1週間ぶりだよ
俺が勝手に名付けた【従魔サービス期間】は従魔達に好評だったのでまたやるつもりだよ。自分自身も楽しめたし。
次の日からはいつもの活動に復帰した。朝は畑の見回り、工房で合成というか焼き物造り。午後に外に出て経験値を稼ぐ。レベルは115のままだけど急いでいない。
従魔サービス期間が終わってから3日後の夕方、久しぶりにいつもの4人が自宅にやってきた。マリアはしばらくタロウと会えなくて禁断症状が出ていたのとか言ってわしゃわしゃと撫で回している。タロウもブンブン尻尾を振っていて嬉しそうだ。彼らと会うのもほぼ1週間ぶりだよ。
縁側に座った彼らにお茶と果物を用意すると、俺の頭の上に乗っているリンネが言った。
「美味しいお茶と果物なのです。沢山食べても良いのです」
「じゃあ遠慮なくいただくよ」
「はいなのです」
クルミもフードから出ると俺の肩の上でジャンプしている。相変わらず器用だ。クルミが着ろというので寒くない場所でもポンチョを着ている俺。フードが完全にクルミの指定席になってるよ。
彼らはレベルが119に上がっていた。岩盤の街をベースにしてレベル120、121のスノウオークを相手にしているそうだ。ただそればかりやっているわけじゃなくて他のこともやっていて、木のダンジョンを攻略してバンダナを手に入れたと言っている。
「バンダナはメンバー全員分を取る計画なんだよ」
「情報クランも同じ」
両クランとも4つずつ手に入れていて、あと2つらしい。
「タクはソリに乗ったり、雪だるまを作っていたみたいだな」
スタンリーが言った。
「あれ?何で知ってるの?」
彼らとは久しぶりで、しばらく連絡を取っていなかったのに知っているぞ。スタンリー以外の3人も知っていた。
「今プレイヤーの間で雪だるまやかまくらを作るのが流行っているのよ」
は?どういうこと?
クラリアが教えてくれたが、俺たちが岩盤の街の下で雪だるまを作っている所が公式の配信で流れたらしい。タロウが引っ張っているソリに乗っているところや、雪だるまを作り始めたところ、それから外から帰ってきた他のプレイヤー達が集まって皆で一緒に雪だるまを沢山作り、最後は雪だるまの前で記念写真を撮るためのポーズを取っているところまで流れたそうだ。
マジか。
「戦闘だけ、レベル上げじゃなくて遊びの要素もあるからこのゲームは楽しいんだよな」
「いや、確かにそうなんだけどさ、公式で流れたのか」
「タクの従魔達が雪だるまを作る時の仕草が可愛って掲示板では盛り上がってるわよ。ちなみに一番人気はクルミちゃんね。小さなカーバンクルが雪の玉を転がして大きくさせているシーンが可愛いって」
クルミが人気があるのは分かる気がする。あの時一緒に雪だるまを作った仲間もクルミが可愛いとスクショを撮っていた。俺も撮ったしな。
4人からまた有名になったな。とか言われるけど個人的には勘弁して欲しいところ。
俺たちが話を始めると従魔達は庭で遊び出した。ランとリーファを乗せてタロウが庭の中を歩いている。クルミとリンネは精霊の木に登ったり降りたりして遊んでいるよ。
「岩盤の街に来ているプレイヤーは増えたんだろう?」
俺が聞くとすでに多くのプレイヤーが来ているが、3段階強化を終えたプレイヤーの数は多くないのだとトミーが教えてくれた。
「雪原の街で装備を変えた、新しい装備でこの街に来たらそれらを強化できるが、その費用が上がっている。もちろんほぼ全部のプレイヤーが神魂石を2個使って装備を強化しようと考える。そうなると強化費用が1段階150万、その金額が防具と武器に必要となった時に金が足りないんだよ。1段階強化するには最低300万、人によると450万かかる」
俺は450万の口だ。
「なるほど。神魂石は持っているけど金が足りないのか」
俺が言うと4人がその通りだと言う。確かに115装備もいい値段がする。皆金が貯まったら装備を買い替えるよな。そこで貯めたベニーを使い切ってしまって金がなくなるのか。
