タロウが大活躍なのです
翌日、この日は関所の街のコテージでログインした。市内を歩いて街の南門に移動し、門を出たところでタロウに乗る。タロウも分かっているので門を出るとすぐに体を地面に下ろしてくれたよ。
「タロウ、今日も頼むぞ」
背中に乗って太郎のお腹をトントンと叩く。
「ガウ」
「よし、ぶっとばせ」
「ぶっとばせ、なのです」
起き上がったタロウが橋を渡ると広い台地を南西に向かって駆ける。途中に魔獣が見えるが可能な限り避けて移動し、どうしてもという時は皆でそいつをやっつけるんだけど、この台地の魔獣が145とか146のレベルなので討伐に時間がかからない。タロウから降りて戦闘準備をしている間にタロウとリンネでやっつけちゃうんだよ。
「主の出番はないのです。タロウとリンネにお任せなのです」
いや本当にリンネの言う通りなんだよな。倒すとまたタロウに乗って移動。台地を横断して西にある橋を渡り、南に伸びている橋を渡ると今度は東の橋を渡る。この台地は魔獣のレベルが142、143なのでリンネの魔法で撃沈だよ。タロウが立ち止まる、リンネが魔法を撃つ。それで倒れることもあるが倒れなくても2発目の魔法で終わりだ。魔獣が倒れると再びタロウが駆け出す。俺はタロウから降りてもいない。クルミもタロウに乗ったままだ。
「リンネ、すごいぞ」
「ちょろいものなのです」
本当はドヤ顔したいのだろうがタロウが走り出すので必死にスカーフにしがみついているよ。
東の端の台地に着き、そこから北に走って台地の村に着いた時は夕方になっていた。
村に入ってプレイヤーズギルドに顔を出すとそのままカウンターに出向いて立っているNPCに端末を見せた。
「ご苦労様です。はい。確かに書類を見ましたよ。お疲れ様」
そう言って端末を返して貰ってそれを見るとNPCから貰った書類の上に台地の村プレイヤーズギルドと書かれているスタンプが押されている。
「よし、これでOKだ」
「主、今日はここに泊まるのです?」
「いや、もう少し時間がある。セーフゾーンまで戻ろう。タロウ、いいかな?」
「ガウガウ」
尻尾を振っているからOKだな。
台地の街の南門を出ると橋を渡り、次の台地を西に移動して中央にある台地のセーフゾーンを目指す俺たち。
目的地のセーフゾーンに着いた時は結構時間が経っていた。
「皆お疲れ、今日はここでログアウトするぞ。明日また頼むな」
「はいなのです。お疲れ様でしたなのです」
「ガウ」
翌日、中央の台地の中にあるセーフゾーンでログインした俺。すぐにタロウに乗って西へ進み、そこから北の台地、それから東の台地と移動して関所の街に着いたのは昼頃だった。やっぱりタロウは速いよ。それとリンネの魔法も凄かった。関所の街の手前の台地は魔獣のレベルが148だったので数度戦闘になったがそれでも大きな問題はなく無事に関所の街に辿り着いた。
関所の街のプレイヤーズギルドに顔を出すとここも台地の街のギルドと同じくそれなりにプレイヤーがいる。タロウとリンネは注目の的だが俺は違う。カウンターに近づくとNPCに端末を差し出した。
「はい。台地の街のスタンプがありますね、問題ありません。お疲れ様でした」
端末を差し出してスタンプをもらった俺たちは皆の注目を浴びながらギルドを出ると市内を歩いて街の北門から外にでた。未だに他のプレイヤーの視線に慣れないんだよな。視線を浴びているのが俺の従魔達だってのは分かっているんだけどね。
北門から外に出るとタロウが腰を下ろした。
「ここから北の端まで突っ走るぞ」
「ガウ」
「タロウが任せておけ。と言っているのです」
「タロウ、もう少し頑張ってくれよな」
「ガウガウ」
タロウに乗った俺達はそれから3時間後、森の中を駆け抜けて北の端にある橋の袂の詰め所に着いた。柵の外でタロウから降りて柵の中に入るとタロウ思い切り撫で回してあげたよ。尻尾をブンブン振ってくれている。
「タロウ、ありがとうな。疲れてないか?」
「ガウガウ」
「タロウは主の為に頑張ったと言っているのです。全然疲れていないから問題ないのですというのです」
見ている限りはいつもの人懐っこいタロウだ。俺はタロウの頭を軽くポンポンと叩いてから扉を開けた。小屋というか詰め所の中に入ると2人いるNPCのおっちゃんに近づいて端末を差し出した。
「うん。間違いないな。2箇所のスタンプが押されている。ご苦労だった。これでタクと従魔達は橋を渡って向こう側に行くことができるぞ」
