静香の涙
街はいつも通りの姿だった。
たくさんの人が歩いている。
喧騒と雑踏が渦巻くこの街の
真ん中を歩くアキと静香。
アキは思う。
こんな体じゃなかったら
今この瞬間は最高のシチュエーションなのに、、、
「亜樹?この服あなたに似合うんじゃない?」
静香はそう言ってアキに
次々と服を勧めてくる。
もちろんアキは当惑顔。
それも仕方のない話だ。
だって
静香はかわいい女物の服を
勧めてくるのだから。
「もう、、、いいよ」
アキはうんざりして
静香の勧めを断る。
「こんな女の子ぽい服は着れないよ。
それよりさあ、
今から映画にでも行かない?」
静香はアキの言葉を聞くと
後ろをぷいっと向いてしまった。
しばらく沈黙が
2人を支配する。
「亜樹?」
後ろを向いたまま
静香がつぶやくように言う。
「何度も言うように、
あなたは女の子なんだから、、、
私はかわいい服を着てほしいの。
それに
映画はいいわ。
私は映画って
デートの時しか見ないから」
デートと言う言葉を聞いて
反応するアキ。
意気込んで静香に言う。
「そ、そうだ!
デートしようよ!
買い物より楽しいよ!!」
アキの言葉を聞いた静香は
後ろを向いたまま肩を震わせる。
落胆するアキ。
「そ、そうだよね、、、
女の子の俺とデートなんて
おかしいね。
笑われちゃったよ」
アキは後ろを向いたままの
静香を覗き込んで
謝ろうとする。
しかしその時
アキは思いもよらないものを見た。
静香の涙。
静香は後ろを向いたまま
肩を震わせて泣いていたのだ。
普段は笑顔の素敵な
静香が
涙を流す姿を見て
アキは大変狼狽した。
「亜樹?」
涙を流したまま
静香はアキに問いかける。
「ひ、ひとつだけ
私のお願い聞いて。
自分のこと
俺って言ったりしないで、、、」
なぜ泣いているのかもわからない
静香をどう慰めたらいいか
全くわからないアキは
うろたえ続けている。
「静香。何で俺って言ったら
駄目なの?」
アキの問いを聞くと
静香はより一層
涙を流しはじめ
顔を覆ってアキに叫んだ。
「だって!」
泣き顔の静香は
泣いたままの顔で微笑んだ。
「思い出しちゃうじゃない、、、」
泣き顔のまま微笑む静香を見て
思わずかわいいと思うアキ。
喧噪の街は
相変わらず2人を包んでいた。




