東の探索
雪原のエリアで魔獣を倒していると、俺と従魔達のレベルが117に上がった。ちなみに情報クランと攻略クランのトップパーティは自分よりも早いタイミングでレベル120になっている。彼らは120に上がったあと、雪原の街や岩盤の街にいるNPCに話かけたが、次の街の情報は何も得られなかったそうだ。
レベル99で雪原の街、115で岩盤の街だとして、次の街の到達レベルは普通に考えたら130とかそれ以上になるよな。ただ情報は取れるかもしれないとあちこちに聞いてみたらしいが今のところ有益な情報はないそうだ。でもそうやって確認をするのは大事だよね。
「まだ俺たちのレベルが低いのだろう」
会った時にトミーがそう言っていたよ。彼によると岩盤の街に来ているプレイヤー達も金策をしながら装備を強化しているそうで、3段階強化済みのパーティの数が少しずつ増えているそうだ。
「彼らの活動範囲が広がれば新しい情報を取って来るかもしれない。探す目と耳は多い方がいいからな」
「主にも頼るのです。お任せすると安心なのです」
俺とトミーのやり取りを膝の上に座って聞いていたリンネが言った。
「もちろん、タクやリンネにも期待しているぞ」
「それで良いのです」
探す目と耳は多い方が良いと言っていたトミーだけど、レベルが上がらないとNPCの対応が変わらないというのは過去から経験してきている。だからとレベル上げばかりする気はないんだよな。トミーもそこは理解してくれているから安心しているんだけど。
この日は畑の見回りを終えると岩盤の街のコテージに飛んだ。お隣さんとお向かいさんは誰もいないみたいだよ。外で活動しているんだろう。俺たちも外にでるべく、転送盤を使って岩盤の街から下に飛んだ。
「今日はソリに乗って東に行けるところまで行ってみるぞ」
「ガウ」
「みるぞ。なのです」
俺は従魔達に今日の目的を話しする。一体東の端はどうなっているのか。山なのかそれとも果てしなく雪原が続いているのか確かめよう。このエリアの地図を作成するぞ。地図の作成と言っても新しい場所を走れば自動で作成してくれるんだけどね。
端末からソリと胴衣を取り出して、タロウの身体に巻いてからソリのロープの先のフックを胴衣の空いている穴に引っ掛けた。準備完了だ。
「タロウ、無理して飛ばさなくてもいいからな」
「ガウガウ」
「任せろ。と言っているのです。問題ないのです」
「分かった。強い敵がいるかもしれないぞ」
「ばっちこいなのです」
リンネもタロウももちろんクルミも皆気合い十分だ。
「よし、行こう」
今日は行けるところまで東に進むことにする。東が終わると西に進む予定。南は雪原の街や東西の洞窟がある山だというのは知っている。わからないのは東西と北方面なんだよな。レベル上げばかりしていると作業になるからね。それに東に行くことでレベルが高い敵と遭遇するかもしれない。そうなると経験値稼ぎにもなる。
タロウが曳くソリに乗って進む速度は普通に雪原を移動するよりもずっと速い。スノウオークを置き去りにしながら東に駆けていくタロウ。リンネとクルミはしっかりとソリに乗っている箱の前の板を掴んでいる。雪原には起伏があるし、背の低い枯れ木も生えている。もちろん岩に擬態している魔獣もいる。それらを避けながらタロウが快調にソリを引っ張って走ってくれる。
街から東方面に1時間ほど進んでいくとスノウオークのレベルが122そして123に上がった。歩いて移動するとこの辺りの場所まで3、4時間かかるんじゃないかな。相変わらず雪原には細かい雪が降り続いている。積雪量は増えていない。
レベル123の敵を倒しながらソリで進んでいくと、降っている雪の向こうに山が連なっているのが見えてきた。
「山なのです」
「うん、あれが東の端だろう。あそこまで行くぞ」
「ガウ」
