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テイマー忍者 〜ソロ忍者は従魔と共に駆け回る〜  作者: 花屋敷


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オアシスの街

 次の日も小屋を出るとタロウに乗って真っ直ぐに川まで北上し、そこから今度は川を右手に見ながら西の方に進んでいく。途中で出会うコヨーテは158だ。どうやら川の近く、というか川の南側はレベル158のコヨーテが一番強いのかもしれない。強いが苦労する相手じゃない。目に入ってくるコヨーテを片っ端から従魔が倒していくんだよ。その度に端末が鳴ってコヨーテの牙が入ってくる。これを店売りするだけで結構な金策になるんじゃないか?そう思う位に牙が貯まっていくよ。


 例によって川沿いを進みながら近くにメサがあればその周りをぐるっと回ってチェックし、再び川沿いを西に進んでいく。


 コヨーテを倒し、メサの周りを周りながら4時間程川にそって北西方面に進んだ頃、俺たちの前に川に掛かっている橋らしきものが見えてきた。橋の向こう側には城壁に包まれている街が見える。


「主、街なのです」


「ガウ」


 街を見つけて従魔達のテンションが上がったよ。クルミも何度もジャンプしている。もちろん俺も従魔と同じだ。探していた街が見つかったんだからね。


 近づいていくと川のこちら側に小屋がある。さらに近づくと橋は工事中なのか数人のNPCが作業をしているのが目に入ってきた。


「こんにちは」


「こんにちはなのです」


 小屋の前は3人のNPCのおっちゃんが立っている。2人は作業着っぽいのを着ていてあとの1人は私服だ。


 俺たちが声をかけると3人が俺の方に顔を向けた。


「おや、プレイヤーさんかい」


 作業着姿のおっちゃんの1人が言った。


「この橋を渡って向こうの街に行きたいんですけど渡れますか?」


「オアシスの街に行きたいのか、渡れる事は渡れるが見ての通り工事中なんだよ」


 川向こうの街の名前はオアシスの街というのか。水が近くにあるからなのかな。そして橋は工事中だという。


「橋が古くなって今新しい橋を作る工事をしている最中でね、まだ工事が終わっていなくって橋の幅が狭いので気をつけて渡ってくれよ」


「なるほど」


 見ると橋の左半分がところどころ欠けている。白っぽい橋なんだと思って見ていると私服姿のおっちゃんが俺の顔を見て実はな。と言った。


「新しい橋はコヨーテの牙で作っているんだよ」


「コヨーテの牙?」


「そう、ここらは見ての通り木が余り生えていないだろう?なので橋を作る材料がなくてな、一方でコヨーテの牙は加工しやすい上に強いんだよ」


 なるほど。そういう使い方があるのか。そう思っていると更に続けて言ってくる。


「それでだ。この橋を渡るのは構わないがその代わりに最初に渡る時だけコヨーテの牙を100個貰うことになっているんだよ。それを渡してくれればあとは自由だ、好きに橋を渡ってくれて構わない」


「最初に渡る時だけコヨーテの牙を100個渡せばいいんですね」


「そうだ」


 最初だけ通行料としてベニーの代わりにコヨーテの牙を100個渡すという理解でいいんだろう。彼らから見ると、橋を作り替える材料をもらうことで通行する権利を与える。そんな感じなのかな。聞くと1パーティ単位、つまり5名以内なら1パーティで100個渡せば良いそうだ。


「主、コヨーテさんの牙は沢山あるのです?」


 頭の上から声がした。牙は沢山あったはずだよ。

 端末を見ると203個ある。結構な数を倒してきていたからな。目につくコヨーテを従魔達が片っ端から倒していたのと牙のドロップ率が高かった。


「全部で203個あるぞ。どうせなら全部寄付しよう。牙はまた倒したら手に入るからな」


「はいなのです」


「ガウ」


 従魔も賛成してくれている。クルミも尻尾を振ってジャンプしたから賛成だ。


「203個持ってるので全部どうぞ」


 そういうとNPCのおっちゃん3人が嬉しそうな表情になったよ。相変わらずNPCの対応がリアルなんだよな。


「203個もくれるのかい。これはありがたいな」


「ああ、これは助かるよ」


 3人がそんなことを言っている。


「また倒したら持ってきますよ」


 端末を渡すと音がして203個の牙が消え、代わりに何かが入ってきた。


「最初にこの橋にやってきたプレイヤーさん、しかも203個も牙を寄付してくれた。それは街からの気持ち、お礼だよ」


 私服のおっちゃんが言った。端末を見ると「大地のお守り」というのが入っていた。譲渡不可、転売不可になっている。


「これは何ですか?」


「大地のお守りとはこの大地、荒野を移動する時のお守りだよ。オアシスの街の住民は皆持っている。普通はプレイヤーさんに渡すものじゃないが、あんたは初めてこの街にやって来た冒険者だ、しかもたくさん牙を寄付してくれた。オアシスの街を代表してお礼にそのお守りを差し上げよう」


