スタンプラリー
セーフゾーンにある小屋はどのエリアでも木造で、ここの小屋も木造だ。扉を開けると中は広くて中にテーブルと椅子のセットが5セットほど用意されている。それ以外にカウンターがあり、その中にはNPCの女性が2人いた。まずは部屋の隅にある転送盤を登録する。行き先をチェックして飛べる先を確認するとカウンターに近づいた。
「こんにちは」
「こんにちはなのです」
「ガウガウ」
「はい。こんにちは。南の荒野の小屋にようこそ」
ここは南の荒野の小屋という名称なんだな。NPCが返事を返してきたので聞いてみる。
「この小屋にはこうしたカウンターもあるんですね」
「はい。ここではポーション類を販売しています。ポーション、MPポーション、サーバントポーションが売られています」
「なるほど。それは次の街が遠いからこうして販売しているのかな?」
そう聞いてみたけど2人のNPCはさあ、どうでしょうか。と言うだけだ。おそらく次の街へ遠いのと、ここを起点にしてレベル上げをしてもらうために小屋は広く、打ち合わせができる様にテーブルや椅子が置かれているのだろう。
「ポーション類以外には何も売っていないのですか?」
「売ってはいませんが買取りをしています」
なるほど買取か。そうだ、これはいくらになるんだろう。俺は端末にあるコヨーテの牙というのをテーブルに置いた。
「コヨーテの牙ですね。こちらでの買取価格は800ベニーです」
なるほど。いい値段で買い取ってくれるんだ。
売りますかと聞かれたがとりあえず断った。お金には困ってないし、フィールドにいる魔獣からアイテムがドロップするのは初めてかもしれない。少し持っておこう。
俺たちは転送盤から自宅に戻った。久しぶりの自宅だよ。ランとリーファにお任せだったので妖精達としっかり遊んでからログアウトした。
次の日からはいつものペースだ。情報クランと攻略クランはまだ書類を運んでいるだろう。こっちはタロウに乗って移動をしたから3日で終わったけど普通なら毎日ログインしたとしても7、8日かかる。
午前中は畑作業をし、合成をする。午後からは新しい小屋に飛ぶ。転送版の行き先リストを見ると、しっかりと南の荒野の小屋という名称がリストに出ていた。
その小屋を中心にして周辺のコヨーテを倒す。周辺のレベルが154なので倒すと結構な経験値が入ってきた。これを数日続けたらレベルが150になった。キリがいい数字になったけどクルミに変化はない。140の時に効果がアップしたからな。でもレベルアップ分強くなっているのは間違いないぞ。これはタロウもリンネも同じだ。コヨーテの牙もそれなりにドロップしている。
台地の上から転送した先からここまでは地面が踏み固められた様な道があったけど、この小屋からはどちらの方向に進めばいいのかがわからない。方角としては転送してきた小屋が南の端、それから少し北に歩いた所に俺たちがいま活動している南の小屋がある。
この小屋の左右、東西にはとんでもなく大きな赤い岩、メサが聳え立っているので進むとしたら北なんだろうが、見る限り一面荒野なんだよな。これは調べるしかないな。それぞれがかなり大きなメサだよ。真っ直ぐ上に伸びているのであれを登ることは到底無理そうだ。
「そういうことでだ」
小屋を出たところ、柵の内側で従魔達を前にして俺は言った。
「でだ、なのです」
「俺たちはこれから探検をするぞ」
「するぞ、なのです。主、やったーなのです」
「ガウガウ」
探検と聞いて皆大喜びしているよ。クルミのバク転を見るのも久しぶりだよ。
「まずは左側、西のあの大きな箱みたいな岩の周りをぐるっと回ってみよう」
「ガウ?」
タロウが腰を下ろして吠えた。乗るの?と言っているんだな。でも乗らないよ。
「最初は皆で歩いて敵を倒しながら移動する。もちろん途中で敵に出会ったら倒しながら進むぞ」
「レッツゴーなのです」
頭の上から声がした。クルミはタロウの上にちょこんと乗っている。大きなメサの向こう側に何がいるのかわからないが最後は転移の腕輪で逃げられると思っている。
アメリカにあるモニュメントバレーを模しているんだろう。荒野の上に土が盛り上がっていて、その上に巨大な箱みたいな直角の壁になっているメサが鎮座している。ビュートとも言ったっけ?ややこしいからメサでいいや。
