第四十話 災害と災害
ちなみに各階層攻略は日を改めております。
第22層は21層と変わらずに森林が形成されている。
20層から既に極相林であったということを考慮するとこれ以上の植生の遷移は起こらないはずだ。そのため永遠と森林が続くのはわかるが、今までの傾向的に五層ずつでダンジョンが変わるという流れに反しているので違和感を拭えない。
そういえば25層にロックバイソンが出るということは既に知っていて、フェニルさんに25層の特徴は教えてもらってるのだがどうにもこの21層から24層まで、森林が続くのが理解できないらしい。
そしてここ22層の敵はファイアボア。聞いたところそんなに強そうな敵ではない。しかし火を使ってくるということはそれだけで俺は不利だということを認識しなければならない。
しばらく歩いていると索敵に引っかかるものがある。それは猛スピードでこちらへ突進してくるようだった。
前の層のサンダーバードは基本的にその場を動かないということからこれがファイアボアだということがわかる。
ファイアボアが近づいて来るに連れて木が折れるような音が大きく聞こえてくる。
相当早いスピードか、あるいは――
「お前ら避けろ!」
フェニルさんの声が聞こえたのでその場を逃れるとものの数秒で赤茶けたものが横切っていった。その横切ったものは地面に足を突き立てて滑りながらも速度を落としては停止した。
やはり早いスピードではあったようだが、それと同時にここまで体躯がでかいなんて想像できなかった。
その大きさはかつて戦ったワイバーンほどの大きさを誇る。
大きさに戦慄しているとフェニルさんが口を挟んだ。
「こいつは倒し方自体はあまり難しくない。ただ厄介なのがこの次にやる攻撃だ。ファイアボアは敵めがけて突進した後必ず広範囲のブレスを吐く。ほぼ中心で食らってしまったら範囲外に出るのは一苦労だ。だから、今から逃げるぞ!」
言われたとおりファイアボアに背を向けながら全速力で走る。
数秒後50メートルくらいを走ったところで熱風が肌に伝わった。
「熱っ!?」
それもそのはず、後ろに広がっていたほんの少しまで森林だった木々は火に包まれていたからだ。
まるで山火事を彷彿とさせるような燃え具合だ。
そして再びフェニルさんのアドバイスを聞く。
「この攻撃は特殊で、木々を焼いたとき10秒くらいで火が消える。その時には木々が炭となって崩れてるわけだが、そしたら中心にいるファイアボアは攻撃の反動で数秒間動けない。そこを叩くんだ」
なるほど、本当に倒し方は単純だ。でも初見殺しも甚だしい攻撃だと思う。
「3、2、1、今だ!」
掛け声と同時に走り出した。本当に先程の惨状が嘘だったかのように火は一つもない。それと引き換えに木々もないが。
そして眼前にはピクリとも動かないファイアボアが。
「先に攻撃します! 『水槍』」
途中で足を止めたラナの放った魔法が俺の走る速さを越えてファイアボアに当たる。
隙きだらけのファイアボアの胴体にあたってファイアボアは横に倒れる。
「『ナナカマド』『植物付与:ナナカマド』! はぁぁ!」
念の為燃えにくくした剣を作って無防備なファイアボアに振り下ろした。
あっさりと貫通した剣は、貫いたファイアボアが消失するとこですんなりと抜けた。
「はぁ……はぁ……、倒すのは簡単だけど全速力で走る必要があるから疲れる」
「まあでもこの階層はあとこれを数回やるだけで終わるなんて楽なもんじゃねえか!」
こうしてこの動きを5回繰り返した後、階層を踏破した。不思議なことにサンダーバードはこの層で一回も出ることがなくそもそもいる雰囲気すらなかった。
23層も相も変わらず森林が続く。
この層に出るのはデスエレファントで使う魔法は土魔法だそうだ。攻略方法はデスエレファントが降らしてくる土を避けつつ、ヒットアンドアウェイでダメージを与えていくということらしい。
何しろずっと張り付いて攻撃してると土魔法で串刺しになるそうな。
でも個人的には土を降らせるということが気になるんだが。
ものの数分でデスエレファントとマッチングする。大きさはファイアボアと同じような感じだ。
俺たちを見つけるとデスエレファントは嘶きながら地面を振動させてくる。
なかなかの振動に先手を打とうという気になれない。
すると突然デスエレファントの周囲の土が抉り取られるように消えた。
周囲を見渡してもどこにもないため不思議に思う。
しかしその答えはすぐに判明する。人族の子供と同じくらいサイズの土の塊が頭上から落ちてきた。先程の土は上空に投げられたものだ、そう確信した。しかもかなりの高さで投げたのか、意外と速く落ちてくるので避けなければ怪我は避けられないだろう。
でも土の塊は影を作って落ちてくる。それを読んで回避すれば当たらない。それとラナの固有魔法全属性によって少しの土は空中で固定されてるためそもそも落ちてくる土が少ない。
そしてすぐにデスエレファントまで到達する。コクタンの植物付与を施した鋭い剣で数回斬りつけたあと、言われたとおりに後ろに下がった。
すると先程まで俺が立っていた場所は隆起して土の棘が生えてきた。
これがヒットアンドアウェイを推奨する理由か。あのままあそこにいたら確かに串刺しになっていた。
土の棘が戻ると空から土を振らせるために抉った部分が直っていて、デスエレファントは最初と同じく嘶きながら地面を揺らした。
なるほどなあとは同じパターンか。さすがにそう何度も同じ技は通用しないのでこのあとは楽にデスエレファントを倒した。
こうして23層も踏破したのだった。でもやっぱり同じように、この階層でサンダーバードは出て来なかったし、ファイアボアも遭遇しなかった。
もしかしてだが、サンダーバードで暴風。ファイアボアで火事。デスエレファントは土砂。
となると次の階層は火を使ってくる敵っぽいな。
この21層から24層までの意味がわかったかもしれない。




