼を言って強化屋を出た俺はとりあえずこの街で買った自宅に戻った。
従魔達が庭で遊び出した。俺は庭にある椅子に座って彼らが遊んでいるのを見ながら今日の出来事を振り返ってみる。
川沿いを歩いていたら橋を見つけて渡るのにコヨーテの牙を100個と言われて手持ちの203個全部を渡したら大地のお守りを手に入れた。これが100個渡したとしたらこのお守りは貰えたのだろうか。検証のしようがないな。
でも強化は12段階までできた。これでまた少し強くなったぞ。
翌朝、畑の収穫を終えて工房に入ろうかというタイミングでいつもの4人が自宅にやってきた。朝ログインしたらこっちに来るというメッセージが入ってたんだよな。
「早いね」
「そりゃそうだろう。新しい街の情報を取ってるんだからな」
マリアもタロウを少し撫でると家に上がってきた。今日は洋室で打ち合わせだよ。
従魔達は今はまだ庭にいるけどそのうちこっちに来るだろう。
「何から聞いていいかわからない位に情報量が多いわね」
クラリアがそう言ったので時系列的に話をしようと俺が言うとそうしてくれと4人が言った。
まず端末を見せて新しいオアシスの街の場所を4人に見せた。街は荒野の西側に位置している。ただ西の端まで行っていないのでどのあたりかはまだはっきりとはわからない。
「タクは南の荒野の小屋からまっすぐ北上して川が見えたら左、周囲を確認しながら川に沿って西方面に4時間ほど移動したんだよね?」
クラリアが確認する様に言ってくる。
「その通り。俺たちはメサを調べながら移動して4時間程かかった。もし最初から川沿いを移動したらその半分、2時間ほどじゃないかな」
俺が言うとなるほどという4人。
「その川には工事中の橋があって最初だけ通行料というかコヨーテの牙を100個渡すのね」
「パーテイ単位で100個ね。それを渡すと1人ずつ橋を渡れる。渡ると目の前に街の城門があるよ」
「タクはそこで橋の南側にいたNPCに203個の牙を渡したら3人いたNPCの中の1人から大地のお守りをもらったということか」
トミーが言った。
「そう。203個の牙を渡したのと俺がたまたま一番乗りだったからみたい。100個だったらどうなったかは分からないよ。作業着姿のNPCが2人で私服が1人。お守りはその私服のおっちゃんから貰った。何でも街の偉いさんという設定みたいだ」
「よく牙を200個以上持ってたわね」
マリアが感心した声を出している。こっちもそれ程沢山あるとは思ってもいなかった。
「川の周辺のコヨーテのレベルが158なんだよ。157のコヨーテを倒した辺りからかな、牙のドロップ率が上がって4回に3回は手に入った感じ。最後は毎回入ってたよ。南の荒野の小屋から橋の小屋まで移動したり、レベル上げをしている間に100個近くは貯まるんじゃないかな」
これは俺の感覚だ。聞いてみると情報クランも攻略クランもメンバー全員の牙を合算するとパーティで100個近くはあるそうだ。それであれば移動中にまた牙が手に入るから、橋を渡るのは問題ないね。
「オアシスの街には強化屋はあるけど武器屋、防具屋、忍具店はない。自宅は2,000万で買える。それで合ってる?」
「合ってる。通りに面した路地の両側の自宅はクランが買うだろうと思ったので俺はその隣を買ったよ」
そう言うとスタンリーがじゃあ俺たちがタクの家の隣を買って庭を繋げようと言ってるよ。これはいつものパターンだ。
「次は強化の話」
「オアシスの強化屋で3段階強化できる。強化費用は石を2つ使って1段階上げるのに200万ベニーの費用がかかる。これは関所の街と変わらない」
「タクは強化したのか?」
「俺と従魔達のはすべて3段階強化して12段階強化になったよ。4,200万かかったけど」
そう言うと金持ちだなと4人が言った。お金持ちなのは間違いない。
「関所の街でも結構使った上にさらに4,200万ベニーをポンと払えるのはタクくらいだぞ」
「主はお金持ちなのです」
トミーが言うとリンネが膝の上でミーアキャットポーズになって言った。
「トミーの言う通り。タクって本当にお金持ちだったのね」
マリアが呆れた声で言った。
「農業とバザールのおかげだね。今回もなんとか払えたんだけど流石にもう金が少なくなったよ」
そう言うとスタンリーが金もだが神魂石をそれだけ持っているのは羨ましいぞと言っている。これもソロでやってるからだろうな。従魔達が戦闘好きだからガンガン倒しているので石が手に入りやすいと言うのもあるかも。
彼らはこの後オアシスの街を目指して行くそうだ。場所が分かっているから問題なく着けるだろう。
オアシスの街で会おうと言って4人が庭から出ていった。
俺はその後午前中は工房で焼き物作りをする。流石に手持ちのベニーが乏しくなってきたので農業とバザールで金策しないといけないよ。