それから10分ちょっとで俺たちは東の山裾に着いた。そこから左右、つまり南北には高い山が連なっていて山の向こう側には行けない様になっている。ここが東の端ということになる。ソリを使わずに岩盤の街から東に進んでいくと最低でも5時間。途中で戦闘があるだろうからそれにプラス1、2時間はかかる。山裾にもところどころにスノウオークがいる。彼らのレベルは123だ。
「主、これからどちらに向かうのです?」
山裾は岩になっていて雪が積もっているところとそうでないところがあるんだよ。雪の積もっていない岩に腰掛けて休憩している俺たち。休んでいると頭の上からリンネが聞いてきた。
「それなんだよな。どっちに行こうか」
南に行くとおそらく東西に伸びている山とぶつかるんだろう。北はどうなっているんだろう。まずは簡単なエリアからだな。
「よし、南に行こう」
「ガウガウ」
「タロウがソリで行こうと言っているのです」
「いいのか?」
そういうと尻尾をブンブンと振って任せろというポーズになる。南に移動するとおそらく途中から積雪量が減ってソリが使えなくなるが、そこまではソリで移動するのはありだよな。
休憩が終わると再びソリに乗って山裾を左手に見ながら南に移動する。今度はそれほどスピードを上げずに進むことにした。山裾に洞窟があるかもしれない。見落とさない様にゆっくりと進むぞ、そういうとタロウが任せろと尻尾を振ってくれた。
移動しながらも魔獣には遭遇する。相変わらず岩に擬態しているスノウオークだけど従魔達が先に見つけては殴りかかっていくので先手を取られることなく倒しては南に進む。
進んでいると雪の量が減ってきた。ソリを端末に収納するとタロウが今度は背中に乗れと言ってきた。
「タロウは主を乗せるのが大好きなのです」
「ガウガウ」
「悪いな、タロウ」
タロウの背中に乗って山裾を南に進んでいくと前の方に洞窟がある東西に走っている山が見えてきた。予想通り東側の山と東西の山が繋がっていたよ。最後まで新しい洞窟は見つからなかった。このエリアの探索は終了だ。せっかくだからと南東の角から洞窟の近くまで敵を倒しながら移動してから最後は転移の腕輪で開拓者の街の自宅に戻ってきた。
自宅に戻ると満足したのかタロウは精霊の木の根元でゴロンと横になった。ランとリーファは俺の両肩に座り、クルミは川に浮かべた船に乗って魚を見ている。リンネは精霊の木の枝の上でリラックス中だ。今日の活動でレベルは上がらなかったけど、それなりに経験値を稼いだのであと2、3回外で活動をしたら上がる様な気がする。本当に今日は頑張ったよ。
岩盤の街と雪原の街の東側のエリアには何もないことが分かった。次は西側のエリアを見てみよう。
俺はグループメッセを使って今日の東側のエリアに何もなかったこと、東の山脈までソリで1時間ちょっと、雪原を敵を倒しながら移動すると6時間前後はかかるだろうと報告をする。ついでに今度は西側のエリアを見てくるという報告を入れておいた。これでOKだ。
何もなかったというのが分かることも大事なんだよな。一つ一つ潰していくことで攻略の道筋が見えてくる。それに最短距離を進んでいるだけだと面白くないと思っている自分がいる。このゲームでは周り道OKでやっているので全く問題ない。従魔達も楽しんでいる様だしね。
クールダウンしているとタロウとリンネとクルミがやってきた。ランとリーファが肩に乗っているのでリンネは膝の上、クルミはタロウの背中の上に乗っている。
「主、明日はどうするのです?」
「午前中は畑と焼き物。午後は雪のエリアに行くつもりだよ。明日は違う方向を探してみようと思う」
「ガウガウ」
「タロウがソリは任せろと言っているのです」
縁側で横になって身体を押し付けてきたタロウをしっかり撫でてやる。
「明日も頼むぞ」
任せておけとばかりに尻尾をブンブンと振ってるよ。うん、安心だ。