「この人はオアシスの街の偉いさんなんだよ。遠慮なく貰っておきな」


 作業着のおっちゃんが言った。なんと、偉い人だったのか。それで1人だけ格好が違ったんだな。聞いたら橋の工事の進捗状況を見に来ていたタイミングで俺たちが橋に近づいたそうだ。


「ありがとうございます。大事にします」


「ありがとうなのです」


「ガウ」


 従魔達もお礼を言ってくれた。クルミはジャンプでお礼を表現したよ。


 お礼を言った俺たちは一列になって橋を渡った。一列といっても実際はタロウの後ろに俺だけだ。リンネは俺の頭の上、クルミは肩に乗っている。


 橋を渡ったすぐ先に城門があった。


 街の中に入るとそこはこの街が荒野の中にあるとは思えないほどに緑が多い。ゲームだからだろうがヤシの木が通りに生えていたり、後は芝生が綺麗に植えられている。


「主、ここは緑の多い綺麗な街なのです」


「本当にその通りだ」


「外よりも暑くないのです」


 確かにリンネのいう通りだよ。俺は門から入ったすぐの場所に屋台を出しているおばちゃんを見つけると近づいた。


「こんにちは。この街は緑が多いですね」


「プレイヤーさんかい。オアシスの街にようこそ。そうだよ、ここは川の近くにあり、地下からは豊富に水も湧き出している。街を歩いたらわかるけど街の中央に大きな池があるんだよ。そこから街中に水路が張り巡らされている。そのおかげで街の中が涼しいんだよ。外は暑いだろうけどこの街の中にいる分には過ごしやすいよ」


 なるほど。何だっけ、気化熱による冷却効果だったっけ?リンネが暑くないと言っていたけどその理由が分かったよ。


 大きな通りを歩くと、おばちゃんが言っていた通り、街の中を縦横無人に水路が張り巡らされている。水路の幅は60センチ程と短いので男性なら軽くジャンプして超えることもできるし、女性や子供達が水路を渡る為にあちこちに平たい岩の板が水路の上に置かれている。タロウとその背中に乗っているクルミも涼しいし新しい街に来たからかな、尻尾をブンブンと振り回している。リンネは頭の上にいるけど尻尾を振っているのはわかるよ。首の後ろがくすぐったい。


 俺たちはまずは大通りに面した場所にあるプレイヤーズギルドに顔を出した。当然他のプレイヤーはいない。転送盤を登録する。受付でマップクエストを受けたあとで強化屋とテイマーズギルドの場所、それと不動産屋の場所を聞いた俺たちはギルドの中にあるテーブルに座る。この街では家を買うことができる。


(この大地のお守りの効果はわかる?)


(その情報は持ち合わせていません)


 となるとリンネのお父さんの大主様か島のダンジョンにいるランドトータスに聞いてみよう。


 ギルドのテーブルに俺が座った隣の床の上でタロウが両足を下ろして寝そべっていて、その背中にクルミが乗っている。リンネは俺の膝の上だ。


 次にグループメッセで新しい街、オアシスの街の情報を送った。橋を渡るのにコヨーテの牙が100個必要だということや自宅を買うことができることも書いて送信した。とりあえずはこれでOKだ。


 受付に聞くとここからだと不動産屋が近いというのでプレイヤーズギルドを出ると教えてもらった場所に歩いて行く。不動産屋は街の西側にあった。


 他の街の自宅と同じで通りを挟んで奥にずらっと家が並んでいる。情報クランと攻略クランが通りに面した道の両側の自宅を買うだろうから俺はその奥、隣の自宅を買った。2,000万ベニーと他の街の自宅の値段と同じだったよ。もちろん転送盤も備え付けた。これでOKだ。


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