岩影の街
情報クランはここまで来る方法をまとめて公開する。そのための準備をすると言うのでしばらく休んでから転送盤に乗ってオフィスがある開拓者の街に戻っていった。攻略クランはせっかくなので少し周辺を探索してみると言っている。
俺は時計を見ると中途半端な時間だったんで自宅に戻ろうかなと思ったけど、その前に関所の街のレストランのVESPERに顔を出すことにした。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。なのです」
「ガウガウ」
「「お疲れ様」」「タロウちゃん、リンネちゃん、クルミちゃん、またね」
攻略クランの連中に挨拶をし、転送盤に乗って関所の街に飛んだ。
「お肉を食べて帰るぞ」
「帰るぞなのです。その前にお散歩なのです」
関所の街にもプレイヤーの数が増えた。そんな中をのんびりと歩く。タロウは俺に体を寄せながら尻尾を振って歩いていて、リンネは頭の上、クルミはフードの中だよ。歩きながらタロウの背中を撫でると尻尾の振りが大きくなるんだよな。
VESPERに着いてテラス席に座るとコック兼オーナーのカイアスさんが出てきた。リンネが頭から膝の上に移動してきた。タロウはいつもの指定席、俺の隣だ。
「やあ、タク。いらっしゃい」
「お邪魔します」
「あれから数人プレイヤーさんが来てくれたよ、宣伝ありがとうな」
「どういたしましてなのです」
何人かに紹介したんだけどちゃんと行ってくれたみたいだな。いや、ひょっとしたら俺が話をした知り合い以外のプレイヤーかもしれない。まあ、誰かが来たのならいいとするか。
お勧めの料理がやってきた。これも美味しかった。全部平らげてしばらくするとカイアスさんがやってきた。
「今日の料理はどうだった?」
「美味しかったです。これは何の肉なんですか?この前の鹿肉とは違いますよね?」
「そう。今回のはバッファローの肉だよ。下の街から定期的に入荷するんだ」
ん?下の街?下の街って台地の下の街のことかな?
「下の街って荒野に大きな高い岩がたくさんあるあの場所のこと?」
何だよ知ってたのかと言うカイアスさん。いやいやこれは次の街の情報だぞ。タロウもリンネも何も言わずにおじさんの話を聞いている。もちろんクルミもだよ。
「そうだよ。タクはもう台地の下まで行っているのか。そこに街があっただろう?そこから仕入れているんだよ」
「いや、まだ街が見つかっていないんですよ。転送盤がある大きな小屋は見つけましたけど」
そう言うとああ、あの南の荒野の小屋の事だな。そう言ってから次の街の場所を教えてくれた。
「あの小屋から出ると北側に大きなメサが二つ見えるはずだ、その間をまっすぐに進むんだ。そうしたらその先にそれほど大きくないメサがある。そいつの裏手が次の街になってる。歩いたらどうだろう。5、6時間程かかるんじゃないかな。結構遠いんだよ。岩影の街って呼ばれている街だぞ」
そんな場所にあるのか。岩影の街ね。カイアスさんによると荒野は昼と夜の温度差が激しく、昼間は結構暑くなるということで街を岩のそばに作って直射日光をできるだけ避けているのだと教えてくれた。
俺はお礼を言って店を出た。
店を出るとそれまでおとなしかった従魔達がざわざわとする。彼らもしっかり聞いていたからな。
「主、岩影の街とやらに参るのです」
頭の上に乗っているリンネが言った。
「ガウ」
タロウも今から行こうぜ、と言った吠え方だよ。クルミはタロウの上で何度もジャンプしている。
「今日は遅い。明日行くぞ」
「はいなのです。明日は探検なのです」
自宅に戻るとログアウト前にグループメッセを送った。
次の街の情報と、自分は明日の午後に南の荒野の小屋から北の街を目指す予定だと書いた。
次の日、午前中自宅での作業を終えた俺は従魔と一緒に南の荒野の小屋に飛んだ。転送盤から降りると小屋の中には情報クランと攻略クランのメンバー10名がテーブルに座っていた。
「こんにちはなのです」
「主役の登場だぞ」
トミーが言うと周りも待ってたよ、なんて言っている。ん?どういうこと?
