フィールドNM
岩盤の街の強化屋に顔を出すと受付にヘルムさんがいたのでその前に立ってスカーフを取り出した。
「これを強化して欲しいんですけど」
「スカーフか。うん、問題ないな。どうする?1種類?2種類?」
「赤と緑の2種類で」
カウンターに赤と緑の石をそれぞれ3個置くと、スカーフと一緒に奥に消えて、しばらくするとスカーフだけ持って戻ってきた。
「3段階強化したぞ。これでまた強くなるな」
「ありがとうございます」
「ありがとうなのです」
450万ベニーでスカーフを強化した俺はそのスカーフを首に巻いた。
「格好いいのです」
「ガウガウ」
「タロウもクルミも格好いいと言っているのです」
「皆が気に入ってくれてよかったよ」
濃紺のスカーフが濃い黒紫系の色をしている忍装束に合っている。自分でもいい感じだと思う。
翌日の午前中、いつもの4人が自宅にやってきた。昨日自宅に戻ってからNM戦の件をメッセージで送ったら今日の朝、自宅に顔を出すという返事が来ていたんだよな。
「主、お茶と果物の用意はばっちりなのです?」
「もちろんだよ。ちゃんと洋室に置いてあるよ」
「なら問題ないのです」
この小姑リンネめ。
彼らが庭に入ってきた。マリアが早速タロウを撫で回しているけど、いつもより撫でている時間が短い。今日は色々と話をするから短めで切り上げたみたいだ。全員で洋室に移動する。
「雪原のエリアにNMがいたとはな」
「しかも岩盤の街とは森を挟んで反対の方角だったのか」
洋室に入って椅子に座るとスタンリーとトミーが言った。俺たちが洋室に入ると従魔達もやってきた。タロウは俺の椅子の隣で横になり、両肩にはランとリーファ、クルミは頭の上、リンネは膝の上に乗った。
とりあえず俺は岩盤の街から東西の端まで行って、そこから山裾に沿って南に移動したけど、山裾には洞窟も何もなかったという話をする。岩盤の街から東の端まで歩いて移動すると6時間位。西の端へは岩盤の街からではなくて、森の中のセーフゾーンからだと5時間ちょっとはかかるだろう。森から直線的に西にいくともう少し短いかもしれない。
「それでNMがいたのは森の小屋からだとどれくらいの場所になる?」
「4時間ちょっとってとこかな。森の小屋からだと北西方向だよ」
「今首に巻いているのはドロップ品?」
「そうなんだよ。NMを倒したら首装備のスカーフが出た。強化屋で3段階強化したよ」
「そのNMについて教えてくれる?」
クラリアが聞いてきた。
俺はオーク岩に擬態しているエリアがなくなって雪原だけになってしばらくすると大きな岩らしきものが見えてそれがスノウオークキングというNMだったこと、このNMのレベルはプレイヤーのレベルに連動して変化すること、また、討伐に参加しているプレイヤーの数によってNMの体力(HP)が変わるということを言うと4人が唸り声を上げた。
「こっちの人数が多ければ楽、レベルを上げれば楽って訳じゃないんだな」
「俺の場合は自分と従魔3体で4枠使って対戦した。その時のNMのレベルは135だとAIが言ったよ」
「タクが117で、NMが135。18上か」
「普通なら倒せないな。バンダナと加護を入れて12、あとは装備系の強化で1レベルとすると5レベル上か。そうなると勝ち筋が見えてくるか」
「それでも簡単じゃないわよ」
「もちろん。NM討伐が簡単だとは思わないさ」
スタンリーとマリアの話しを聞いている俺。彼らの話しが一段落するとこちらの話を続ける。
「NMの通常攻撃は両腕を振り回す物理攻撃とジャンプ。狂騒状態になったらそれに加えて口から吹雪を吐いてきたよ。最初まともに喰らって蝉が2枚剥がされた、次の口から吐く吹雪は横に飛んだが顔を動かして追いかけてきて蝉が1枚剥がされた。俺は蝉で躱したけど、あれはパラディンが盾に隠れると凌げると思う」
「パラディンがしっかりとタゲを持っていると大丈夫ということ?」
マリアが聞いてきた。
「その通り。盾の後ろに隠れたら行けるはずだよ。勢いはすごいけどパラディンなら耐えられるだろう。他のプレイヤーなら吹き飛ばされるかもしれない。島のダンジョンでゲットした靴があれば耐えられると思うよ」
「戦闘時間、覚えている?」
「20分46秒で倒した。あとでAIに聞いたら俺たちの場合は30分制限だったそうだ」
「時間制限も人数によって変わりそうだな」
1つ1つ確認していく彼ら。クラリアが会話の内容を端末に記録している。そのクラリアが端末から顔を上げた。
「ドロップ品について教えてくれる?」
「神魂石が4個、これはランダムじゃないかな。お金は500,000ベニー、それとこの首装備のスカーフ、あと武器枠だと思うんだけど神官が使える杖が出た。それから雪の加護」
「加護が出たのか?」
