第27話 秘密兵器が作れない
「問題はなあ。硝酸をどうやって作るかってことだよ」
二人は全く何を言っているのかわからない様子だ。
俺だってこの手の異世界転生漫画なんかを読んだことがある。で、火薬を作る確実で割と簡単な方法は微生物の力を利用すること。
いわゆる古土法とか硝石丘法とか呼ばれている奴。
時間のかかる方法なのだけれど、おやじが死んでからいろいろ試す時間があった。しかし全くできる様子がない。やはり微生物の働きがかなり違う。
(でも普通に土壌の生物分解なんかはできているはず。何だろうこの違和感。まるで何かに妨害されているような……)
「はあー。やっぱり白金が見つかるまで硝酸は作れねえかなあ」
白金があればオストワルト法で硝酸が作れる。さすがにイタリアで白金が取れるかどうかはわからない。入手できる鉱物は比較的に通っているようなのだけれど……どうなるか。
「えっと、その硝酸って重要なの?」
「かなり。作れたらノヴァローマに対抗できる切り札になると思ったんだけどなあ」
何しろ火薬だ。
戦いを一変させる破壊力がある。最も火薬が生産できるようになっただけで勝てるとも思えない。それくらいノヴァローマは強大だ。
俺の気落ちした声のせいで空気が暗くなってしまった。
いかんいかん。二人を落ち込ませたいわけじゃない。ちょっと場を和ませよう。
「そういえばさ、氏族って死んじゃうと体が消えるんだよな?」
「うん。そうなんだな」
「じゃあ排泄物ってどうなるんだ?」
言ってからちょっと後悔した。アザーレはともかくユリアの前でする話じゃない。
「あ、えっとねーそれちょっと面白い話があるよ」
だが意外にも食いついてきたのはユリアだった。
「面白い話?」
「そうそう。すっごい昔の話なんだけどね? とあるリュカオンがね? ものすごい悪人で自分の領民にもひどいことをしてたらしいんだけど……トイレした後で思わず自分のものの臭いを嗅いじゃってね?」
「ああ、その話聞いたことがあるんだな。あまりにも臭くってのけぞって頭を打っちゃったんだな」
「ま、まさかそのリュカオン……」
「そ。死んじゃったの」
「う、うおお。めちゃくちゃ嫌な死に方だな」
さすがにそんな奴は日本には……あ、いたわ。厠で乙ったやつ。でもあれ俗説だっけ。
「そのリュカオンのうんちはきれいさっぱり消えたらしいんだな。だから氏族のうんちは氏族が生きている最中は残っているけど死ぬと消えるらしいんだな」
「お、おおう。意外とはっきり決まってるんだな」
しかし氏族の排泄物は肥料として利用可能……実験によると、だけど。多分普通に土の中に入れれば分解されるんだろう。
……頭の中でなに考えてんだ俺は。
よし。汚い話終わり。
「んじゃ、最後はあれか」
「んだ。今度は牧場なんだな」
「へえ! 今度は何があるのかな!」
ユリアが楽しそうに微笑む。この笑顔を見ているとこちらも嬉しくなる。
「心配しなくても美味しいもんだよ」