「次の街の情報を取ってきたのはタクでしょ?だからタクより先に行くのはまずいだろうって皆で待っていたのよ」
タロウをわしゃわしゃと撫でているマリアが教えてくれた。そう言うことなのか。
「いや、先に行ってくれてもよかったのに」
「そうはいかないだろう」
「それにしても相変わらず情報を取ってくるな。次の街の情報はどこから取ってきたんだい?」
トミーが聞いたので俺は関所の街のレストランの親父さんから聞いたと言う話をする。聞いているメンバーはなるほど。とか言ってるよ。
「肉の仕入れ先がそうなっているという設定だったんだな」
「タクに紹介されて俺もあの店には行った。そうかそう言う聞き方があったなんだな」
ダイゴが感心した声を出している。
「えっと小屋をメサの間を抜けてまっすぐに5、6時間進んだメサの裏側。そうだったよな?」
「そう聞いている」
「主、そろそろ参るのです」
「そうしようか」
頭の上に乗ってるリンネの声で全員が小屋から外にでた。11名と3体だがアライアンスは組んでいない。必要ないよな。
進み出すとコヨーテが現れるが一番近くにいるパーティがその相手をしてやっつける。ちなみに先頭を歩いているのは俺たち。その左側が情報クラン、右側に攻略クランと横に広がって北に進んでいる。
3時間ほど歩くとコヨーテのレベルが155に上がった。元々のレベルが高いからかずっと154のレベルばっかりだったよ。
さらに2時間ほど歩いた頃、正面に四角いが見えてきた。左右を見ても近くに同じ様な大きな岩はない。
「あの裏側かな」
「おそらくそうだろう。時間的にも5時間ちょっと過ぎている」
岩を左手からぐるっと回ると俺たちが歩いてきたちょうど反対側に頑丈な木の柵が見えてきた。見る限り結構広い街だよ。
柵が見えてから10分ほど歩くと街の入り口に着いた。今のところ門はこの門しか見えていない。中に入ると西部劇の様な街並みが広がっている。
情報クランのメンバーがNPCに話しかけてから戻ってきた。
「間違いない。岩影の街にようこそ。と言われたよ」
俺たちは台地の下に降りてやっと最初の街に着いた。
入り口近くにあるプレイヤーズギルドに入って転送盤を登録する。情報クランのメンバーが受付と話をして戻ってきた。
「コテージが借りられるそうよ」
「先に押さえよう」
もちろん俺にも依存はない。ここも販売じゃなくて借家扱いになるんだな。
受付に聞いたというコテージエリアは門から入って左手、街の西側の奥の岩のそばにあった。いつもの通り彼らのコテージの近くを借りたよ。転送盤も備え付けた。これでOKだ。
コテージの中にある広場に皆が集まった。
「タクのおかげで新しい街に来ることができた。ここで解散しよう」
「「お疲れ様でした」」
彼らは街の中、強化屋があるかどうか探すのだと言う。俺はいつもの通り新しい街に来たらいつもの通り、まずはテイマーギルドだよ。
通りの端の方、コテージと反対側にテイマーギルドがあった。中に入ると猫族のNPCの女性2人がカウンターの向こう側に立っている。エリカさんとカレンさんという2人だ。
2人を見て3体の従魔達が尻尾を振って大喜びしている。
「良い関係ですね。このまま続けてください」
「ありがとうございます」
「ところでこの街に強化屋さんはどこにありますか?」
「この岩影の街に強化屋はありませんよ」
「強化屋は次の街ですね」
2人のNPCが言った。この街には強化屋はないのか。武器屋、防具屋はあるのかと聞いてみたけどそれもないと言う。つまり9段階強化している今の状態で次の街まで進まないといけないと言うことになる。
これは予想していなかったぞ。
ギルドを出ると頭の上に乗っているリンネが言った。
「主、ここには装備を強くするお店がないのです」
「そうみたいだな。だから今の装備で頑張るぞ」
「従魔にお任せあれなのです。主はどんと構えているだけでいいのです」
「ガウ」
従魔頼りなのは間違いない。俺が頼むぞと言うと3体が任せろと尻尾を振ってきたよ。