「なので岩盤の街には来たけど、そこで活動をせずに以前のエリアに戻って金策をしているプレイヤーが多いの」
クラリアによると金策としてはクエストがあるが、正直クエストだけではなかなか貯まらない。なのでクエストと並行して他の金策をするのが一般的で、中でも多くのプレイヤーがやっている金策が、自分で合成をし、そのままギルドに売ることと、もう一つの金策は釣りだそうだ。もちろんそれ以外にもいろんな金策をしているプレイヤーがいる。
「釣り?」
「そう。釣った魚はギルド売りね。合成と違って原料代なんてかからない。竿を買えば釣れるでしょう?」
金策として海や川で釣りをしているプレイヤーが多くいると聞いて納得する。確かに釣りは手っ取り早い金策になるよ。
「もちろんバザールに出品している人もいる。要は多くのプレイヤーが金策真っ最中だってこと」
幸いにしてというか、俺は色々と金策がある、それも安定した金策があるので今までこのゲームでお金に困ったという場面がない。これがリアルだったら嬉しいんだけどね。
またソロで動いているので魔獣から落ちる印章や神魂石は全て自分のものだ。目の前にいる4人によれば新しい街について別宅が売っていると聞いてすぐにそれを買うことができるプレイヤーなんて普通はいないよと言うことらしい。
改めて言われてみると確かにそうだよな。多くのプレイヤーはお金を払ってプレイヤーズギルドの中にある転送版を使って移動をしている。流石に最近は開拓者の街の住居エリアや農業エリアにも多くの家が出来ているけど、それ以外に別宅を持っているプレイヤーはそういないんだろうな。毎回2,000万とか払うんだもの。それに加えて転送盤もお金がかかる。
使わなくなった装備を店売りして金策するプレイヤーもそれなりにいるのだと教えてくれた。俺は売らずに持っているが、買った値段の8割で買い取ってくれるシステムを利用して使わない装備や武器を店に売ってベニーを手にする。うん、それもありだよな。
情報クランは文字通り情報を売ってその代金をメンバーで分配し、攻略クランは情報クランに情報を売ってその代金をメンバーで分配している。もちろんそれ以外にクエストをこなしたりして金策をしている。この2つのクランはお金持ちで、自分もまぁお金には不自由しないのでゲーム内の金策事情については詳しくないんだよ。
俺たちが話をしている間に遊んでいた従魔達は満足したのか、庭を見るとランとリーファは船に並んで座っている。タロウは精霊の木の根元、いつもの場所でゴロンと横になっていてその背中でクルミが横になっている。そしてリンネは縁側に上がってくると座っている俺の膝の上に乗ってきた。
「主はお金持ちなのです。いつもウハウハなのです」
遊んでいてもしっかりと俺たちの話は聞いていたんだな。
「リンネちゃんの言う通りだよね、タクはお金持ちなのよね」
「はいなのです」
クラリアに言われて尻尾を振って答えている。リンネは俺が褒められると嬉しいらしい。これはリンネに限らないことなんだけど。膝の上に乗っているリンネを撫でてやると9本の尻尾をブンブンと振ってくれるよ。
「それでみなさんはレベルを上げながら次の街の情報を集めているところ?」
リンネを撫でながら4人を見た。
「そう。ただ岩盤の街、雪原の街、どちらの街でも有益な情報が取れない。スタンリーらとも話をしているけど、こちらのレベルがまだ低いからだと思うんだ」
「なるほど。こっちのレベルが上がったらNPCの対応が変わるのは今までもあったしね」
俺が言うとその通りだという4人。とりあえずレベルが120に上がった時点でこの2つの街のNPCに話しかけてみるそうだ。
「タクはどうするんだ?」
「とりあえずもうすぐ116に上がると思うので116にさせる。と言うかいつも通りかな。ソロでちまちまとやるよ」
「このエリアも相当広いぞ」
俺もそう思うよ。