「やったーなのです」
俺の代わりにリンネが大喜びしてくれている。もちろん俺も嬉しい。
「転送盤から飛んだ先はまた一段と敵が強くなっている。十分注意するんだぞ」
もう1人のNPCのおっちゃんが言った。
「分かりました。ありがとうございました」
「ありがとうございましたなのです」
詰め所を出て橋に近づくと勝手にゲートが上に上がった。おそらく条件をクリアしていないプレイヤーはそのままなのだろう。今までの鉄の門を開けて通るのと同じだな。
長い橋を渡るとその先に小さな台地があり、中央に小屋がある。小屋に入る前に周囲を見てみると南は関所の街がある大きな台地、左と右は遠くに行き止まりになっていると言われている台地が見える。そして北側のずっと先には俺達がいる台地よりも高い台地なのか、壁なのか、崖なのかが奥に広がっているのが見えた。向こう側の台地の方が高いのでその先までは見えない。
一通り見てから小屋に入ると小屋の中央に転送盤があった。おそらく乗ったらすぐにどこかに飛ばされるのだろう。
「主、参るのです」
そうだな。ここで悩んでも仕方がない。
「よし、飛ぶぞ」
俺たちは転送盤に飛び乗った。
飛んだ先も小屋の中だった。正面に木の扉がある。開けるとそこは一面土漠が広がっていた。台地じゃないよ、土漠、荒野だよ。小屋の周りには柵があった。セーフゾーン扱いだな。背後を見るとものすごく高い台地の崖がずっと続いている。
おそらくあの台地の上のエリアのどこかの場所からこの下にワープしてきたんだろう。
「緑の木がないのです」
キョロキョロしているとリンネが言った。
「これは写真で見たことがあるぞ。アメリカのモニュメントバレーみたいな景色だ」
赤茶けた地形にビュートやメサが聳え立っている写真は見た。確か西部劇の舞台になった場所じゃなかったかな。
目の前にあるのはそれに似た風景だ。台地にところどころに赤くて高い岩が聳えている。
俺は一旦小屋の中に戻ってみた。転送盤は光っていない。乗ってみたが反応はない。つまりここからは上に戻れないということだ。一方通行か、いやらしいな。
再び小屋の外に出た俺。周囲をよく見ると小屋の柵の先から土が踏み固まれた道が伸びている。道は蛇行しながら赤い大きな岩、メサの方に伸びていた。同時に土漠を徘徊している四つ足の動物も見えた。遠いのでレベルまでは分からない。
「行くか、魔獣がいるから気をつけて」
リンネから強化魔法をもらい、クルミから魔法壁をもらう。相手のレベルが分からないからここでは常に戦闘態勢だよ。
土漠を進んでいき魔獣に近づくと向こうもこちらを認識したのかこちらに向かってくる。
(ミント、あの魔獣は?)
(はい。デザートカイオウト、レベルは154です)
(レベル154?高いな。それとカイオウトって何よ?)
(日本語ではコヨーテと呼ばれています)
なるほどコヨーテの魔獣ね。OKだ。
154のコヨーテに対してこっちは148だがレベル差以上にこっちは強いんだよ。素早さはあるみたいだが、その程度じゃ俺たちには勝てない。クルミのスロウがしっかりとヒットし、タロウの蹴りとリンネの魔法、そして俺の刀で危なげなく倒すことができた。従魔達もしっかりと強化しておいてよかった。
「よし、この調子でやるぞ」
「やるぞ、なのです。ばっちこいなのです」
相手が少々強くてもうちの従魔達は平気みたいだ。相変わらず頼もしいよ。
コヨーテを倒すと神魂石がドロップした。ここでも石は出るのが確認できた。しかも途中でレベルが上がって149になった。
コヨーテはそれなりに徘徊していて何度も戦闘になる。ただリンクはしてこない。154のコヨーテがリンクしたらきついだろう。そこはギリギリの設定をしているみたいだ。
コヨーテを倒しながら進んでいると倒した時に何かアイテムを落としたみたいで端末が鳴った。また神魂石かなと思って中を見ると『コヨーテの牙』というアイテムが入っている。
(これは何)
(コヨーテの牙ですね。店売りが可能です)
(用途は?)
(合成の原料になります)
合成の原料か。店売りできると言っているけどとりあえずキープだな。
その後7、8体のコヨーテを倒した俺たちの目の前に頑丈そうな太い木で囲まれている柵が見えた。その中には大きな小屋がある。柵の中に入るとリンネが言った。
「主、元気になる場所に着いたのです」