小屋を出てすぐにコヨーテが襲ってきた。レベルは154だ。ただこっちはレベルが上がって150になっている。問題ないぞ。というかタロウとリンネの攻撃でほぼ瀕死なんだよな。リンネの魔法の威力がまた上がっている。
大きなメサの周りを1周した俺たちは2時間ほどして小屋に戻ってきた。その中で休んでいると小屋の扉が開いて攻略クランと情報クランのメンバー10名が入ってきた。
「タロウを貸して欲しかったよ」
開口一番スタンリーが言った。他のメンバーも疲れた疲れたと言っている。マリアだけはタロウちゃんだと駆け寄って撫で回していた。
「お疲れ様」
「お疲れ様なのです。よくやったのです。でもタロウは主しか乗せないのです」
「ガウ」
その通りだと言ってるな。
「ここにはテーブルと椅子があるのか」
全員が転送盤を登録してから椅子にドスンと腰を下ろした。彼らは9日かけて往復したそうだ。皆ぐったりしているよ。彼らは当然別々に動いていたが、関所の街に戻ってくる日が同じだと分かったので待ち合わせて一緒にやってきたそうだ。
「タクはあのスタンプラリー、何日でクリアしたんだ?」
「3日」
俺がそう言うとやっぱりな、とかタロウがいるから3、4日だろうって思っていたよという声がする。それよりもあのクエストを彼らの中ではスタンプラリーと言っているのか。確かにその通りだ、うん、うまいこと言ってる。
クラリアとトミーがNPCがいるカウンターで話をして戻ってきた。
「売ってるのはポーション系のみ。タクもそうだった?」
「そう。サーバントポーションも売っているそうだ。あとアイテムの買取もしてるよ」
「えっ、そうなんだ」
クラリアは、買取の事を聞かなかったみたいでカウンターで確認しているよ。
「きついクエストだったわね」
彼らも朝から夜までとはいかない。メンバーのリアル事情もある。ただ彼ら両クランは外部で自分たちの掲示板を持っているので、そこに皆が活動できる時間を書き込み、タイミングを合わせてログインしていたそうだ。こっちはソロだからそんなのはない。気が向いた時にイン、アウトだよ。
「それでこの荒野で街は見つけたのかい?」
「まだだよ。俺たちはこの周辺でコヨーテの魔獣を倒してた。今日はついさっき左の大きな岩、メサの周囲をぐるっと回ってきたけどそこから先を見る限りは街らしきのは見えなかった。そうそう、コヨーテを倒したらコヨーテの牙ってのがドロップした。ここで店売り、買取価格を聞いたら800ベニーだった」
「普通の魔獣から神魂石じゃないアイテムが出るのって初めてじゃない?ごく稀に宝箱が出るってのは以前のエリアではあったけど、宝箱じゃないんでしょ?」
クラリアが聞いてきたので倒したら端末に入ってきたんだよと言うと、アイテムでそのパターンは土の街のエリアボス戦のトリガーになるNMを倒して入手した鍵以来じゃないかと言っている。店売りできるアイテムとしたら初めてだよな。なんて声もする。彼らはスタンプラリーで移動中にレベルが2つ上がって今は152になっていた。152ならこの周辺のコヨーテなら問題なく倒せるよ。
「装備を9段階まで強化する。レベルを最低148まで上げる、そしてスタンプラリーをする。結構タフだよ」
「あの飛んできた転送盤は一方通行で台地の上には戻れないんだよな。となるとタクは別格として148でこの地にきて154のコヨーテを相手にするのは厳しくないかい?」
攻略クランのジャックスが言うとその通りだと言う声がした。
「確かにその通りだよな。9段階装備を完了しているとしてレベルで1つか2つアップか。150なら152相当になるので154のコヨーテは倒せるだろうけど148なら2つ上がっても150。それで154のコヨーテだと死闘になるな」
トミーがそう言った後でこれはしっかり情報として開示しないとなと言っている。
「レベル148でここに来ようと思ったら、パーティ単位でスタンプラリーをして、台地の上でいくつかのパーティが集まってからここに飛んで、飛んできたさっきの小屋からアライアンスを組んでここまで進むしかないわね」




