第四十一話 爆発と最終層
目の前にそびえているのはファイアボアと同じぐらいの大きさの小ぶりの山で、山頂からは溶岩が流れ出している。
そこから手足と顔が出ているモンスター、ボルケーノタートルがこの層24層の敵だ。
案の定、予想があたったな。
さてこいつの倒し方だが基本は甲羅の代わりに背負っている山の噴火を避け続けると、一定期間だけ噴火口に好きができるので弱点である噴火口を攻撃すればよい。
しかしこのやり方だと、まずあまりにも噴火の回数が多いこと。平均して6発くらいはあるようだ。
次に噴火の怖さ。溶岩は勿論、噴石は重たいものもあるしこの大きさの山でさえここら一体を火山灰で覆うことも可能だ。そして視界が見えにくくなる。
このような戦い方は骨が折れる。そこで別の戦い方もあるようだ。
これは水系統の魔法を使えるのがパーティーにいた場合有効な手段だが、大量な水を上からボルケーノタートルに落として鎮火させる。
幸運なことにラナが水魔法を使えるようになっているため後者の選択が取れる。
「ラナ任せたぞ」
「はい、いきます『水』!!」
ボルケーノタートルの頭上には四メートル四方の水の塊が浮いている。これを見るにはかなりの量の魔力を込めたのだろうと想像ができる。
ラナの方を確認すると想定以上に辛そうだ。
「いけ、ラナ!」
「はぁっ!」
大きな水の塊がボルケーノタートルの上に落とされる。
――次の瞬間大きな爆発音とともに猛烈な風が吹く。その音はマンドレイクをしのぎ、その風はサンダーバードを超えるようだった。
ドゴォォン!
俺は大きく吹き飛ばされて数メートル後方にあった木の幹に衝突して勢いが止まった。
ぶつかった反応で肺の空気が押し出され咳き込んだ。
苦しい……他の人たちは何処へ?
先程立っていたところは未だに煙が立ち込めていてよく視認できないが、木々が根こそぎ持ってかれているのがかろうじてわかる。更に後方を見ると俺よりかなり遠くに飛ばされた、ボロボロの姿で立っていたラナとフェニルさんと、無事なイチゴの姿が見える。
フラフラになりながらもそちらへ歩いていくとイチゴは風を纏っていた。
「イチゴお前はそれで勢いを相殺したのか。優秀だな」
「わっふ! くぅぅん……」
自慢げに胸を張りつつ、俺達の身を案じるように鳴いた。
「ラナ、大丈夫か?」
「はい、飛ばされただけですのであまり大きな怪我はありませんが。ところで何だったんでしょうかあれは」
フェニルさんが答えを示した。
「あれは多分水蒸気爆発だ。ロイナス、お前なら学院でやったはずだが俺もこれをやったことがなかったから完全に失念していた。マグマみたいなやつがの水と接触すると急激に大量の水蒸気が発生して、爆発的な噴火現象が起こるんだ」
「しっかりと考えればわかることでしたね。申し訳無いです」
「ま、失敗は誰にでもあるさ! ラナちゃん大丈夫か? 次から対策を立てていこう!」
「ところでボルケーノタートルはどうなったんでしょうね」
爆発の跡地を見ると既にそこにはボルケーノタートルの亡骸は無く、ドロップアイテムが落ちているだけだった。
「弱点が噴火口とかどうこういう以前に水蒸気爆発の威力で倒したなこれは。このドロップアイテムは金か?」
拳大の大きさの金がドロップアイテムなのだろう。なるほどな、鉱石は火山の熱等の条件によって作られるから不思議ではないな。
クエストとしては出てなかったけどお金にするぶんには十分だろう。
そしてしばらく休息をとりながら、次のボルケーノタートル戦の対策を練る。
やはり手っ取り早いのは水魔法だ。しかし水蒸気爆発の危険が伴う。
「そういえばイチゴが風魔法を使って無傷だったな。ラナそれはできるか?」
「難しいです。今はあのレベルの水を生成するので精一杯なので、同時に風を人間の体重を支えられるとなれば無理だと思います。魔力を使ったと言うんでしょうか、その疲労感はバオバブの剣を操ったときと同じなんですがどうも勝手が違うようです」
「それじゃあ仕方ない。イチゴは俺達4人を支えれるほどの風魔法出せるか?」
「くぅー……」
首をかしげている、できるかどうか不安ということらしい。さすがに博打に出るわけにも行かないしな。
「じゃあ俺が植物を使って壁を作ろう。さっき爆発の周辺の木はすべて倒れていたけど、それでも威力は和らぐはずだ」
「じゃあお願いします」
これで対策は完了。
そうだ、それとフェニルさんに話したいことがあったんだっけ。
「フェニルさん」
「ん? なんだ」
「この21から24までの階層が不思議だと言ってたじゃないですか。その意味がわかりました」
「ほぅ、どういうことなんだ?」
「まずこのダンジョンは植生遷移がもとになっています」
「それは20層まででわかるな」
「そしてそれ以降を見てください。モチーフとなっている攻撃が台風、山火事、土砂崩れ、噴火。いずれにおいても森林を植生遷移の振り出しに戻すようなものです。言ってましたよね、25層はロックバイソン、つまり荒野であると」
「ほぉ、21層から24層のせいで25層が1層に戻ると。なるほどこれはそれっぽいな! じゃあ戻ったらギルドに申告だな」
納得も得られたようだ。A級が説を提唱するならば話は通りやすいだろう。
休息も終わり、最終層を目指していると再びボルケーノタートルに出会う。
「ロイさん、行きますよ『水』!」
「『シラカシ』『植物操作』!」
水の塊が落とされる直前に木の壁を作った。数秒後爆発音がなる。
若干耐えているもののすぐに木の壁は倒壊していってる。
「このままだとまた巻き込まれる! そうだ、『サルナシ』『植物操作』!」
咄嗟に思いついた、フェニルさんと学院で戦ったときに使った植物、蔓で四人を引っ張ってく。
「はぁ……なんとか無事だった」
「あまり爆風の影響も受けずにすみましたからね」
そのまま下層へと続く階段を見つけて降りていく。
目の前に広がる荒野。まるで戻ってきたみたいだ。
「あと一層か……」
そうつぶやき踵を返してテレポーターで地上に戻った。
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