トミーが声を出した。スタンリーは50万ベニーは島のダンジョンと同じだなと言っている。
「杖を見せてくれる?」
俺は杖をテーブルの上に置いた。杖を手に取ったマリア。
「杖も強化ができるみたい。神官のルミに確認する必要があるけど、これって115装備よりも優秀よ」
AIに聞いたのかな。
「俺はそれはいらないからあげるよ」
そう言ったが4人はそれはちょっと待ってくれという。
「情報クランのユーリも神官だ。まずは能力を確認させてもらってもいいかな?こっちの方が良い杖だとなったらその時に買い取りの相談に乗らせてくれ」
「そうそう。私たちが挑戦した時にも出るかも知れないしさ。それまで持っていてくれる?」
マリアが杖をテーブルの上に戻しながら言った。
「分かった。でもそれならルミかユーリに使って貰って今使っている杖と比較した方がよく分かるだろうから、これはお貸しするよ」
そう言ってもう一度マリアに杖を渡した。神官が使えば比較できるだろうし。じゃあお預かりするねとマリアが端末に収納した。
「武器枠が1つあるのが確定なのかどうかも検証が必要ね」
「どの武器が出るのかもな。完全ランダムかもしれない」
クラリアとトミーがそんな話をしている。
「スカーフについても2種類の神魂石が強化に使えるのなら値打ちがあるな。首装備は他の部位と重ならないし」
トミーが言うと他の3人もその通り、いい装備になるという。
「そして雪の加護か」
「NM戦に勝ったあとでフィールドのレベル122のスノウオークを相手にした感覚だけど、1レベルは上がっていると思う。ランドトータスの加護ほどはっきりと強さを認識することはできなかったよ。あっちは2レベルは上がっているけど、そこまでじゃない感じだ。あくまで感覚だけどね」
「たとえ1レベルでも上がるのはでかいぞ」
「その通り、ステータスがアップするのは間違いないからな。積み重ねは大事だよ」
「雪の加護が毎回出るかどうか、私たちもそのNM戦に挑戦してみるわ。問題はリポップ時間ね」
ああ、それがあったか。以前のサハギンNMもリポップが1ヶ月とかだったっけ?もう随分前の話しだからうろ覚えだよ。
「それにしてもタクと従魔達は本当に優秀だよな。初見でレベル135のNMを倒してしまうんだから」
スタンリーが言うとそれまで膝の上で休んでいたリンネがミーアキャットポーズになった。
「主が強いのは当然なのです。主はいつも一番なのです」
「ガウガウ」
リンネが言うとタロウは吠えるしクルミは頭の上でジャンプするし、ランとリーファはサムズアップしているよ。
「岩に擬態しているスノウオークがいなくなって、何もない起伏があるだけの雪原になった時におかしいな、何かあるなと思ってソリから降りて歩いて移動したんだよ。歩いていたら雪が盛り上がっているのが見えてさ、それを見たタロウとリンネが敵だと教えてくれた。しっかり準備する時間があったから初見でなんとか倒せたとも言えるよ」
リポップ時間は不明だけど彼らは一度パーティ単位で挑戦してみるという。それぞれパーティ単位の5名で挑戦し、そのあとは2パーティの10名、3パーティの15名で挑戦して検証してみるそうだ。
「人数とレベルとの関係については数をこなして傾向を予測するしかないからな」
「この情報の公開のタイミングはこっちに任せてくれる?」
クラリアが俺を見て言った。
「もちろん。こっちは情報クランに話をするまでだよ。あとはお任せしますよ」
「しますよ、なのです」
ん?膝の上から声がしたぞ。撫でてやると9本の尻尾をブンブンと振るんだよな。これが可愛いんだよ。
リポップ時間を検証し、彼らが挑戦したあとでまとめて公開した方がより詳しい情報が提供できると言う情報クランの2人。彼らがそう考えるのであればそうしてもらって全然構わない。なんせこっちはゲーム情報の外側にいるソロプレイヤーなんだし。
NM戦の話しはとりあえずここまでだ。ここからは雑談になる。
「タクがソリを作ったことで活動範囲が広がって新しい情報が手に入ったな」
「やっぱり持ってるんだよな、タクは」
俺が褒められているのが分かるのだろう。タロウとリンネの尻尾の振りが大きくなったよ。クルミも見えないけどきっと尻尾を振っているはずだ。
情報クランも攻略クランも街の中でも聞き込みは続けているが、今のところ次の街の情報は手に入れてないそうだ。
「もう少しレベルが上がらないと無理だろうな」
どれくらいのレベルになったら教えてくれるんだろう?俺が言うと4人が125か130じゃないかと言った。
「115で装備を買ったからね。普通に考えたら次の街の到達レベルは130から135くらい? となると街の情報が入るとすれば125から130の間のレベルになるんじゃないかと予想してるの」
専門家がそう予想しているのであればそうなんだろうな。




